「光秀★沖方丁・池波正太郎・山田風太郎・新田次郎・植松三十里・山岡荘八著・細谷正充編」&「光秀の定理★垣根京介著」
来年のNHK大河ドラマの主人公が明智光秀ということもあり、先頃「明智光秀五百年の孤独」を紹介しましたが、あと2冊ほど読んでみたので、ご紹介を。
「光秀」は6名の作家による短編集。
植松三十里「ガラシャ 謀反人の娘」のみ書き下ろし。沖方丁「純白(しろき)き鬼札」、池波正太郎「一代の栄光―明智光秀」、山田風太郎「忍者明智十兵衛」、新田次郎「明智光秀の母」、山岡荘八「生きていた光秀」はすでに発表されたものを細谷正充氏が編集したもの。
池波正太郎「一代の栄光ー明智光秀」は歴史読み物。沖方丁「純白き鬼札」は歴史小説。あとは、昔風にいえば「大衆小説」のジャンルか?
山田風太郎の小説は明智光秀が忍者というより妖術使い。なにせ、切り取られた腕が又生えるというお話。首まで生えます。山田風太郎らしい小説。新田次郎「明智光秀の母」、植松三十里「ガラシャ 謀反人の娘」は題名の通り、直接明智光秀を描いたものではなく、その周辺の人物を描きながら光秀に光をあてたもの。山岡荘八「生きていた光秀」。光秀については、生きていたという説もあります。
はやり、短編では光秀の全体像は見えませんが、まあ、光秀のこんな一面もあるのかな?と気楽に読むのには良いかもネ。
「光秀の定理」は以前、本屋さんに並んでいたもので、厚いのとお値段の関係で買うのを迷っていましたが、文庫本で出ていたので買ってみました。作者がお隣の諫早市出身、高校がウチの愚娘と同じ学校だということもありますが・・・以前紹介しましたが、「室町無頼」を読んで意外と面白かったということもあります。
物語は最初、愚息(愚かな息子、男性のあそこの事)と名乗る坊主が出てきますが、ただし、普通の坊主ではありません。道筋でバクチで稼いでいるが、四つのお椀に三個の石を、各お椀に一個づつ入れ、空のお椀を当てるという変わったバクチ。もちろん最後に勝つのは愚息。この、勝ち方が後日、光秀の戦いに使われ、それが光秀の出世に結びついていきます。
それと、玉縄新九郎という剣の道を求める武士が出てきます。もっとも、金がなく辻斬りをしますが、ここで愚息との出会いがあり、また、新九郎が辻斬りをしようとした相手が、なんと光秀。
ということで、これより、この三人の奇妙な関係ができますが、愚息、新九郎の助力が光秀の出世のきっかけになっていきます。
物語には本能寺の場面は出てきませんが、どうして光秀が謀反を起こしたのか、最後の章で愚息、新九郎が考えますが、果たしてこれが正解かどうかは読者の方が考える事でしょう。
「定理」という題に関しては若干抵抗があり、また、史実として読む方は反発されると思いますが、小説として読むなら、スピード感があり、変わった切り口で、面白く、分厚い本もあっという間に読めました。
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