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2017年3月28日 (火)

「文庫解説ワンダーランド」★斎藤美奈子著~本の読み方が変わる本!

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「文庫本の解説」の「解説」とは面白いことを考えたもので、最初の「序文」の出だし、「文庫本の巻末についている『解説』はなんのためにあるのだろう。」
「あとがき」の出だしが、「文庫本の巻末についている『解説』は誰のためにあるのだろう。」

という事ですが、小説等を読んだあと解説を読み、「あ~、こんな本だったのか」と思う事もあり、特に難しい本はですね。要するに、本自体ではなく解説者の考えに影響を受けてしまう事も多いものです。

この本は、文庫本の解説について評論をしたもので、作者と解説者の関係、時代とともに変わる解説等々について述べてありますが、読んでみて、ナルホドの本でした。

時には、ばっさり切ったり、ユーモアを交えたり、なるほどと納得したり。
オスカーワイルドの、「幸福な王子」について次のように書いています。

”実際、文庫解説の中には、それまでの作品の読み方を一変させてしまうものがある。私が完全に『やられた!』と感じたのは『ゲイ短編小説集』(平凡社ライブラリー/1999)に寄せられた監訳者・大橋洋一の解説だった。
19世紀末~20世紀前半の作品を中心に〈英米系のゲイ文学として定評のあるもの〉を集めたこの短編集には、ゲイ(男性同性愛)を描いた小説として、たとえばオスカー・ワイルド『幸福な王子』(1888)が収録されている。・・・・”

と、まあ、なんで「幸福な王子」が「ゲイ」の小説になるんでしょう、と、ここは読んでください。

最初は、夏目漱石の「坊ちゃん」から始まりますが、「坊っちゃん」の解説に対する批評は、「坊っちゃん」が単純に勧善懲悪の小説でないことが分かります。
その反対の解説も紹介してありますが、考えると、意外と難しいですね。

川端康成の「雪国」にの解説については、「三島由紀夫や伊藤整のようなタルい評論は、今日の文学批評界ではほとんど目にしなくなった(そうでもないか)。」

ハムレットについては、「戯曲の解説は英文学ではなく演劇的な視点で書いた方が絶対面白い。」としながら、如月小春の「鑑賞」をとりあげ、ベルイマン演出の舞台を紹介しつつ、〈世界中のどこの街角にもいる、将来への希望を見失い、愛情に飢えた若者たちと重なりあうような、一人のナイーブな青年の姿だ。〉〈この出来事を、今の時代の若者に置き換えて想像してみて欲しい、立派な父と優しい母に育てられ、幸せに暮らしていた素直で感じやすい青年がいたとして、ある日突然父が死に、母は大嫌いな叔父と結婚してしまったとしたら!〉〈おちこむ、ふてくだれる、反抗する、それ以外どんな道があるのだろう!〉

と、こう解説されると、高尚なシャークスピアの演劇も、身近に感じられものです。

さらに、松本清張、赤川次郎等も取り上げられますが、村上龍(余談ですが、長崎の県立図書館を始め県下ほとんどの図書館で、「村上龍」と「村上竜」と混在しています。県立図書館に注意したところ。「人間と、予算がなくて・・・・」という事で、はやり長崎県は活字文化を大切にしない、非文化県ですね。力を入れるのは、金になる文化遺産登録ばかりで・・・・と長々不満を申しましたが)の解説は多いものの、「村上春樹作品の文庫には、なぜかいっさい解説がついてない。・・・」という事で、ここ、もう少し、突っ込んで書いてほしかったな。もっとも、解説の解説本で、解説が無いことには書けませんが・・・・

とにかく、読んで面白く、小説の読み方が変わってきます。
なお、取り上げてある小説が多いので、裏帯に取り上げた主な作品が載せてあったので。


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「ほか多数!」です!!



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