「サンチャゴ」~円城寺真己著
某日、本屋に寄ったら上の本が平積みされており、イヤでも「島原の乱」という文
字が、目に入ってくるじゃありませんか。特に、島原半島に住む者にはですね。
マンガだから、買おうかどうか迷いましたが、例によって、マンガ本はガッチリとビ
ニールカバーで覆われて、中身が確かめられません。まあ、酒を飲むわけでもな
し、煙草を吸うわけでもなし、バクチをするわけでもなし、女遊びをするわけでも
なし、本ぐらいは好きに買っても良いかと。
島原半島では「島原・天草の乱」で、天草では「天草・島原の乱」になりますが・・・
「乱」なのか「一揆」なのか「宗教戦争」なのか、見方によって違いもあり、難しい
面があり、関係の本も、昨年、五野井隆史氏の「敗者の日本史 島原の乱とキリ
シタン」、今年は、吉井豊雄氏の「天草四郎の正体」が出版で、鶴田倉造氏の「Q
&A 天草四郎と島原の乱」に「乱研究の経過と関係史『資』料」として、二百数十
冊の本があげられていました。もちろん、手に入らない本もあるみたいですが、
持っている本も数冊あるので、いずれ、ご紹介を。
さて、マンガだからと思って読んだら、以外と良く調べて描いてあって、もちろん、
マンガですから、架空の人物、物語もありますが、まだ、2巻目で、島原・天草の
乱をこれからどう描いていくか、しばらくは続刊を読んでいきたいと思います。
題の「サンチャゴ」。何の事かと思ったら、
乱が起こった時、「サンチャゴ」と叫びながら、襲撃をしますが、この「サンチャゴ」
については、第2巻目の最後の方に「聖ヤコブのスペイン名。戦争の最中にあっ
たスペインを、白馬に乗って現れ勝利に導いたとされる。スペインの守護聖人で
あり、戦うキリスト教徒の象徴としても崇められた」とあり、ホントかな?と思って
調べると
「天草四郎の正体」には「『叛乱軍』が、雄叫びをあげた、『サンチャゴ』という鬨の
声とは、キリスト教において、その昔、西暦997年、イスラム軍に占領されたスペ
インを救った、国土回復戦争『キスタ』の若き指導者、軍神・聖ヤコブのスペイン
名である。この聖ヤコブに一揆=『叛乱軍』の総大将天草四郎が擬せられている
ことはいうまでもない」。
「Q&A 天草四郎と島原の乱」にも「『サンチャゴ』は、チリの首都名にもなってい
ますが、キリスト教ではかって異教徒と戦った十二使徒の一人、軍神ヤコブの
語名でもあるのです。彼らはこの戦いを異教徒との戦いである『レコンキスタ』に
対比し、四郎を異教徒と戦った聖ヤコブになぞらえて、『サンチャゴ』と叫んだの
でしょう」とあり、なおしつこく調べると・・・
「ニコラス・クーケバッケル日記(平戸オランダ商館の日記 寛永14年11月23
日)」。日記の日付は1月8日付ですが、これは、西洋暦と旧暦の違いでしょう。
乱を起こした服装も書いてあり、有馬からの報告として「彼らは白い麻の着物を
着て、髪を十字の形に剃り、ときの声は、『サンチャゴ』である。これはポルトガル
人が戦陣で叫ぶのと同じで戦争の神である。・・・」(原資料で綴る天草島原の乱
~本渡市・現天草市発行 鶴田倉造編集)
四郎は
という格好をしていますが、手にしているのに瓢箪をくくりつけていますが、「天草
四郎の正体」では、「その天草四郎が、総大将としての『指物』にさしている『金
の瓢箪の馬印』の『金の瓢箪』とは、これも聖ヤコブが瓢箪のついた杖をさしてい
たという伝承に由来するものともされている」
「Q&A 天草四郎と島原の乱」にも、「原城陣図には、本丸の部分に瓢箪の馬験
(うまじるし)が描かれた旗があり、千成り瓢箪を馬験に用いた秀吉と四郎を関
係者のように考える向きもありますが、これも聖ヤコブが瓢箪のついた杖をつい
ていたと考えらていたためで、秀吉とはなんの関係もありません。」
「Q&A 天草四郎と島原の乱」に
このような絵が載せてあり、注釈は「益田四郎肖像 図中央はひょうたんの馬験
(三上参次『島原城矢文付益田四郎肖像画』より)」とあり、この図は、明治32年
に三上参次氏が「史学会雑誌」に紹介をしているそうですが、「板倉内膳正重昌
に従って出陣した備中上房郡高梁村(岡山県高梁市)の野村家に伝存のものだ
とのことで、資料的価値の高いものとおもいます。」とあります。
板倉重昌は島原の乱鎮圧の総大将として派遣され、戦死をしています。
こうして見ると、「サンチャゴ」「天草四郎のひょうたんの馬験」にしても、よく調べ
たものだと思います。マンガですから読みやすく、島原・天草の乱の入門書とし
て、良いかも・・・次号も、検証をしてみたいと思います。ホント、近頃の時代物の
マンガ、良く時代検証をしてますね。
« 神社を遊ぶ~千々石町天満宮 その二 | トップページ | 「週刊誌」つまみ読み »
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 「積ん読」の効用(2022.08.19)
- 「妻が口をきいてくれません」~野原弘子著(2022.04.21)
- 「絶滅動物物語」ー地上より永久に消え去った者へのレクイエムー★作 うすくらふみ・監修 今泉忠明(ビッグコミック連載)(2021.11.16)
- 「新・餓狼伝/巻ノ五」「ゆうえんち」「白鯨」☆夢枕獏著 「クラッパー刃牙」☆板垣恵介著(2021.05.11)
- 数十年ぶりの「週刊朝日」(2020.06.30)
コメント