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2016年8月12日 (金)

「日本文学全集14★池澤夏樹・個人編集(河出書房新社)」南方熊楠・柳田國男・折口信夫・宮本常一著

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以前にも紹介しましたが、池澤夏樹氏の個人編集全集で、全30巻。珍しい個人編集による全集になります。14巻は「民俗学」が中心になりますが、「文学全集」に「民俗学」とは?

民俗学は「方言・民間の習俗・伝統などを対象として、生活様式の発生・変遷を研究する学問。フォークロア。」(三省堂国語辞典⑦)。なお、民族学とは間違われないように。

この民俗学が畑違いの「文学全集」に入れられたかというと、池澤氏が解説で次のように述べています。

「なぜ民俗学者たちを『日本文学全集』に迎えるのか。
 まず僕の意図を説明しよう。
 もともと民俗学や文化人類学は文学と縁が深かった。どちらも人間の生き方の根本に関わる知的活動であり、精神性や生活という基盤を共有している。T・S・エリオットの『荒野』は二十世紀で最も優れた詩の一つだが、その背後にフレイザーの『金枝篇』とジェンシー・ウェストンの『祭祀からロマンスへ』という文化人類学の著作があったことは広く知られている。
 そして日本の民俗学はとりわけ文学に近いところで育ってきたように思われるのだが、それは日本人がとりわけ文学に依ってものを考えることの多い民だからかもしれない。」、たしかに、柳田國男の「遠野物語」などは、「民俗学」の分野に入ってますが、読み方によっては「文学に近いところ」だといえます。

さて、今回の著者は、「柳田國男」。柳田氏については、学校で習って、知っているかと思います。「熊方熊楠(みなかたくまぐす)」。「折口信夫(おりくちしのぶ)」、折口氏は、歌人、釈迢空として有名。「宮本常一(みやもとつねいち)」、宮本氏は、日本各地を調査し民俗学者として有名です。各人物の詳細については、インターネットなる便利なものがあるので、各自、自学自習を。

さて、私、若いとき対馬に4年ばかりお世話になり、実践はできませんでしたが、「正しい夜這いの方法」(広い意味で民俗学、これも、民間の習俗です、赤松啓介氏などの著書があります)などを習いました。

ある日、宮本常一氏の名著「忘れられた日本人」のなかに「対馬にて」という文章があり、懐かしく思い出し読んだものでした。で、今回も、上の本に「宮本常一」の名を見つけ買ったものですが、え~、こんなことも調べたのかということがあるので、少しばかりご紹介を。なお、原典を損なわないよう、そのまま書き写してみます。


■テボカライ嫁

 長崎の対馬の村々に見られる結婚なども、簡単なものであった。テボカライ嫁などと言って、身のまわりのものを天びん棒でかつげるほどの荷にして、親と仲人がついて婚家へゆき、そこで婿や婿の親と簡単な盃ごとをして、その翌日からは夫の家のものとして田畑の仕事もする。「テボ」というものはわらを編んでつくった籠状のもので、関西から九州地方へかけて見られる荷を運ぶ入れ物である。土地によっては「ホボロ」とも「エンボウ」ともいっている。
 もとより知り合った仲の結婚だからうまくいくはずだが、未婚時代のつきあいとちがって、男のわがままが出てくることが多い。すると女はさっさと家へ帰ったものである。この場合、貞操というようなことはたいした問題にはしなかったようである。そしてまたよい嫁入り口があればそこへゆく、昭和25年(1950)年頃、島できいたうわさ話に、三十八へん結婚したというばあさんがあったというが、私は十八へん結婚したというばあさんに会うことができた。八十三歳になるとかであったが、柔和な、しかし、しっかりした元気なばあさんであった。・・・・・」と続きますが、離婚がそれほど問題にならない社会について分析をしています。

この風習は瀬戸内海地方にも「テボをふる」「ホボロをふる」という言葉が残っており、対馬だけではなかったことがうかがわれるそうです。

「テボをふるというのは離婚することである。もとはテボ一つで結婚したような風習があったことを意味する。」ということで、民俗学の面白さが少しは分かられたかと思います。もっとも、この風習は、残念ながら、私が対馬には行った時には、消えておりました。
これに比べれば、バツ一、二などの芸能人などは、ノミの小便みたいなもんで・・

一つ思い出しましたが、対馬は古くより朝鮮半島との交流があり、大学などから調査に来られますが、「女連(うなつら)」というところがあり、学者さんが調査に来られ、「女連一泊」とメモに書いていたところ、奥様がこれを読み「あなた!女連(おんなづれ)ってなんですか!」と離婚話にもなったとか。



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