便所の話など~滝沢馬琴の汲み取り騒動


昨日、「便所の話など~学校に洋式水洗トイレは必要か」という事で書きましたが、その折、上の2冊を参考に読んでみました。便所の歴史、文化、経済等の事が書いてありますが、「江戸の糞尿学」の中で、滝沢馬琴に関する事が書いてあり、少し面白かったのでご紹介を。
なお、「江戸の糞尿学」の表紙。黒で塗りつぶした部分がありますが、本物はモロ書いてありますので、ご興味ある方はご購読ください。なお、本文中にもこれ以上の絵が各種載せてあります。
滝沢馬琴(曲亭馬琴)といえば、教科書にも出ており、「南総里見八犬伝」、「椿説弓張月」が代表作になります。
「江戸の糞尿学」を書き写すと長くなるので、概略。
時は天保二年七月十八日。下掃除人(便所の汲み取りをする下掃除人)の農民が、汲み取りの謝礼として、自分が作った茄子(なす)250個を持参。
現在は汲み取りをしてもらうと料金を払いますが、当時は畑の肥料とするので逆に料金をもらっていました。以前、寺子屋の授業料を銭で払ったり、農作物で払ったりということを書きましたが、この場合は農作物だったのでしょう。対応したのは、息子の妻のお路。
で、茄子の数を聞かされた馬琴、「五十個不足しているのではないか。」
下掃除人の農民は、「ひとりに付き五十個の約束ですから、五人で二百五十個です」
馬琴、「いや、我が家は子供ふたりを入れて七名じゃ。子供ふたりを大人一人に勘定して、六名。茄子の数は三百個のはず。」
この時、馬琴世帯は、
☆馬琴、六十五歳
☆お百(妻)、六十八歳
☆宗伯(息子)、三十五歳
☆お路(宗伯の妻)、二十六歳
☆太郎(宗伯とお路の息子、馬琴の孫)、四歳
☆おつぎ(宗伯とお路の息子、馬琴の孫)、二歳
☆仕込みの下女おまき、三十五歳
下掃除人、「十五歳以下は人数に入れませぬ。ですから、大人は五人で二百五十個です」
馬琴、「いや、前回、前の下掃除の者は、干大根を三百個持ってきたぞ、そのことは知っておるのか。では次の干大根は何個持参するつもりか」
下掃除人、「これまでのいきさつは知りませぬ。ですから、大人五人で二百五十個をお持ちするつもりです。」
馬琴、「そのほうは今回が初めてなので、いきさつを知らぬかもしれないが、五人という計算はとうてい納得できぬ。そんな理屈に合わない茄子は受け取れぬので、すべて持ち帰れ」
ということで、茄子はすべて持ち帰させられたそうです。
馬琴の几帳面で、頑固さがわかる話です。でも、茄子を200個も250個も受け取ってどうすんでしょう?干大根なら漬物にして、わかるのですが・・・
なお、喜永元年六月六日
「おさち(馬琴の孫娘十六才)、蚘虫(ゆうちゅう)丸の功ニて、折々一ツ二ツ、下り候所、今日は二寸許(ばかり)の小蚘虫数不知(かずしれず)多く下り候由也」とあり・・・
「蚘虫は回虫のこと。滝沢馬琴の孫娘で十六歳のおさちは、虫下しを飲んだ結果、このところ毎日のように肛門から回虫が一匹、二匹と下っていたが、今日は六センチくらいの小さな回虫が肛門から数えきれないくらい、ぞろぞろと出た、と。」いうことです。
私たちの小学校の頃も回虫の検査があり、マッチ箱にウンチを入れて学校に持って行ったものです。私も、虫下しを飲んだら、うどんくらいの大きさで、30㎝くらいの回虫が肛門から(肛門からしか出ませんが)出てきたことがあります。人糞を肥料にしていたので、あたりまえでしょうが、今では考えられないことです。
上の2冊、そのほか面白い事が書いてありますので、興味ある方はご一読を。
右の本の表紙写真は、座敷便所です。こんなところで、でるのかな?
(文引用:「江戸の糞尿学」より)
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