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2015年8月29日 (土)

「天正遺欧使節千々石ミゲル 鬼の子と呼ばれた男」講演会★大石一久氏

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あ~、今日はカミサンがどこかでお泊まりだとか、秋の夜の静けさが身にしみ、

心やすらぐ夜です。


本日は、昼から、石造物研究者であり、「千々石ミゲル」の墓を発見された、大石

一久氏が「天正遺欧使節千々石ミゲル 鬼の子と呼ばれた男」を出版され、その

記念講演会で、千々石ミゲルと言えば、当地千々石町の出身であり、天正時代

に西欧まで行き、教皇、国王にまで拝謁した人物です。という事で聴講に行って

みました。主催は、「雲仙市文化連盟」。

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千々石ミゲルというと、背教者、棄教者とレッテルを貼られ、どちらかというと少し

暗いイメージを引きずっていましたが、本当の姿はどうだったのか・・・・・


天正遣欧使節は、四人の少年が派遣され、千々石ミゲルのみが、イエズス会を

脱会し、棄教しています。


まず、キリスト教は二つの顔を持っていた、という話で、①愛ある顔~慈善・救済

②敵意ある顔~日本文化を蔑視し植民地進攻の手先の顔。


①については、ご存じのとおり、慈善事業、病院等も作って、人々を救っていま

  す。


話は、②の面について、千々石ミゲルは気づき、イエズス会を脱会したのではな

いかという事です。問題は、一般の信者の方ではなく、「教団」の問題です。


先生の話の資料を持たないので、②の点で、手持ちの資料で説明すると、少し

大石先生の話と少しズレると思いますが、


1853年6月18日付け、マニラ司教フライ・ドミンゴ・サラサールはスペイン王に

次のように書簡を送っています。


「私がこの報告書を作成した意図は、シナの統治者が福音の宣誓を妨害してい

るので、これが、陛下が武装してかの王国に攻め入ることの出来る正当な理由

になることを、陛下に知らせるためである。」すなわち、狙いは「シナ」という事が

分かります。


「・・・・シナのすぐ近くにいる日本人がシナ人の仇敵であって、スペイン人がシナ

に攻め入る時には、進んでこれに加わるであろうということを、陛下が認識される

とよい。そしてそれが効果を上げるための最良の方法は、陛下がイエズス会総

長に命じて、この点日本人に対し、必ず在日イエズス会士の命令に従って指令

を送らせることである。・・・」(「キリシタン時代の研究」~高瀬弘一郎著)


1599年2月25日長崎発、ペドロデ・ラ・クルス(1579年にイエズス会に入会、

サラマンカ等で学んだ後司祭に叙階、1586年に日本渡海のためリスボンに赴

く。1590年、天正少年使節の一行と共に来日、加津佐で日本語を学び、長崎

のコレジオで神学を教授。)のイエズス会総長宛書簡。


「・・・・第一、日本人は海軍力が非常に弱く、兵器が不足している。そこでもしも

国王陛下が決意されるなら、わが軍は大挙してこの国を襲うことが出来よう。こ

の地は島国なので、主としてその内の一島、即ち下又は四国を包囲することは

容易であろう。そして敵対する者に対して海上を制して行動の自由を奪い、更に

塩田その他日本人の生存を不可能にするようなものを奪うこことも出来るであろ

う。」


1584月6月25日付け、パードレ・アルンソ・サンチェスの国王宛書簡。

マカオの重立った人物がスペイン国王によるシナ征服を正当とみる点で自分と

同意見であるとして、ヴァリアーノやカブラル(マカオコレジオ院長、インド管区

長)の名前をあげ、


「・・・日本に駐在しているイエズス会のパードレ達が、容易に二~三千人の日

本人キリスト会員を送ることが出来るであろう。彼等は打続く戦争に従事してる

ので、陸、海の戦闘に大変勇敢な兵隊であり、月に一スクエード半又は2スクエ

ードの給料で、嬉々としてこの征服に馳せ参じ、陛下にご奉公するであろ

う。・・・」


まだまだ、あるのですが、これが②植民地進攻の手先の顔、という事です。要す

るに政・聖一体という事です。


なお、②の日本文化を蔑視し、についてはキリシタン大名は、各寺院塔を破壊し

ていますが、天正15年6月にイエズス会日本準管区長コエリョに、豊臣秀吉が

次のように詰問しています。


①何故にパレードはかくも熱心に勤め、また強制してキリシタンとなすか。

②何故に、寺社を破壊し、仏僧に迫害を加えてこれと融和しないか。

③何故に、人に仕え有益な動物である牛馬を食するがことき道理に背いたことを

  するか。

④何故にポルトガル人は多数の日本人を買い、その奴隷としてその国に連れて

  いくか。


返答として、

①パードレが難苦を舐めてヨーロッパから渡来するのは、救霊のためである。そ

  れゆえ力の限り改宗せしめようと努力するが、強制したことはない。

②神仏の教えが救いが得られぬことを悟った人間が、自らの寺社を破壊したの 

  だ。(この部分については、大石先生が事例を挙げ、ウソだと証明をされまし

  た)

③パードレ・ポルトガル人共に馬肉を食する習慣はないが、それを止めることは

  殿下が望むなら、止めるのは容易である。

④ポルトガル人が日本人を買うのは、日本人が売るからで、パードレはこれを悲

  しんでいる。殿下が、諸港の領主に日本人を止めるよう命じ、違反者を重罰 

  に処するなら、容易に停止するであろう。

  (これも、大石先生が事例を出され、否定されました。)


「九州御動座記」(天正15年)に次のように書いてあるそうです。

「(伴天連等)日本仁(ママ)を数百名によらず黒船へかい取、手足ニ鉄のくさりを

付、船底に追入、地獄の苛責ニすぐれ、其上牛馬をかい取、・・・・・・」


なお、日本司教、ポルトガル国王も日本教会からの要請に応え禁ずる旨命令し

たそうですが、「しかし国王はその後、ゴア市からの抗議を受けて1605年、正当

適法な名目と法の許容せる事情ある時は日本人奴隷を禁じるのは、朕の本意

に非ず、と曖昧な態度を示した。」(キリシタンの世紀~高瀬弘一郎著)


また、ジョアン・ロドリーゲス(イエズス会)が、有馬(晴信?)氏からインド副王の

もとに領内の少年少女たちを進物として送りとどけるように尽力したこともあった

そうです。


なお、イエズス会は内部的な亀裂、他宗派との対立。また、個人貿易等による神

父の堕落。「貿易の利益が余りにも大きく、魅力的なので、日本イエズス会公認

の貿易の外に、会員個人が別途に資金を送って取引をしていること、そしてその

ために日本の教会に大きな弊害が生じていることを訴えている。」(キリシタン

時代の研究)


千々石ミゲルは上の様なことを知り、イエズス会を脱会したのだと推理されてい

ました。話は、まだまだ続くのですが、千々石ミゲルの見えざる一面を教えてい

ただいた講演会でした。詳しくは、本をご購入ください。


(参考:文引用:「キリシタン時代の研究」「キリシタンの世紀」~高瀬弘一郎著・

 「キリシタン研究~松田毅一著」「宗教で読む戦国時代~神田千里著」



         



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