「家康、江戸を建てる」~門井慶喜著
この本「ブラタモリ」好きの人必読です。
家康は、秀吉より、北条氏の旧領、関東八か国「相模、武蔵、上野、下野、上総、下総、安房、常陸」を賜りますが、「駿河、遠江、三河、甲斐、信濃」を差し出し国替えをします。というより、無理やりですね。
ところが、入部先を、小田原、鎌倉等ではなく、「江戸」を選ぶわけですが、当時の江戸は、ひどい土地で、これを「大江戸」にどう作り変えていくかの物語になります。五話の話になりますが。
第一話、「流れを変える」
当時の江戸は、北から何本もの川が流れ込み、そのため江戸は水びたしの低湿地。この川の流れを変え、どう土地を変えていくか。
改修に選ばれたのは、「伊奈殿に何の武功ありや。三河国で一向宗の門徒どもが一揆を起こしたさいには一向軍の味方について殿様にやいばを向けたではありませんか」という男。もちろん、家康には考えがあるのですが・・・・
これから、伊奈家三代にわたり、江戸の河川を変えていくのですが、地図を見ながら、川がどう変わっていったのか、見ながら読んでいくと、面白いでしょう。
第二話、「金貨(きんか)を延べる」
武の時代のあとは「経済」の時代。家康は、彫金師で大判を作る五藤家の長乘を江戸へ呼びますが、弟子、橋本庄三郎を伴ってきます。
長乘は二年後帰洛し庄正三郎だけが残され、さて、これからどうするか。小判作りとは、経済のみならず、政治にどうかかわりを持っているのか、良く分かります。
第三話、「飲み水を引く」
「民政家としての家康の脳裡には、水しかなかったと言っても過言ではない。江戸というのは水を排し、同時に水を給しなければ使い物にならぬ土地なのだ」という事で、大久保藤五郎がその任に命じられます。
13年後、家康は武蔵野に鷹狩りに行きますが、土地の者が呼ばれ、名前は、内田六次郎。で、地下水が湧き出ている所に案内しますが、六次郎はそれが縁で、普請役に命じられます。
藤五郎と六次郎、江戸の上水を完備しますが、これも、地図を見ながら読むのが面白いとかと思います。
四話、「石垣を積む」
江戸城の石垣の石の切り出しを大久保長安から命じられた「見えすき吾平」。とにかく、江戸城(皇居)は見ての通り、大量の石を使っています。さて、どう工面するのか?
石積みの親方「見えすきの喜三郎」。どのように石垣を積んでいくのか、読みどころです。江戸城を見る機会がある方は、読んでみてください。石垣の見方が変わります。
第五話、「天守を起こす」
徳川二代目の秀忠は、江戸城を作るに際し、「天守閣」は不要としますが、家康が作るよう命じます。
当時は、城の外側は、「黒」が基調。しかし、家康は外見を「白」にするよう命じます。漆喰が必要になりますが、大量の漆喰をどうするのか、なぜ、家康は外見を「白」にしたのか。
本を読むと、東京の各所に当時の名前が残っており、そのいわれも書いてあります。文体は難しいものではなく、「ブラタモリ」以上の面白さです。
家康といえば、信長の豪胆さ、秀吉の逸話などに比べ、地味なオジサンという感じですが、さすが、江戸時代の基礎を作った人物だという事がわかりました。
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