「大江健三郎さんの思い出」
今日、いつものように本屋さんへ行ったら「大江健三郎全小説」が二巻置いてあって、第3巻をみると「セブンティーン」と「政治少年死す」が掲載されていました。
「政治少年死す」の主人公は、当時の社会党委員長・浅沼稲次郎氏が演壇で演説中、浅沼氏を刺殺した山口二矢がモデルになっています。このシーンはテレビニュースでも放送され、衝撃を受けたものです。山口二矢は当時17歳、鑑別所にて自死。
この小説は、第一部が「セブンティーン」、第二部が「政治少年死す」になっています。
初出が「文学界」の昭和36年(1961)の1月と2月号。樺美智子さんが60年安保で亡くなった(6月15日)次の年に発表されたものです。
「右翼少年死す」は発表後、右翼からの抗議、脅迫により、以後、表には出ていない小説で、地下出版、個人のネット配信、図書館に文学界のバックナンバーが運良く揃っているかですが(長崎ではほとんど絶望でしょう)・・・
で、ふと、思い出すと、私がこの二冊を取って置いた記憶があり、捜すとありました。大事にしていたので、パラフィン紙で頑丈包んで保管していて、上の写真はパラフィン紙の上からスキャンしたので、ぼけています。
さて、今日の話はこの小説に関するものではなく、タイトルは「大江健三郎さんの思い出」とはしましたが、酒を一緒に飲んだとか、文学を論じたとか、家に遊びに行ったとかいうことではありません。
私、学校時代は成城学園(学校は成城学園ではありません)に下宿をしており、学校に入ったばかりのとき、夕方、少し暗くなった頃、夕食を食べに出かけましたが、前の方から大学教授風の、どこか見たような、中年の男性が歩いてきまして、東京にでてきたばかりで、顔を知っているこの年配の人といえば、ゼミの先生かなと。
私、小心で律儀な性格なので、一応「こんばんわ」と挨拶をしたら、相手も軽く頭を下げながら「こんばんわ」。と、すれ違ったとたん「あ!大江健三郎だ!」。本当に気さくな挨拶の仕方でした。
もう一つ、駅の向かい側のプラとフォームに大江健三郎さんと、小さい子供が一緒にいて、電車の音がうるさく、子供の声が小さいのか、大江健三郎さんが身をかがめ、子供の口の所に耳を近づけ、一生懸命話を聞いていました。息子さんの大江光さんです。現在、音楽家です。これが「大江健三郎さんの思い出」です。
たわいないと言えば、たわいない話ですが、この二つのシーンはいつまでも、私の脳裏に残っていて、大江健三郎さんの人柄を知る良い思い出になっています。
《附録》
私の下宿のおばさんが、小沢昭一の伯母で、私が帰郷する前日、ご主人(かなり高齢)が亡くなり、数日して、下宿に帰ったら葬儀の折の写真を見せていただきましたが、小沢昭一さんが神妙な顔をして、位牌を抱いている姿も、まだしっかりと覚えています。
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