「富貴楼」の解体に思う
富貴楼。ホームページを見ると「当店は平成29年6月10日をもって休業致します これまでのご利用ありがとうございました」とありました。
富貴楼についての詳しくはこちらを(クリップ)じゃなく、クリックですね→富貴楼
ところが、ネットの「長崎市公式観光サイト あっと!長崎」には、まだ閉店の記事は無く、「データーは2016年2月10日現在のものです。」だそうで、観光長崎にしては、情報の鈍さを感じます。
さて、今月15日の長崎新聞に、総合長崎大学教授のブライアン・バークガフニさんが寄稿をされていました。富貴楼の明治40年の写真が載っていますが、色が付いているので、年代、色からみて手彩色でしょう。
上の写真が私が持っているもの、多分、ブライアンさんの方が古いかなと思われます。で、長崎事典(風俗文化編・長崎文献社刊)をみると、まったく同じ写真が載っていて「大正ごろの富貴楼」となっておりました。
ブライアンさんの写真には「四方富貴楼」となっており、調べてみると、俳人紫暁暁の日記に「『千秋亭(注;富貴楼の前身の名前)に到り終日和漢の珍味に飽り」「四方眺め比類なし』」とある。」(富貴楼ホームページより)。で、こういうことから「四方富貴楼」と書いたのではないかと思います。あくまで、憶測ですが。
ブライアンさんの寄稿は「返上の日を懸念」となっていて、先日「長崎と天草潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されたことに触れつつ、元潜伏キリシタン集落の過疎化に触れながら、「教会堂が美しくも無用の抜け殻になりかねない。」と懸念をしながら、「地域経済の救済策として『観光』の話が持ち上がっても不思議はない。」としていますが、まったくその通りで、長崎県は経済基盤が弱く観光に頼らざるをえません。
と書きながらも、世界遺産の石見銀山遺跡、富岡製糸工場の観光客の減少にも触れています。
ここから、富貴楼の話になり「先日、私は諏訪神社前を歩いているときショックを受けた。石垣の上にたたずむはずの富貴楼は、まるで消しゴムで消されたかのようにその姿がなくなっていた幕末の志士やイギリスの文豪キプリングも訪れ、時の内閣総理大臣伊藤博文のすすめで名付けられた老舗料亭は、老朽化や人手不足、また改装にかかる多額の費用を捻出できない事を理由に取り壊された。」と書いています。
この料亭は、文化庁 国登録有形文化財登録、長崎県 まちづくり景観資産に登録されていますが、解体前に登録を解除していたそうです。朝日新聞によると、2016年4月25日の「市景観審議会」で市指定解除が諮られ、異議はでなかったそうです。
県なり市なりが手をかけ「心田庵」みたいに一般開放すれば良いとは思うのですが、見学期間中は「心田庵」は県内外の人で一杯です。
長崎では、日本初の西洋式病院「小島養生所」をどうするかで紛糾しました。遠くは原爆で破壊された浦上天主堂をどうするか検討され、結局、取り壊されました。広島の原爆ドームの取り扱いとは段違いです。平和の象徴として残すべきだったでしょう。なにしろ、キリスト教の国が、教会を原爆で破壊したのですから。
と言うように、長崎ではあまりにも、日の当たる文化財のみが大切にされているみたいです。
現在、県庁移転に伴う跡地利用をどうするか、なにを作ろうかの議論が盛んですが、旧県庁跡地は「サンパウロ教会」があり、その後「長崎奉行所西役所」があり、また、その後、勝海舟が学んだ「海軍伝習所」があった場所であり、発掘調査をすれば何か出てくるはずなのですが、トンとその様な話は聞きません。
お宝は地下にあり、空中にはないのです。地上に何かを作るとか、跡地利用をどうするかより、歴史に寄り添った開発を考えて貰いたいものです。
多分、登録遺産地区については広範囲にわたり、今後の努力が必要ですが、なんとなく、石見銀山遺跡、富岡製糸工場の二の舞を感じます。数年間は大丈夫でしょうが・・・・ブライアンさんが書いているように、富貴楼と同じように「返上の日を懸念」にならなければ良いのですが・・・・
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