「ところてん」の歴史
毎年、ご登場の「ところ店」屋さんです。昨年は、お店の方が骨折してお休みで、
寂しい夏でした。今年は、7月4日からオープンしました。
いつもと変わらず、水で冷やしておいて、「天付き」で突いて押し出せば、細長い
「ところてん」になります。今は、ストアー、コンビニでパックに入って売ってありま
すから、このような風景もいずれなくなるでしょう。
さて、「心太」と書いて「ところてん」と読みますが、ふと、どうしてだろうかと?何で
も疑問を持つことは良いことですが、今日一日潰してしまいました。
まず、辞書から引くと(日本国語大辞典~小学館刊)
①海藻のてんぐさを煮とかして、その煮汁をこし、型に流して冷やし固めた食品。
ところてん突きで突き出し、醤油や酢をかけ、・・・・・
と、まあ当たり前の事が書いてあり、そのあと、好色一代男、談義本・艶道通鑑、
等の文例が書いてあり
②海藻、「てんぐさ(天草)の異名」とあり、その後
*本朝食鑑(1697)三「凝海藻 古訓ニ古古呂布止(こころふと)今読登古呂天
(トコロテン)」とありこれは探し出せませんでした。(返り点は省略します)
*和漢三才図会(1712)九七「石花菜(トコロテン)〈略〉按石花菜今云止古呂低
牟(ところテン)」
和漢三才図会はありました。正徳2年(1712)に書かれたものです。
確かに「石花菜」と書いて、横に「ところてん」と書いてあります。「俗云心太」。
あと、「語誌」として、「十巻本和名抄ー9」に、「大凝菜 揚氏漢語抄云大凝菜(古
々呂布度)本朝式伝凝海藻(古流毛波 俗用心太読与大凝菜同)」とあるという
ことで、探したらありました。こちらは、承平年間(931~938年)に編纂。
確かに、「大凝菜」横に、「コゝロフト」。
という事で、辞典の結論として、「凝海藻で作った食品を平安時代にはコルモハ
といい、俗に心太の字をあてて、ココロフトと称していたのである。・・・・このココロ
フトが室町時代にはココロテイと読まれるようになり・・・ココロテイが更になまって
、いつしかココロテン、さらにはトコロテンになったと思われる。」とあります。
*なおまたこの「凝海藻」の文字は古くは大宝令の賦役令にあらわれる。「延喜
式-42・東西市司」には「心太鄽」(この「鄽」が探せなくて、辞書にも、PC変換で
もでなく、編と旁をを逆にすれば「てん」と読み、「すまい、屋敷、店舗、店」になる
のですが・・・)下が「延喜式で「心太」の文字が見えます。これは平安中期、905
年から編纂を始め、927年に改正をし、967年の施行されたものだそうです。
実物ではなく、活字で編纂されたものですが・・・「心太」の文字が見えます。
もう一冊「寒天・ところてん読本~松橋鐵治郎著」を読んでいたら、要略して書き
ますが、万葉かなが使われ始めた時代から平安時代、テングサは「凝海藻」と書
かれ、仮名文字が無い時代で、「古留毛波」とかいてコルモハと読み、俗に「心
太」の二字をこれに当てココロフトと呼び、ここから、ココロタイ→ココロテンにな
り、トコロテンに転化したとされる。とありました。まあ、よく分からないところもあ
るのですが・・・学者先生が、仰せになっておられるので・・・
江戸時代の、「ところてん売り」だそうです。
(「近世風俗志」より)
という事で、ところてんは何百年という歴史を持ち、今度食べる時には、歴史を味
わいながら、お召し上がり下さい。
なお、文書の写真は、「国立国会図書館デジタルコレクション」を使わせていただ
きました。このコレクション、古い文書もあり、読むと面白いですよ。
ところで、「トコロテン」を凍結乾燥したものが「寒天」です。
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