「私の死亡記事」~文藝春秋[編]
文藝春秋の企画ものですが、自分が一生を終えた人物として、業績、辞世の言葉、墓碑銘などについて書いてもらおうというものです。
「死を考えることは生を考えることです。人の業績や人生のエピソードは、常に同世代からの評価にさらされ、それを集約したかたちで、死亡記事や人名事典の記述がなされます。それをもって『客観的評価』とされ、私たちはあまり疑問を抱きません。しかし本人がどう思っているかは別問題です。(略)いっそご本人にその作品や人生について書いていただければ、時代を隔てても価値をもつ貴重な資料となりうるのではないかと考えたわけです。」といった、真面目な企画です。
ということで、少しばかりご紹介をといっても、この本の出版が2000年12月ですから16年前で、すでに本当に亡くなられている方もおられます。
本文は、一人で2ページになりますから、抜き書きで、少しばかりご紹介を。
■阿川佐和子(エッセイスト)~とうとう最後まで
「阿川さんが30歳でテレビのニュースのアシスタントとしてデビューしたときは、愛くるしさと初々しさで『その年齢にして何たる若々しさか』と世間を愕然させ、ポスト吉永小百合か、はたまたオードリ・ヘップバーンの再来かと騒がれ、国の内外を問わず、良い寄る男性はあとを絶たなかったという伝説が残っている。・・・それにしても美しい人を失った。余談だが、美人長命という言葉が辞書に載るようになったのは、阿川さんがきっかけであったとは、あまり知られていない話である。享年九十六歳」
阿川佐和子さん、なんと、昭和28年生まれ。今年63歳で、本当にお若い。96歳でお亡くなりになりますから、あと33年はご健在ということで・・・私、大ファンです。
■大宅映子(評論家)~最後の一言は、イェイ
「五十歳近くになってから始めたゴルフには、すっかり夢中になり、つい最近まで年間七十ラウンド以上はこなしていた。今回も十八番ホールで、長いパットを決めて、イェイ、といった途端に倒れ、そのままであったという。」、享年82歳。
日本ゴルフ改革会議議長だそうで、現在75歳。あと7年あります。
■桐野夏生(作家)~失踪して20年目にして
「十月七日、香港の南昌地区にある、永安老人病院で死亡した日本人女性が、二十年前に失踪した作家の桐野夏生さん(七十四歳)とわかり、周囲を驚かせている。」
現在、64歳で、失踪するのが、74歳-20年=54歳ですから、失踪しているはずですが、まだまだ、バリバリ書いておられます。
■高峰秀子(女優)~往年の大女優ひっそりと
「女優・高峰秀子さんが三ケ月ほど前に死去していたことが判明した。
生前『葬式は無用、戒名も不要。人知れずひっそりと逝きたい』と言っていた。その想いを見事に実践したようだ。」
「二十四の瞳」には泣きました。2018年逝去、86歳の人生でした。
■俵孝太郎(政治評論家)~硬骨の評論家「パリの生活」に送られて
「無能・無気力な父親が一人息子の彼に依存しつつ百歳を超す長命を保った体験から『親の長生き・子の溜め息』と喝破、限りのある命にベストを尽くすことが大切で、長命は家族にとっても必ずしも幸福ではない、と説いた。持論通り、ほどほどで逝った。」
まだまだお元気なようで、今年85歳だそうです。
■筒井康隆(作家)~若者グループと乱闘、死亡
「二十七日午後三時二十分ころ、東京都渋谷区神宮前の参道で作家・筒井康隆さん(九十六歳)」が、通行中だった原宿の若者六,七人と乱闘となり、全身打撲、内臓破裂で死去した。筒井さんは数年前より自宅付近のこの付近を散歩し、気にくわぬ若者とみれば杖でなぐりつけていたのだが、この日も若者グループに襲いかかり、逆に袋叩きにされて死亡したものとみられている。」
この人らしい死に方です。
■中野翠(コラムニスト)~風になりたい
「最期の言葉とするべく、かねて用意の『風になりたい』という言葉を呟いたつもりが、ろれつが回らず、『粥を食べたい』と間違われ、ムッとしたとたん、こときれたという。」
■中村敦夫(俳優)~政界引退後は仏門に
「家族は『身近にいた時も不思議な人物で、今では実在したのかどうか定かでない』と感想を述べている。」
■田辺聖子(作家)~幻泡夢の如し
「田辺聖子 昭和の世の女流作家。自称して『文壇の白雪姫』と。」
と、まあ、ほかにも沢山あるのですが、意外と行方不明で亡くなったり、葬儀不要、散骨等多いようですが、寿命は長いのを望まれるようで・・・皆様も真似をして書いてみては如何でしょう。自分を冷静に見つめる良い機会です。
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