「さ・か・な(魚)」はなんで「さかな」★「有職故実・石村貞吉著・嵐義人校訂」より
子供をお持ちの方、「なんで、犬っていうの」とか「なんで、鳥っていうの」とか聞
かれたことがあると思います。今日は、「さ・か・な」の話です。
左の本、「有職故実(ゆうそくこじつ)」といいます。本来は「有職」と「故実」であ
り、作者の「緒言」によれば、「有職」とは「有職という文字は、有識を誤ったのも
で、有識とは博識という意味に外ならない。」、ということで、中世初めころ、有
識者は、和漢の歴史、故事に通じるはもちろん、宮中における作法、律令、服飾
等の一般に通ずることをさした、という事ですが、後は長くなるので省略。
「故実」については、「故実は、固実、又古実とも書いた。古来の事実の意味で、
畢竟(ひっきょう)、徴症(ある結論を引き出すよりどころ。)にするに足る、有力な
事実ということである。」ということだそうです。
「有職故実」が学として成立していったのは「江戸時代(十七,十八世紀)に始ま
り、明治時代(十九世紀)に及びようやく一定の形式を備えるに至ったといって
もさして過言でもあるまいとおもうのである。」ということで、意外と新しく確立した
ものと言えます。
短いところで抜き書きすると、「『太閤』 太閤下を略したもので、前関白でその子
が関白の人、に対していう称である。豊臣秀吉は、前関白で嗣子秀次が関白な
ので、太閤の名に相当する。しかしこの名は秀吉に限るものではない。」といった
ような事が書いてあります。
官職名、平安京及び大内裏、儀式礼典、年中行事、服飾、飲食、殿舎、調度、甲
冑、武技、遊技等あるのですが、その中で「飲食」の所を読んでいたら・・・
「さかな」の事が書いてあり、すこし長くなりますが。
「また副食物のことを『な』ともいう。現今では、『な』といえば野菜を指すこととな
ったが、これは野菜が多く副食物として食われた結果で、古くは必ずしも野菜に
限られたものではなかった。魚類でも『な』といったもので、それがために酒を飲
む時の副食物という意味で、『さけのな』即ち『さかな』ということになったであ
る。この『さかな』という語も、もとその名の起こりは、魚類に限った物ではなかっ
た和名抄(注:平安時代に作られた辞書)」に、「肴、野王按ずるに、凡そ殻(か
ら)に非ずして食ふ、これを肴と謂う、さかな」。原文は「肴 野王案凡非穀而食謂
之肴」、下の方に「和名佐加奈」とあります。
他に、本居宣長「古事記伝」にも「魚を那(な)と云うは、饌(注:とりそろえたごち
そう)に用る時の名なり。さて菜も、本は同語にて、魚にまれ(注:・・・であって
も。・・・でも)、菜にまれ、飯に副え食ふものを、凡て那と云うなり、さて其の那の
中に、菜よりも、魚をば殊に賞(め)で、美しき故に、称(となへ)て真那とは云うな
り」、と言う事で、小児が食べ始める祝いとして、「魚を口に含ませるのを、『魚
味(まな)の祝』、または『真菜の祝』というのも、魚をほめて真菜ということから
た出来た語である。」と言う事です。
なお、古語辞典で「さかな」を引くと、①として「肴」で上のような事が書いてあり、
②として「魚 うお」とあり、「参考」の所に、「①は、上代から中世にかけて堅塩・
橘の実・スモモ・、味噌など種々の例があって、魚類にはかぎられていない。」と
あります。
ということで、「なんで さかな っていうの」と言われても、チャント説明できます
ね。もっとも、子供には難しすぎて、理解できないかな?「昔から、魚は魚だ」と教
えるのが無難かな?
(「有職故実~石村貞吉著・嵐義人校訂 講談社学術文庫」より)
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