「人生で大切なたったひとつのこと」ジョージ・ソーンダーズ著★外山滋比古・佐藤由紀訳~軽くて重い本
わずか150グラム、63ページの本ですが、中身は重くて深い本です。
この本は、2013年5月12日、ニューヨーク州の名門校 、シラキュース大学教養学部の卒業式で、ジョーン・ソーンダーズ氏がおこなったスピーチだそうで、「20分の原稿を用意していたが、卒業式の2日前に8分間」と聞かされたそうです。
卒業式のスピーチなど覚えている方は少くないと思いますが、このスピーチは、「卒業式から三ヶ月後の七月二十一日、ニューヨーク・タイムズ紙のウェッブサイトにスピーチ原稿が掲載されると、たちまちアクセス数が百万を越え、世界中で反響を巻き起こします。」という事で、中は原文の英語と日本語の訳文からなっています。
著者は最初の方で、「さて、としよりとつきあっていいこと、といえば、おカネを借りることや、ダンスのひとつも踊らせて、それを見て笑いとばすことくらいでしょう。実は、あなたがたの役に立つことがもうひとつあります。『人生を振り返ってあなたが後悔していることは何ですか?』とたずねることです。・・・」
著者はここで、エレンという女の子の事を書いています(内容は読んでください)。別段いじめをしたという事ではないのですが、「わたしが人生でもっとも後悔しているのは、『やさしさがたりなかった』ということです。」と書いていますが、どうして、人生でもっとも後悔しているのか、各自、読み方で違ってくるとは思いますが。
次の質問、「そこで、百万ドルの値打ちがある質問です。問題は何か?わたしたちは、どうしてもっとやさしいひとになれないのでしょうか?」
もう一つ、「そこで、ふたつめの百万ドルの質問です。わたしたちはどうすればいいのか?どうすれば、もっと愛情があって、もっと心を開いて、いまより自分勝手ではなく、いま起きていることをもっと意識して、いまより非現実的でない、などなどの・・・人になれるのでしょうか?」
著者は、「やさしさ」ということを中心に話を進めますが、やさしくなれる事の困難、やさしさの素晴らしさ、どうしたらやさしくなれるかなどのヒントを提示していますが、理解するには一筋縄ではではいかず、「おわりに」で、外山滋比古氏も次のように書いています。
「この本を最初に読んだとき、はじめの部分がよくわからなかった。ことばは分かっても心が伝わらない。後半になるとずっとわかりがよくなるが、なお、はっきりしないところがある。あわてて、もう一度、読み返してみるとよくわかる。こちらの読み方のせいばかりでなく、この本はもともと二度よまれることをのぞんでいるのかもしれない。
古来、詩歌は、一度だけではなく二度読まれることを前提にしているようである。和歌の披講で二度、読み上げられるのは偶然ではない。すぐれた表現は再読をもとめる。」
私も三度ばかり読み返しているのですが、まだ十分理解できたとはいえず、まあ、このような本を置いて時々読み返し、少しずつでも分かればと思っています。理解できたところは、自分が進歩したと思いながら・・・・
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