「水木しげるの 泉鏡花伝」~水木しげる著
泉鏡花については、国語だったかの時間で、名前は習って知ってはいました。
あと、小畑実さんの歌で、「湯島通れば 思い出す お蔦(つた)主税(ちから)の
心意気 知るや白梅 玉垣(たまがき)に 残る二人の 影法師」とか「婦系図(
おんなけいず)」の「湯島の境内」のところ、「月は晴れても心は暗闇(やみ)だ。」
とか、「切れるの別れるのッて、そんな事は、芸者の時に云うものよ。・・・・・私に
ゃ死ねと云って下さい。蔦には枯れろ、とおっしゃいましな。」というくらいしか知り
ませんでしたが・・・・(これ知っている方は、かなりのご年配)
あと、泉鏡花が神経質みたいに清潔好きで、酒の燗もグラグラ煮立たせて飲ん
だ(これを泉燗と言い、泉鏡花の信奉者は真似をしたそうですが、アルコールが
飛んじゃうんじゃないかな?)そうです。
誰かがラジオで話をしていたのですが、ウル覚えですが、刺身もお湯で煮て食べ
たとか(刺身で無く、煮魚でしょうが)、旅行は奥さんが付いてきて、料理は奥さん
に作らせたとか、この本には出てきますが、天井からチリが落ちてくるから、天井
板の隙間に紙を貼ったとか・・・・
この本、もちろん「泉鏡花伝」ですから、泉鏡花の生まれた時から、尾崎紅葉との
出会い、妻の「すず」さんとの出会い(当時芸者で、同棲したのを、師の尾崎紅葉
から叱責され、これがもとで、「婦系図」の湯島境内の場が生まれたわけです
が)、泉鏡花の死に到るまで描いてあります。
その中で、泉鏡花作品の「黒猫」「高野聖」が描いてあるわけですが、「高野聖」
は読んで見ると、妖怪ものですね。「高野聖」という題なので、私、てっきり、仏教
関係の本だと思っていました。お恥ずかしい 。
他にも、「青空文庫」で読んでみると、それに類する物語も多くあり、「妖怪年代
記」なんて、主人公が松川私塾に入り、その目的が、塾が昔、旗野という千石取
りの館で、邸内に三件の不思議、「血天井」「不開室(あかずのま)」「庭の竹
藪」。これを知りたさに寄宿するわけで、いろいろな不思議がありますが、最後の
どんでん返しが面白いですね。書けば長くなるので、読んでください。
さて、泉鏡花が妖怪好き、水木しげるも妖怪好き、これで、なぜ水木しげる氏が「
泉鏡花伝」を描いたが分かりました。
水木しげるは、「水木しげる 遠野物語」を描いていますが、「遠野物語」といえ
ば、妖怪がたくさん出てくる物語ですが、泉鏡花も探したら、同じく、興味を持った
のでしょう。
「遠野の奇聞」。「近ごろ近ごろ(ママ)おもしろき書を読みたり。柳田國男氏の
著、遠野物語なり、再読三読、なお飽くことを知らず。この書は陸中国上閉伊郡
(かみへいごおり)に遠野郷とて、山深き幽僻地の、伝説異聞怪談を土地の人の
談話したるを、氏が筆にて活かし描けるなり。あえて活かし描けるものと言う。し
からざれば、妖怪変化豈(あに)得てかくのごとく活躍せんや。・・・・・」いかに、
「遠野物語」に興味を持ったかが伺われます。
なお、解説を、金沢学院大学学長・泉鏡花記念館館長の秋山稔氏が書いていま
すが、泉鏡花は随筆「一寸怪(ちょっとあやし)」で、怪談を「理由のある怪談」と
「理由のない怪談」に分けており、「理由のある怪談」は「因縁話・怨霊」で、現世
で非業の死を遂げた霊が祟るもの。「理由のない怪談」は「天狗、魔の仕業」によ
るもの。
「黒猫」は殺された盲人の怨念が、黒猫に取りつく物語で、「理由のある怪談」。
「高野聖」は「理由のない怪談」だと、秋山氏は分類をしています。
泉鏡花は、文語体で書いていますが、文語体も「文章が立っている」という感じで
いいですね。2,3,読んで見たら、ハマリそうな感じ。なお、泉鏡花の本は、パソ
コンをお持ちでしたら、「青空文庫」でかなりの本が読めます。
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