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2017年6月 9日 (金)

「年を歴(へ)た鰐の話」~レオポール・ショヴォ著・山本夏彦(飜譯)

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昨日、安野光雅氏の「本を読む」の中から、「異端審問」を紹介しましたが、今日は「年を歴た鰐の話」。

この本には、ほかに、「のこぎり鮫とトンカチざめ」、「なめくぢ犬と天文學者」が収められています。出だしは・・・

この話の主人公は、たいそう年をとった鰐である。
この鰐はまだ若い頃、ピラミッドが建てられるのを見た。今残ってゐるのも、壊されて跡かたも無くなってしまったものも見てゐる。ピラミッドなどといふものは、人が壊しさへしなければ、大地と共にいつまでも残ってゐるはずである。

なんとなく、面白そうでしょう?さて、「年を歴た鰐の話」、あらすじを書こうかとも思ったのですが、何とも書きようがなく、この本を評した人の文を書いた方が良く分かると思います。

吉行淳之介氏は後書きで

この本が、私には矢鱈におもしろく、いろいろな友人に読ませたので、表紙はかなり痛んでいるが、粗末な藁半紙の本文用紙は健在である。この本を貸した友人の一人は、
「わが国で、こういう作品が出るのはには、あと三十年かかるだろうな」
と、嘆息していった。その友人は安岡章太郎だったと思う。

徳岡孝夫氏の後書きによると、「年を歴た鰐の話」は昭和十四年の「中央公論」四月号に出て、昭和十六年、本の出版が東京・櫻井書店から刊行。

この、櫻井書店の桜井氏について、同じく後書きで、久世光彦氏が、《桜井は、赤本屋あがりだと言われ、始終それを苦にして一流の出版社になりたくて、なれまいまま死んだ》ー翁(注:訳者の山本夏彦氏)は涙を流しながら、桜井某の生涯を辿る。素手でその体を撫でさする。いまに一流になろうと念(ねが)いながら作った「ドウブツ」や「ノリモノ」は低く俗であったが、そこには《思い》が溢れていたのだろう。血を吐く魂から生まれたものである。・・・・

この「年を歴した鰐の話」を吉行淳之介氏が某出版社をそそのかし、再販を山本夏彦氏に申し込んだが断られたそうで、「その後この本が戦前に上梓になるまでの経緯を書いているのを読んで、『なるほど、断られるのもムリないかな』とおもったが、その内容も忘れてしまった。こうなると、この本は『幻の本』ということになってくる。」と書いています。

安野光雅氏も、「本を読む」のなかで、「『年を歴た鰐の話』という本がある。評判ばかりで見た人は少ない。だから、文藝春秋が復刊したときは『まぼろしの名訳だといわれた』。

さて、作者のショヴォ氏について、知らない方も多いかと思いますが、山本氏は「はしがき」で、「レオポール・ショヴォの作品を、我が國に、移植するするのはこれがはじめてだから、原作者はどういふ人物か紹介したいのは山々だが、實は譯者も彼の履歴の詳細を知らぬ。」と、まあ、少し無神経な感じですが。

この物語をどう読むか、いろいろあると思いますが、訳者の山本氏は、「やはり讀者の一人々々が己の甲羅に似せたさまざまな解釋を與(あた)へ、しかもそれに耐へるところにこの作品の無限の妙味と含蓄があるのであらう。従つてこれ以上の解説は蛇足である。」

もう一つの作品、「のこぎり鮫とトンカチざめ」について安野氏は、「なんともおもしろいが、なにがどうおもしろいか、いうのが難しい。」「年を歴た鰐の話」も同じです。

【追記】
この本は、現在別の方が訳して出版されていますが、山本夏彦氏の訳がよろしいかと・・・・




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