「だれも死なない」~トーン・テレヘン著
作者の「トーン・テレヘン」、あまり聞かない名前、というよりAmazonで調べると、この本と、「小さな小さな魔女ビッキ」、6月に出版されたばかりの「ハリネズミの願い」があるばかりで、「ハリネズミの願い」があまりにも面白いので途中まで読み、、先に「だれも死なない」を読んでみました。子供のための童話、というより、大人のための物語でもあるかと思います。
リス、アリ、ハリネズミ、ゾウ、カメ等々の動物が出てきますが、どれも、2~3ページの短い物語になっていますが、この本を書くにあたり、作者はいくつかの規則を設けたそうです。
1、同種類の動物は複数、登場しない。たとえば、ゾウは一頭のみ、アリもリスもしかり。
2、みな同じ大きささ。だから、ゾウとアリがダンスをすることもできる。
3、だれも死なない。
4、人間は出てこない。
「あとは自由自在にゾウが空を飛び、リスはタコのいる海に遊びに行くが、この規則だけは破られることがない。この枠組みがあってこそ、どうぶつたちをのびのびと動かすことができるのだそうだ。」という物語。
残念ながら、全部の訳ではないみたいですが、「ひっくり返れないサギ」、「リスとアリの手紙」、「カミキリムシの昼寝」、「みんな、どこへいるの」、「なんでこんなに不器用なんだろ」、「海のお茶会」、「かなり大きな危険」、「ゾウの上でしょう」「謎めいたびん」、「カの誕生日」など魅力的な題が並んでいますが、中には哲学的なものもあり、といっても、優しい言葉では書いてあるのですが・・・
【夜空のダンス】
ラクダのパーティーで、ホタルがミミズの隣に座っていた。
ホタルはぽっと光って言った。
「ねえ、ミミズ、たまにはぼくが心配になること、何だかわかる?」
「ううん」ミミズが言った。
「ぼくの明かりが急につかなくなっちゃうってこと」
「ふーん」ミミズが言った。「ぼくは急に自分に明かりがついたら、なんて考えただけでも嫌だけどね」 (以下略)
【うまく浮かんでいる】
ある朝とつぜん、すべてのどうぶつたちが空中に浮かび上がった。そんなに高くはなかったが、やはりちょっとした風景だった。 (以下略)
【ぼくはカメ】
ある朝、コオロギがカメに聞いた。
「ねえ、自分がたしかにカメだって確信がもてる?」
カメはうろたえてコウロギを見つめ、考え始めた。
しばらくして、カメは答えた。「ううん、確信がもてない」
カメは暗いまなざしで、コウラの下からのぞくようにコウロギを見た。(以下略)
【どういうふうに終わるんだろう?】
「リス、いつかぼくたちも終わると思う?」ある時、アリがたずねた。
リスは驚いてアリを見つめた。
「ほら、パーティーが終わるみたいに」アリが言った。「じゃなきゃ旅が終わるように」 (以下略)
と、出だしだけ紹介をしましたが、どの物語も、それぞれに考えさせられるものがあります。じっくり読んでいく本といえるでしょう。
なお、「だれも死なない」という題は、谷川俊太郎さんがつけたそうですが、4つの規則のうちの「3、だれも死なない」からとったそうです。
この本、残念ながら絶版になっており、Amazonの中古本で6,980円。と言っても図書館に置いてあると思います。馴染みの図書館になかったら、現在、図書館同士で相互貸借をしていますので、図書館の方へ申し込めば、他館から取り寄せてもらえると思います。
作者はお医者さんですが、娘にせがまれ物語を作ったそうですが、50冊以上の本を出版しているそうです。「ハリネズミの願い」も面白く、考えながら読んでいますが、いずれご紹介を。子供が読んでも、大人が読んでも、面白い本です。
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