「鼻紙写楽」「ランプの下」「茶箱広重」~一ノ関圭著 その一
この漫画、多分、漫画界の玄人筋では、最高の評価を受けるでしょう。
何となく、本屋の棚を見ていたら、並んでいて、何となく気になったのですが、本
のお値段が1,800円。しかも、ビニールでしっかりと包んであって、中が確かめ
られない。こうなると博打と一緒で、買って来ましたが、ビックリしました。とにかく
面白い。
幼女の誘拐事件のミステリーから、田沼意次、歌舞伎のこと、浮世絵のこと、そ
れに付随する人物像。本の3分の1あたりで、大阪からやって来た、「伊三次」、
当時は「流光斎如圭」という絵師が登場しますが、これが、後の「写楽」になりま
す。
この、登場人物が絡みに、絡んでいきますが、残念ながら、427ペ-ジを費やし
ても「『鼻紙写楽』第一幕 完」で、まだ続きます。
絵の感じは、白土三平さんか、ケン月影さんタイプかなと思ったのですが、線が
太く力強く、今の若い方のコミック系の線とは全く違い、好き嫌いはあるでしょう
が・・・
さて、漫画読書暦五十数年になりますが、この「一ノ関圭」氏のこと、ウィキペデ
アで調べたら、1950年生まれ、吾妻ひでお氏が、小畑健の絵について「幻の漫
画家・一ノ関のような自在さはない」と感想を述べ、竹照健太郎氏は「美術をテー
マにした漫画で納得行く漫画絵画を描けていたのは、俺の知る範囲では一ノ関
圭が筆頭」とまで言っています。不覚にも、「一ノ関圭」氏のこと、知りませんでし
た。
吾妻ひでお氏の「幻の漫画家」の事は、何しろ、本としては、上の一冊と、下の2
冊しかありません、ただし、絵本としては、やっと何冊か見つけたので、これは明
日のご紹介。なお、下の本は、現在、小学館の文庫本で、読めますが、「らんぷ
の下」は売れ中です。表紙は全然違っています。
「ランプの下」で、第14回ビッグコミック賞を受賞。なお、この時のペンネームが
「夢屋日の市」。白土三平の「カムイ伝」に出てくる、人物の名前だったかな?
という事は、絵は白土三平の影響も受けたのかな?内容は全く違いますが。
なお、この時、東京藝術大学油絵学科在学中だったそうで、絵はしっかりしてし
ているはず。
読んでいると、明治時代の画学生の、愛憎渦巻く物語も多く、「裸のお百」は、明
治時代(この時代、人前で女性が裸になるのは憚られていました。今とは時代が
違います。)のヌードモデルになる主人公が出てきますが、「ランプの下」と読
み合わせれば、女性を縛った責め絵画家、伊藤晴雨のモデルであり愛人。ま
た、大正9年から15年まで、竹久夢二の「黒船屋」「黒猫をだく女」のモデルであ
り、愛人であり、そして、東京藝術大学教授の藤島武二が描いた「芳恵」のモデ
ルであった、「佐々木カ子(ネ)ヨ」、通称「嘘つきお兼」。竹下夢二は「お葉」と呼
んでいますが・・・この、女性の事が彷彿と思い出され、多分、一ノ関圭氏も芸大
ですから、この事も知っていたのでは、と思われます。(私の推測ですが・・・・)
さて、話、元にもどって、「一ノ関圭」氏、あの絵から見て男性の方だと思っていた
ら、女性の方でした。ネットで検索しても、写真が出てきません。
やっと「月刊たくさんのふしぎと」という雑誌と、「江戸のあかり」のという絵本の付
録にを見つけ、載っいることは、載っているのですが、
という感じで、カットしか載ってませんでした。
この、「ランプの下」の解説を書いているのが、「名取弘文」氏という方であり、肩
書きをみると、「藤沢市立滝の沢小学校教諭」となっており、一ノ関氏との接点は
感じられませんでした。なお、名取氏は、「総合的な学習時間」の講師として「重
信房子」の娘を招聘し、問題になったことがあるようです。
氏は最後に次のように書いています。「伝え聞くところにでは、江戸の謎の画家
写楽をテーマにした作品に取りくんでいるようである。どんな作品になるのか、フ
ァンとしては待ち遠しい」
この、「ランプの下」が出版されたのが1992年。「鼻紙写楽」2003年~2009
年までビッグコミック増刊で不定期連載され、今回、それに大幅加筆、再構成し
単行本として出版ですから、構想から23年、描き始めてから12年かけているわ
けです。この後の出版がいつになるのか、待ち遠しい限りです。
なお、氏が描く女性達は、時代に流され、哀愁を帯びながらも、力強く生きる姿を
描いています。又、絵本の方も面白く、これは、また明日~。
なお、「鼻紙写楽」の「鼻紙」は「茶箱広重」を読むと、何となく分かるような感じで
す。「茶箱広重」も面白いです。初代、二代目、三代目広重の話です。
蛇足:伊藤晴雨氏は、警察博物館長 藤澤衛彦氏(1,951年現在)著、伊藤晴
雨氏著・絵で「日本刑罰史」、「いろは引・江戸と東京風俗史」等、優れた風俗画
があり、1960年、出版美術連盟賞受賞。
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