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2020年8月 5日 (水)

「キリシタン訴人の報償金」と長崎の濃密な関係

Photo_20200803191901

長崎の高札場風景。上は「長崎虫眼鏡」より。(「国立国会図書館デジタルライブラリー」より)

説明には


右之御制札

七串 桜町之辻
壱串 江戸町大波戸
弐串 おらんだ出島
三串 浦上村山王前
三串 長さきむら
四串 小せとむら

とありますが「串」の意味が分かりません。高札の数かと思ったのですが、「桜町」に7本は多すぎるような。


なお、下の図は「長崎名勝圖繪」(昭和6年発行・長崎史談會発行)より「出島」です。丸印のところが高札場だったと思われます。


Photo_20200803192501

さて、話しが少し込み入ってきますが、「踏み絵を踏んだキリシタン」(安高啓明著・吉川弘文館発行)に下のように書いてありました。

キリシタン訴人褒賞の制札は、各地の主要高札場に掲げられた。長崎では、毎月一日から五日まで嘱託銀が置かれ、寛永三年には、銀三〇〇枚の現物が置かれている(「長崎実録大成」)。これが天和元年になると、五〇〇枚と増額して置かれるようになり、周辺三町から番人が配された。


ということで、ほんまに現物を置いたのかと思い「長崎實録大成」を読んで見ると(下書きと、ブロブにアップしたとき行がズレるのでベタで書きます。)


御高札並嘱託銀

一 慶長ノ頃ヨリ大波戸地内二御高札塲ヲ建置ル。寛永三年(1626)切支丹訴人為嘱託銀三百枚被掛之。(嘱託銀三百枚とあるは百枚の誤りかの・・・の注有り)
一 延實八年(1680)八月豊後町掛リ水溜リノ所二土石ヲ埋メ、左右垣ヲ埋メ、左右石垣ヲ築、御高札塲被引移之。
柵内 入二間二尺寸 長六間四尺二寸
但晝番一名  夜番三人宛相勤シム
一 天和元年(1682)嘱託銀二百枚相增、都合五百枚ト成ル。(以下略)

ということで、年代などを合わせると「踏み絵を踏んだキリシタン」が「長崎實録大成」を参考にしたことが分かります。


ここで「嘱託銀」というのがよく理解できないので、Wikipediaで調べると


嘱託銀(しょくたくぎん、そくたくぎん)は、江戸幕府が犯罪に関する密告を奨励するために出した報償金制度である。特にキリシタン取締りのために出された物(訴人報償制、そにんほうしょうせい)が知られており、これに限定する場合もある。


とあります、が、「概要」の所を読んで、エ~!ホンマかいなと思いました。以下の通りです。


1618年(注:元和4年)頃、長崎奉行を務めた長谷川権六がキリシタン弾圧のため市中に銀の延棒30枚を掲げてキリシタンや宣教者の密告を奨励したといわれている。1626年(注:寛永3年)に銀100枚へと増加された。これは長谷川独自の政策であったが、島原の乱後の1633年(注:寛永10年)鎖国令制定の際に江戸幕府においても正式に採用されて全国に広がる。(以下略)


ということで、長崎が「キリシタン訴訟人の報償金制度」のルーツということになります。


参考文献として「重松一義『嘱託銀』(『国史大事典7』、吉川弘文館、1986)」「清水紘一『嘱託銀』(『日本歴史大事典2』、小学館、2000年」「『日本史総合辞典』東京書籍 林陸朗 村上直 髙橋正彦 鳥海靖 1991年11月10日初版発行」と3冊の本があげられていました。ということは、このWikipediaの説明を書いた人は原典を読んだものではなく、3冊の事典、辞典を孫引きしたことが分かり、調べついでに3冊の本を読んでみました。


「国史大辞典7」には


しょくたくぎん 嘱託銀 江戸時代、切支丹(伴天連)禁令強化の一手段として用いられた伴天連訴人奨励のための懸賞金。そくたく・嘱託銀とも呼び記される。寛永三年(1626)長崎ではじめて行われ、同十年の鎖国令により全国へ拡大適用。訴人へ銀百枚と増額。同十五年以降は鎖国令と別に、諸国高札場に伴天連訴人には銀二百枚を与える旨の高札が掲げ、その徹底が図られた。


とあり、参考図書が「新村出『日本吉利支丹文化史』『新村出全集6』」「海老沢有道『日本キリシタン史』」「清水紘一『キリシタン訴人制度について』(キリシタン研究 19)」。本当はこちらの参考図書まで読まないといけないのですが、図書館にも置いて無いのでパス。


「日本史歴史大事典2」には~「そくたくぎん」にて標記。主なところだけ書き抜きます。


嘱託銀 そくたくぎん 犯罪密告奨励のための報償銀。・・・キリシタン摘発時の報償銀が最高額であった。同褒賞銀制度の起源は一六一八年(元和元年)頃、長崎奉行長谷川権六によって市中の要所に延棒が陳列され、同地の潜伏する宣教師の密告が奨励された。・・・島原・天草一揆後諸国のキリシタン根絶に乗り出した幕府により、全国令として布達(1641年)。


参考文献として「清水紘一『訴人褒賞制について』(キリシタン研究第十九輯)


「日本史総合辞典」~この辞典は分野別に分けて書かれてあり「キリスト教の禁止と島原の乱」に「訴人報償制」として記載。


訴人報償制〔そにんほうしょうせい〕 ・・・密告人に対しては報奨金を与える政策をとった。元和4年(1618)長崎で初めて開始されたと考えられ、島原の乱のち全国的に適用されるようになった。・・・(参考文献記載なし)


この長谷川権六については「長崎事典」に次のように書かれています。


長谷川権六郎守直(はせがわごんろくろうもりなお) 生没年出自共に不詳。4代目奉行。・・・長崎奉行に存在した時期も慶長十九年十二月~寛永三年(長崎奉行歴代略譜)。元和元年(1615)~寛永二年二年(1625)「長崎実録大成」。また、元和二年(1616)(柳営補任)など不同である。寛政重修書家譜には、長谷川権六らしき人物は全く記載がなく見当たらない。


なお、〈事績〉としてキリシタンと関係ある所を書けば「①宗門人別帳をつくる。」とあり、あとキリシタン教徒を処刑したとあるばかりで、キリシタン訴人報償については記載なし。


さて、先日ネットで論文を拾ったのですが、残念ながら、著者等を記録してなく、「キリシタン高札が最初に建てられたのは寛三年であった」と書いてあり、注の所に「『長崎叢書』増補長崎略史下巻七百頁所携寛永3年の条」と書いてありますが、これ、最初の「長崎実録大成」に書かれてある、「寛永三年(1626)キリシタン訴人・・・」と年代がピッタリ合うという事で、多分、このことだと思われます。


さて、長谷川権六の次の奉行は「永野河内守」で「長崎實録大成」には就任が「寛永三丙寅(1626)」になっており、長谷川権六には寛永3年の記載もあるので、ひょっとして、月までは分かりませんが、この年に「水野河内守」と交代した可能性もあります。


ただ、「長崎實録大成」の「永野河内守」に「一 今年切支丹訴人嘱託銀三百枚被掛之。」との記載があり、初めに引用した「一 今年切支丹訴人嘱託銀三百枚被掛之」と同じで、多分、「長谷川権六」と書かれているのは「水野河内守」ではないかと思ったりするのですが・・・


いずれにしても、「キリシタン訴人報償金制」「キリシタン禁制の高札」は長崎が発祥の地で濃密な関係があったような・・・長崎の歴史書は多く、また、出版されていないのもあので、不明な点は多くありますが、論文をいろいろ読むと、最後にこう書かれているのが多いようです「今後の研究を待ちたい」。私も、今後の研究を待ちたいと思います。


最後に、この褒賞金についてですが、銀300枚とか、200枚とか書かれていますが、江戸時代、貨幣は変動相場制、また、比較を大工の手間賃にするのか、米価にするのかなど一概にはいえませんが、ネット検索すると「3,400万」とか「3,500万」とか書かれたものがあり、とにかく、当時では想像できない金額だと思われます。


この、報賞金が払われたかどうかは、探してみましたが見当たらなく、ただ一つ「長崎剳記」に次のように書かれていました。


一 明暦三年(1657)酉十月十一日二、大村ノ百姓、長崎

     酒屋町ノ池尻理左衛門所ニテ、大村二切支丹宗門ノ
     者出来候由、申候。理左衛門、御奉行黒川与兵衛(注:16代長崎奉行)二申上、
   銀十三貫目、為御褒美被下候事。

という事で、報奨金は払われていたようです。この「銀13貫目」がいくらになるのかは、調べてみてください。


以前にも、高札の事を書きましたが、庄屋さんの書いたものに出火の時には高札場を守れという事が最初に書いてあり、高札はそれほど大切だったことが分かります。


下は、庄屋さんの所にあった絵地図ですが、大きな赤丸のところ。赤の矢印が庄屋さん宅、すぐ横に「御高札」と書いてあり、周りは柵に囲まれています。多分、各地の庄屋宅の所にもあったと思われます。


Img_20200803_0001 

長々とまとまらないまま書きました。この件に関しては、長崎の歴史を書いた本を読み解かなければいけないのですが、今回はこれにて一応終了。多分、誤字、脱字も多いと思われますが、お許しあれm(__)m。

 


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