「江戸の備忘録」★磯田道史著より~「家康の庭訓」「江戸の鉄砲管理」
磯田道史氏は「武士の家計簿」で有名になり、映画化もされました。古文書に書いてある事を、分かりやすく解説している本が多数あります。
この「江戸の備忘録」は朝日新聞の土曜版に連載された文章を基にしたものだそうです。ですから、一つ一つのトピックスは2~3ページほどで、読みやすいものになっています。
ただし、磯谷氏の後書きによれば「歴史のトピックスを、一見、何の脈絡もなく、ならべたようなように見えるかもしれないが、そうではない。広く深く、日本史を見渡せるような、いってみれば『歴史の肝』になる話しだけを、かなり厳しい目で選んだつもりである。表面上は、楽しく選んでいるが、日本史の重要人物や決定的要素を、意識的に選んで書き込んである。」という本です。60のトピックが並んでいます。
さて、全部は紹介できないので、徳川家康さんの話しと、少し気になるところがあるので・・・
「家康の庭訓」(注;庭訓は親が子どもに教える教訓)。少しばかりまとめて書きます。
家康は自分の子どもに泳ぎを学ばせていたそうです。「天下の主たりとても、常々熟練せでかなわざるは、騎馬と水泳なり」(東照宮御実紀附録)。
騎馬と水泳、「この二つは人に代はらしむる事のならわざるものなり」。〈戦は常に勝つとは限らない。負け戦もある。負け戦になると、どんな偉い大将でも馬に乗り、泳いで逃げなくてはならない。しかし、こればかりは、家臣に代わってもらうわけにはいかない。だから、乗馬と水泳教育は絶対必要だというのである。〉ということだそうです。
剣術教育には冷淡で、「大将のつとめは、逃げること」。「天下のぬしたるもの、大名などは必ずしも自ら手を下して人をきるにおよばす。」〈もし敵に出会ったら家来が討つべきで、将軍や大名に剣の修行は『いらぬ』と言った。〉と言うことだそうです。
確かに、負け戦の時、大将が剣を取ってチャンバラをして討ち取られたら、それで、ジエンドですが、逃げ延びれば再興の機会もあると。
三代目・家光、水戸黄門さんも、わずか十二歳で江戸の〈浅草川〉を何度も泳いで往復したそうです。家康の孫、尾張藩二代目・徳川光友も泳ぎが上手く、「五つ六つの御時より勝川・谷田川へ毎日出て泳いだ。」そうです。なお、その時の「お弁当は焼食に香の物、焼味噌ばかり」であったそうです。
「江戸の鉄砲管理」
「生類をめぐる政治」(塚本学)には次のように書いてあるそうです。
「豊臣秀吉の刀狩り後にも、江戸時代の民衆は大量の鉄砲を保有、武士よりたくさん持っていた。仙台藩に四千丁、紀州藩に八千丁、長州藩では四千丁が民間にあったという。この三藩で当時の国内人口の二十分の一だったことから、全国では数十万丁の鉄砲があったのは確実である。」もちろん、各藩では「鉄砲改」めなどをしています。
さて、島原藩の各村にはどれくらいあったのかと思い調べました。これには島原藩が各村を調べた「島原大概様子書」があり、男女の数、馬牛の頭数、暮らし向き、石高、寺社、古跡等々の事がかいてありますが、宝永四年に完成、その後たびたび改正されています。これに、各村の鉄砲の数が書いてあり、文政六年改で現雲仙市だけ見ると・・
「土黒村・鉄砲拾挺(内威筒七挺・猟師筒七挺)」(以下、”鉄砲”は略。威筒は威鉄砲で害獣を追い払うための空砲)「西郷村・拾三挺・威筒八挺・猟師筒五挺」「伊古村・記載なし」「伊福村・三挺但威筒」「三室村・貮挺但猟師筒」「守山村・鉄砲なし猟師貳人猪鹿を猟」「山田村・四挺・貳挺威筒・貳挺猟師筒」「野井村・四挺・貳挺威筒・貳挺猟師筒」「愛津村・壹挺但威筒」「千々石村・拾三挺・拾壹挺威筒・三挺猟師筒(ママ)」「小浜村・五挺・内三挺威筒・貳挺猟師筒」「北串山村・拾挺・内五挺威筒・五挺猟師筒」「南串山村・九挺威筒・七挺威筒・貳挺猟師筒」(島原半島史・林銑吉著)
という事を見れば、仙台、紀州、長州に比べれば、こちらの地方では鉄砲の数が少ないことが分かります。向こうみたいに大きな戦が無かったせいなのか?理由はよく分かりません。
ということで、この本、手軽に読め、「秀吉の艶書」「仮設トイレの祖・徳川光友」「二宮金次郎の離婚」「百二十五年眠っていた『平成』」「結婚と離婚の日本史」「貧乏神の研究」など興味ある事項も並んでいるので、ご一読を。
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