「春に散る」~沢木耕太郎著
沢木耕太郎氏によるボクシング小説は、短編小説集「敗れざる者たち」の中ので、カシアス内藤を描いた「クレイになれなかた男」。同じくカシアス内藤を描いた長編小説「一瞬の夏」があります。
私が、ボクシングに興味を持ったのは、小学校のときボクサーを描いた映画を見た時からで、それ以来、ボクシングの試合というと、楽しみに見たものですが、もっとも長崎では生のものは見られず、TVばかりでしたが。
記憶に残るのが、大場政夫。1ラウンド目でダウンし、右足をくじきながら、足を引きずりながらも、12ラウンドで逆転ノックアウト。藤猛の「ハンマーパンチ」、「勝ってもかぶってもオシメよ」、「岡山のおばあちゃん見てる」。赤井英和は世界チャンピオンになれると思ったのですが・・・・。具志堅用も今ではタレントで、TVなどに出ていますが、すごいボクサーでした。ジョージ・フォアマンとカシアス・クレイの「キンサシャサの奇跡」は、すごかった。書けばきりがないので。
現在、ボクシング協会が林立し、何が何だか分からなくなり、どれが本当のチャンピオン?という感じで、段々興味が薄れてきたのですが・・・
さて、小説のほうは一口で言えば、「若くして挫折しかかった若者と、それを立ち直させた元ボクサーの老人たちの物語」ということになりますが・・・・
元ボクサーとは、真拳ジムの四天王と言われ、誰かが世界チャンプになれるだろうと言われた4名。小説の主人公はそのうちの一人、広岡仁一。
日本タイトル戦で勝ったと思ったら、ジャッジ判定で負け。日本のボクシング界に疑問を抱き、アメリカへ。その地で、才能の限界を知り、ボクシング界から離れ、苦労しながらホテルの経営者へ。
あることから、心臓病を抱きながらも、待つ人もなく、何のためにか分からないまま40年ぶりに日本へ。
四天王のうち3名に会うが、荒んだ暮らしの者ばかりで、家を借り「チャンプの家」と名付け、共同生活へ。そして、ヒョンナことから出会った「挫折しかかった若きボクサー」黒木翔吾。これに、広岡仁一に家を貸した不動産に勤める、土井佳菜子が絡む。この若い女性も、ある秘密があるのですが。
結局、4人と、翔吾、佳菜子がボクシングを目指し、共同生活をしていき、四天王はそれぞれに独自のテクニックを持っており、これを翔吾に教え、ライト級王座決定戦兼世界タイトル次期挑戦者決定権戦、そして、迎える世界チャンピオン戦。と、あとどうなるかはお読みください。
読みながら、私たちは若いころ夢を持っていたはずですが、だんだんそれが薄れ、失い、そしてそれが時々、どうした時か、ふと思い出される。
自分の人生はこれで良かったのか、もっと、他の人生があったのでは、と疑問に思う今日この頃ですが・・・歳取らないと、実感としては分かりにくいと思いますが・・・・
この小説はひょっとしたら、「一瞬の夏」に書かれた、沢木幸太郎氏がカシアス内藤への夢を見た、「叶わなかった夢の続きを、黒木翔吾に託す」という物語ではなかったかと思うのですが・・・
もっとも、なんとなく、「三匹のおっさん」も思い出したのですが・・・
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