「道歌入門」~岡本彰夫
著者は元春日大社権宮司。
「道歌」というのは、耳にしたことが無く、前書きを読むと「・・・この種の道徳的和歌を『道歌』と呼んでいることも後年知り得ました。」と書いてあるので、抹香臭い話かなと思いはしたのですが、パラッとめくったところ・・・「さけのみが/酒にのまるる/世の習ひ/のまれぬように/飲むが酒のみ」・・・・など書いてあり、読んで見たら、面白いのやら、身につまされるのやら、人生訓として心に沁みるのやらで、一気読みしましたが、各々の和歌に説明が載せてあり、これが本当は役にたつのですが、長くなるので、少しばかり和歌の紹介と私の感想と。
■「親を捨て/妻すて金も/すてつくし/はては女に/すてらるるかな」(林田雲梯・出典不詳)
ワタシの場合は「女」ではなく、「カミサン」ですが。
■「としを経て/うき世の橋を/見かえれば/さてもあやうく/わたりつるかな」(作者不詳『鳩翁道話』)
確かに、この歳で振り返ればあの時はヤバかったな、と思うことがありますね。皆さんも同様でしょうが。
■「なにひとつ/とどまる物も/ない中に/ただ苦しみを/とめて苦しむ」(作者不詳『松翁道話』)
世の中、川の流れと同じで、とどまる物はないもの。苦しみだけを、とめて苦しむ、ですね。心の持ちようなのですが。
■「知らぬ道/知ったふりして/迷ふより/聞いて行くのが/ほんの近道」(作者・出典不詳)
「先達はあらまほしき事」と言ったのは、吉田兼好だったか。ただ、人生において、何でも先輩にイージーに聞くのは、よした方が良いと思うのですが、迷って、苦しむのも、将来の自分の力になります。
■「恩をして/恩きせがほに/奢りなば/恩にはならで/恨みとぞなる」(作者・出典不詳)
■「知りたるも/しらぬ顔なる/人ぞよき/物知り顔は/見ても見苦し」(作者不明『西明寺殿百首和歌』)
もうすぐ6月、新入社員の研修が終わり、各部署に配置されると思いますが、先輩方は上の言葉を心にとめて・・・
■「火の車/作る大工は/なけれども/己がつくりて/己が乗りゆく」(作者・出典不詳)
「因果応報」という言葉もあります。
■「世の中の/人は何とも/云へばいへ/我がなすことは/我のみぞしる」(坂本龍馬・出典不明)
ご存じ「坂本龍馬」がいった言葉で、「福島正治」さんが言ったのではありません。
■「手を打てば/鯉は餌(え)と聞き/鳥は逃げ/女中は茶と聞く/猿沢の池」(作者・出典不明)
「猿沢池」は奈良の興福寺の旧境内にあるそうです。
言われてみれば、手を打った音でもいろいろな聞き方があるもので、人の言葉も取り方が様々なので、注意しましょう。
■「長命は/粗食/正直/日湯/陀羅尼/おりおり御下風/あそばさるべし」(作者・出典不詳)
「日湯」は風呂に入ること。「陀羅尼」はお経を読むこと、「下風」は屁をこくこと。現代は、ストレスの多い世の中、と思ったら、意外に昔もストレスが多かったのかな?
■「人間は/耳が二つに/口一つ/多くも聞いて/少し言ふため」(作者・出典不詳)
「無くて七癖」で、自分には気がつかないことが多く、もう一度自分を振り返りましょう。最近は、自分の意見ばかり言う方が多くて・・・
■「骨かくす/皮には誰も/迷ひけむ/美人といふも/皮のわざなり」(蜷川親当『一休和尚伝』)
美人もイケメンも皮を剥ぐと、同じ白骨なのですが、ということは分かっているのですが、我々、俗人はですね、皮を見るばかりで。
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