「最期の秘境 東京藝大」~二宮敦人著
「東京藝大」ですね。実は、私、三十数年ほど前、一か月半ほどこの学校に通ったことがあるのです。もっとも、学生食堂ですが。職に関係ある研修所が、上野にあり、若いときだったので、味はともかく、料金が安く、量が多いところ、といえば、なんといっても学食。
で、やはり、いましたね。奇抜な格好をされた学生さん。この本には、「仮面ヒーロー『ブラジャー・ウーマン』」なる女性も現れ、凄くスタイルがいいそうですが、「ブラジャーを仮面のように顔につけ、唇と爪は赤く彩られ、上半身はトップレス。乳首の部分だけ赤いハートマークで隠し、下半身は黒いタイツで、その上にピンクのパンツをはいている─藝大の構内を歩いていると、そんな人に出くわすという。」これに対し、「Tバック・ウーマン」もいるとか。私の時には、ここまではいませんでしたが。
ただ、バカがバカなことをやるのではなく、それにはそれなりの理由はあるのですが、「バカ真面目っていうんですかね。真面目にバカをやろうと思ったんですよ。」
なお、藝大の売店には「ガスマスク」が売られていたり、藝大の隣は上野動物園ですが、「上野動物園のペンギンを一本釣り?」、「最初で最後の『藝大に口笛で入った男』になるだろうと言われている」学生の話とか、鍛金(たんきん)の研究室には、大型機があり、「機械の力で金属が飛んで行ったら、そこにいる人、真っ二つになります。・・・・」、金属で切ってけがをした時、「・・・僕は、瞬間接着剤でピット止めちゃいますけど」とか面白い話も書いてありますが、多くの学生が専攻の部門の話を語っています。人はなぜ、「美」を求めるのか。
前後になりますが、著者は作家で、奥様は羨ましくも、現役の「藝大生」。もちろん、藝大も国立ですから、センター試験もありますが、奥様は自己採点で3割位の出来だとか。
「先輩で、センター試験一割しか取れなかった人もいたらしいよ」
・・・・・・
「でも、実技の順位が三番目くらいだったんで、それで絵画科に合格」
要するに、重要なのは実技試験。私も吹奏楽をやっていて、少しは上手だったので、一回、藝大の試験の初見(初めて見る楽譜を練習なしで、ぶっつけ本番で演奏)の楽譜を見ましたが、目が点になり、音楽をあきらめました。とにかく、ピアノ科に至っては「コンクールの上位常連、あるいはコンサートで客が呼べる・・・そんな人たちが藝大を目指すわけ。・・・」ということですから。
帯の表紙に「入試倍率は東大の3倍!」とありますが、平成27年度東大理科3類の志望率が4,8倍。それに対し、藝大の最大難関の絵画科の志望率は、17.3倍。藝大全体でならしても7,5倍ですから、完全に東大を抜いています。
それで、卒業して飯が食えるかというと、「アーティストとしてやっていけるのは、ほんの一握り、いやひとつまみだよね」
「他の人は卒業後、なにをしているの?」
「半分くらいは行方不明よ」
ということで、はやり、厳しい道ではあるようです。
いろいろ書きましたが、絵画、彫刻を見るのがお好きな方、音楽を聴くのがお好きな方、一流の芸術家を目指す卵たちが、何を考え、何をしているのか、よくわかります。この本を読んだ後、絵画等を見る目、音楽を聞く耳が少し違っていることに分かると思います。
蛇足になりますが、藝大に限らず、音大の声楽専科の方とは、絶対にカラオケにはいかないように。忘年会の帰りにカラオケによって、音大声楽専科の方が歌った後は、誰も歌いませんでした(歌えませんでした)。忘年会を前に、一言でした・・・
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