「宇治拾遺物★町田康訳」~ぶっ飛びました!
「古典なんて大嫌~い」っていう声が聞こえそうですが、私も大嫌いで、いつも書
くように、古典の時間は、休養の時間でした、が。
この本、河出書房新社の日本文学全集8巻目(全30巻)にあたるのですが、
「日本霊異記」「今昔物語」「宇治拾遺物語」「発心集」と四つの説話が入っていま
すが、某週刊誌の書評欄で「宇治拾遺物語」が面白いとかで、買って読んだら、
ぶっ飛びました。
一番最初の話「道命が和泉式部の家で経を読んだら五条の道祖神が来た」
最初の部分だけ少し紹介しますが、
これはけっこう前のことだが、道命というお坊さんがいた。藤原道綱(ふじわらの
みちつな)という高位の貴族の息子で、業界ではよいポジションについていた。そ
のうえ、声が良く、この人が経を読むと、実にありがたく素晴らしい感じで響い
た。というと、ああそうなの。よかったじゃん、やったじゃん、程度に思うかも知れ
ないが、そんなものではなかった。じゃあどんなものかというと、それは神韻縹渺
(しんいんひょうびょう)というのだろうか、もう口では言えないくらい素晴らしく、そ
れを聴いた人間は、この世にいながら極楽浄土にいるような心持ちになり、恍惚
としてエクスタシーにいたるご婦人も少なくなかった。
ここのところ、小学館発行の日本古典文学全集「宇治拾遺物語」では
「道命和泉式部の許(もと)に於いて読経し五条の道祖神聴聞の事」が題で
今は昔、道命阿闍梨とて、傅殿(ふどの)の子に、色に耽りたる僧ありけり、和泉
式部に通ひけり。経をめでたく読みけり。
というくらいのもので、「恍惚としてエクスタシーにいたるご婦人も少なくなかっ
た。」なんていう文章はどこにもありません。
多分、国文学者のお堅い学者の方は、どっと、お怒りになると思いますが、高校
時代、これくらい意訳して教えてもらったら、私も古典好きになったと思うのです
が・・・50年ばかり遅すぎました
なお、宇治拾遺物語には、前に少し紹介しましたが、「こぶ爺さん」とか、芥川龍
之介が材料にした、「鼻」「芋粥」なども入っており、なかなか面白い本です。
他に「陰茎と陰嚢を検査した話(中納言師時法師の玉茎検知の事)」「源大納言
雅俊が童貞の僧に鐘をうたせようとしたら・・・(源大納言雅俊一生不犯の鐘打た
せたる事)」「藤原大納言が女に屁をこかれた(藤原大納言忠家物いふ女放屁の
事」(カッコ内は小学館発行の日本古典文学全集より)
あ、芥川龍之介が書いた、助平な平中の物語「好色」も入ってますね、「平中が
本院侍従にやられる(平貞文、本院侍従の事)」。「今昔物語」にもありますが・・
少しふざけた文章のようですが、物語の本質はきちんとおさえてあります。残念
ながら「宇治拾遺物語」の全文の訳ではありませんが・・・・
「三条中納言が節制を試みた」などは、落語にピッタリの物語だと思います。とに
かく、この訳で読んで、「宇治拾遺物語」に興味を持たれ、原文の方も読まれた
ら、面白いと思うのですが・・・
あと、「日本霊異記~伊藤比呂美訳」「今昔物語~福永武彦訳」「発心集~伊藤
比呂美訳」も一緒に入っているので、期待が持てそうです。
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