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2016年2月25日 (木)

「ガラパゴス」~相場英雄著

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入院中に、本でも読もうかと思って持っていった本です。前に入院した時は、難し

いのを持っていったので、今回はエンターテイメント系を。


相場英雄氏は前作、「震える牛」で、BSE(一時問題になった、狂牛病)を取り扱

い、食肉流通業界の問題を書いていましたが、今回の、「ガラパゴス」は、派遣問

題に切り込んでいます。主人公は、前回と同じ警視庁捜査一課継続捜査担当の

田川信一。


身元不明、
自殺で処理されていた男の現場写真から、自殺ではなく殺人と断定。

現場を丹念に探し「新城 も」「780816」のメモを発見し、それを手がかりに地道

な捜査。


調査していくうちに、派遣会社、自動車メーカー、派遣の実態などが明らかにな

り、殺された男が優秀な人物でありながら、派遣労働者として、日本中を転々と

し、社会の底辺へ。これ以上書くと中身が分かりますから、止めますが、思い出

したことが少しあるので少々。


「企業は人なり」と言ったのは、故松下幸之助氏でしたが、いつの間にか、「企業

は金なり」になり、社会の格差は広がるばかりになりました。


「文藝春秋 3月号」に、歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏が「世界の敵はイ

スラム恐怖症だ」のなかで、次のように書いています。


「グローバリゼーションによって利益を引きだしているエリート層はどの社会にも

存在します。高学歴者と高齢者から成る支配的な中産階級です。彼らこそ、各国

で君臨している”シャリル”に他なりません。ときに彼らは、社会の周辺に追いや

られている労働者や移民二世に対して自分たちの特権を守ることも厭いません。

・・・従来の宗教に代わる価値としてお金や株価を追いかける空虚な文化がはび

 こるのです。」(下線はsugikan)


また、CNNニュースによれば、「世の中の人口の1%の富裕層がもつ資産の総

額は来年までに、残る99%の人口を資産を合わせた額と同程度になるという推

計を、国際支援団体のオックスファムが19日(注:2015年1月)に発表した。ま

た、世界の富裕層上位の80人の資産総額は、貧困層35億人の資産総額に匹

敵するという。・・・・」


いつの間にか、資本主義が勝ち、社会主義が負けた、という事になりましたが、

アメリカの大統領選挙のトランプ氏の活躍を見るにつけ、「資本主義」も見直す時

期が来たと思います。


「コンピューターが仕事を奪う」(新井紀子氏著)の「ロボットは東大に入れるか」

に、倉庫の商品を降ろして積むという作業について、「『え、そんなこと?なぜ、ロ

ボットにさせないんですか?』と聞かれます。もちろん、やろうと思えば機械化で

きるんですけれども、まだ機械化していない。なぜだと思います?商品が年中

入れ替わるので、そのつどデーターを入れ替えてロボットの動きを変化させるた

めのコストより、人を使ったほうがいまのところ安いから。単にコストの判断から、

機械より人が選ばれているんです。」(注:下線はsugikan)


ロボットを使う方が安ければ、人は職場を奪われ、派遣にもなれないという事に

なります。また、現在、派遣制度などと口ざわりの良い言葉を使っていますが、要

するに昔の、「タコ部屋」です。


今から、多くの人が、当たり前に学び、当たり前に就職し、当たり前に家庭を持

ち、当たり前に死んでいく(老々介護による殺人があります)世界を考えなけれ

ば、「ガラパゴス」に描かれる世界より、もっと酷い世界が待ち受けていると思い

す。

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