「君たちはどう生きるのか」雑感
最近この本が売れているらしく、卒業生の記念品として贈られた学校もあるとか。
私、大体がへそ曲がりのところがあり、人の生き方とか、人生とは、とかいう本があまり好きでは無いのですが、いつもの田舎の本屋さんで、平積みで二列に置いてあり、よく売れている感じでした。と言うことで、私も買ってきました。
今一番売れているのが、左の漫画化(マガジンハウス刊)されたもの。一番右は、岩波文庫刊、真ん中はマガジンハウス刊。真ん中の本は、一番下に書いてあるように、「字が大きくて読みやすい」本で、ざっと立ち読みしたところ。岩波文庫と同じもの。
違うのが、漫画版は前書き、後書き、説明無し。真ん中の本は、池上彰氏の簡単な前書き付き。岩波版は、後ろに、著者、吉野源三郎氏の「作品について」と、吉野氏の知己、丸山真男氏が書かれた追悼文「『君たちはどう生きるか』をめぐる回想ー吉野さんの霊にささげるー」が約30ページほど書いてあります。
ということで、漫画版と岩波版を買ってきて読み比べてみました、が、岩波文庫版は字が小さく、何せ、近眼に老眼に乱視、加齢のため字がボケる、疲れる、ということで半分ほどしか読み進んでいませんが・・・・
さて、この本の経過については岩波版の、吉野氏と丸山氏が書いていますが、山本有三氏編集の「日本少国民文庫」全16巻の最終配本として1937年(昭和12年)に発刊。その後、内容と分量のうえで変更され、1956年(昭和31年)に新潮社より「日本少国民文庫」として発刊、1967年(昭和42年)にポプラ社より「ジュニア版吉野源三郎全集」として発刊。
この間、戦前、戦後となりますから、漢字、カナ、文章の変更、戦後の生活環境の大きな変化などを現代風に書き直されたそうです。
とまあ、くどくど書いたのはこの作品が戦前の昭和12年であること。吉野氏が「当時、軍国主義の勃興とともに、すでに言論や出版の自由はいちじるしく制限され、労働運動や社会主義の運動は凶暴といっていいほどの激しい弾圧を受けていました。山本(注:有三)先生のような自由主義の立場におられた作家でも、1935年には、もう自由な執筆が困難となっておられました。」という時代に書かれた作品であることで、その作品が脈々と生き続け、ロングセラーになり、今日、ベストセラーになっていった、ということを頭に入れて読んで欲しいからで、この岩波新書の吉野氏が書かれた「作品について」は是非読んでいただきたいと思います(4ページほどです)。
作品は、中学生のコペル君とおじさんが中心になります。コペル君が考えた事、学校での出来事(いじめ)などについて、おじさんが自分の考えをノートに書き、それをコペル君が読み、いろんな事を考えることが描いてあります。
漫画版と書籍本では違うところもあり、漫画版ではコペル君は、お母さんとの二人暮らしになっていますが、原典では「コペル君のお父さんは、二年ばかり前になくなりました。大きな銀行の重役だったお父さんがなくなったのち、コペル君の一家は、それまで住んでいた旧市内の邸宅から、郊外の小じんまりした家に引越しました。召使いの数もへらして、お母さんとコペル君の他には、ばあやと女中が一人、すべてで四人の暮らしになりました。」となっています。
ただ、漫画のため、また、ページの関係、対象が思春期の少年少女ということを考えれば、かなり集約された部分もありますが、活字離れしている子どもたちには、読書の入門としてちょうど良いのかなとは思いました、ただ、コペル君のおじさんのノートの中身は、原典と一緒です。
漫画の部分に、友達がいじめにあい、自分も殴られるのが怖く逃げ、悩む所もありますが、このような経験をもった今の子ども多く、共感を持ち、考えた子どもも多かったと思います。おとなの方には、岩波文庫でも読んで欲しい作品でした。
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