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2017年1月 6日 (金)

「涙香(るいこう)迷宮」~竹本健治著

Img_20170106_0001

「くろいわるいこう」をパソコンで変換すると、「黒岩瑠偉公」となりました。ちなみに、「むらかみはるき」は「村上春樹」。時代ですね。

「黒岩涙香」は、私たちの世代では、「鉄仮面」、「巌窟王」、「噫無常(あゝむじょう)」などを思い出すのですが、実は「萬朝報」(注:新聞)を出し、朝日、読売を抜き、東京一の発行部数を誇っています。

「二六新報」が廉価な新聞を出し、読者に福引券を出し、一等は純金三〇匁の延べ棒、二等は上等白米俵等を出し、読者を引き抜きますが、それに対し、涙香はクイズを出し、懸賞金が500円。当時の500円は「ちょっとした家が建つ金額」だそうで、クイズは12文字を組み替えて一つの文章にし、それを解くというもので

月曜日は、「コアサクサイワカネドナデ」
水曜日は、「イシロヤマドデイヌワコナ」
金曜日は、「ギミハミギケウシロニシン」

月曜日の文は、「アサクサデナイ、カネハドコ」。「浅草でない、金はどこ」。
「金」は「鐘」であり、「鐘は浅草でない」と言えば、「花の雲鐘は上野か浅草か」で、「金は上野」にあり。

水曜日は「シロヤマデナイ、イヌハドコ」。「城山でない、犬はどこ」
「城山」、「犬」、前文の「上野」とくれば、「西郷隆盛の銅像」。

金曜日は、「うしろ右端、二間」ということで、答えは、「上野の西郷さんの銅像の後ろ右端二間のところ」。そこを掘れば、小判型の木札があり、本社に届ければ懸賞金を貰えるという事です。おかげで、新聞の売り上げは伸びていきます。とまあ、涙香は面白いことを考える人物。

ですが、そのほか、俗に堕した都々逸を、俚謡として復活されるべく「俚謡正調」と題し七七七五形式の誌を募ったり、現在の「競技かるた」を創始し、これが現在の、「全日本かるた協会」へと発展しているそうです。その他、花札、ビリヤード、自転車、野球、闘犬等々、手を染めていったそうです。

その中でも、「五目並べ」を改正し「連珠」にまで高めています。本編にも詳し過ぎるほど説明してあります。

さて、遅くなりましたが、本書の主人公は、「史上最年少で本因坊」となる、牧場智久。

黒岩涙香研究家の麻生徳司が、手を尽くし探し当て、今は廃墟となった涙香の隠れ家。ひょんなことから、牧場、牧場の恋人類子、そして涙香ファン数名と共に、隠れ家の調査へ。

廃墟には広間と、子、丑、寅・・・と十二の部屋。そして、各々の部屋の東西南北にはめ込まれた青銅版。そこに刻まれた涙香の「いろは」。いわゆる、「いろはにほへと ちりぬるを・・・」と全部の文字を使った歌。

「子」の部屋の北側には

露置く梢 日も濡れて   つゆおくこすゑ ひもぬれて
畝の紫陽花 霧けぶる   うねのあちさゐ きりけふる
空見る虹を  手弱女と   そらみむにしを たわやめと
纖翳叶へ まほろばよ   せんえいかなへ まほろはよ

これが、全部で48編の「いろは」があり、この48編の「いろは」に隠された謎。そして、それを解き進む、牧場智久。

殺されそうになる、牧場。一人の女性が殺され、嵐にとじ込まれた人々。
と、まあ、面白いのですが、「連珠」「いろは」については、少し勉強してないと難しいですね。かなり、辛いです。

黒岩涙香について、興味のある方はとても面白い小説です。なお、山田風太郎「明治バベルの塔」を併読すると、より面白いと思います。

なお、殺人事件は2件起こりますが、なんとなく、付けたしみたいな感じもするのですが・・・・

ただ、一つ謎が残されます。小説とは別の話になるのですが、「ウミガメのスープ」というクイズがあります。分からない方は、ネットで調べると分かると思います。

これに、続いて次の問題が提起されます。「萬朝報」の売り上げが落ちた時、涙香は「開戦論」へ舵を切り替えますが、これに対し、論説を書いていた、幸徳秋水、内村鑑三、堺利彦は退社をします。

秋水が退社届を出し、荷物の整理をしていると、背後から涙香が組み付き匕首を胸元に突きつけます。「はっと驚き、身を固める秋水。すると涙香は手を放し、少しさがってふてぶてしい笑みを浮かべながら『これが僕からの餞別だ』と言いました。するとしばらく眼をパチクリさせていた秋水は『有難うございます』と深く頭をさげ、荷物を手に社から晴れ晴れとした顔で去っていきました。さて、この二人のやりとりは何だったのでしょう?」。これについては、最後まで答えは書いてありません。さて、何だったんでしょう。山田風太郎氏の小説には、涙香、秋水の関係も書いてありますので、是非お読みください。

なお、48編の「いろは」について、涙香がどこかで書いていないかと、ここ一週間ほど調べましたが、全然分かりませんでした。分からないはずで、この「いろは」を作ったのは・・・・・・氏だったのです・・・・

(参考:山田風太郎「明治バベルの塔」)



  



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