「絵本 夢の江戸歌舞伎」「絵本 江戸のあかり」「月刊 たくさんのふしぎ」~一ノ関圭著 その二(おしまい)
昨日、一ノ関圭さんの漫画のことを書きましたが、捜してみると、あと4冊絵本が
見つかりました。まだ、あるとは思うのですが、なにせ田舎ですから、他にあるか
どうか、よく分かりません。
上の二冊が、月刊「たくさんの不思議」、2002年5月号、「おおふじのひっこし大
作戦」。
1994年、栃木県足利市にある植物園から、都市化が進んだため、幹の大きさ
が日本一という4本の、おおふじを、20㎞離れた郊外にひっこしさせる樹医さん
のお話です。
スキャナーに入りきれないので、写真で撮りました。少し見にくいかな?
2012年5月号は「琉球という国があった」。
これは琉球王朝の歴史についての本ですが、良く考証されていて、どちらかとい
うと、文の方が主になるようですが、
やはり、一ノ関圭さんだけあって、絵もしっかりしたものです。多分、水彩かなと
思うのですが・・・
絵本「江戸のあかり」は、「歴史を旅する絵本」と書いてありますから、シリーズ
物かな?副題が「ナタネ油の旅と都市の夜」
田おこしから、苗植、収穫、油しぼり、どうやって江戸まで運んだのか、江戸の夜
に、ナタネ油が灯りとして、どう使われたのかが描いてあります。
少し明るいようですが、付録の解説の塚本氏と一ノ関氏の対談で「今に比べて非
常に暗いあかりを、この絵本ではやや明るく描いています。本当はこの絵に描か
れたよりも全体に暗くって、あかりも、今のあかりほど明るくないわけですよね。」
・・・・「あんどんはこんなに暗かったんだ、というのが本当の実感でしたね。何も
見えないんですよ。あれで針仕事をしていたなんて、信じられない」と書いてあり
ますが、本当に現代に生まれて良かったですね。
歌舞伎座での灯りの様子も描いてありますが、「舞台の背景に緑を使ったんで
す。そしたら次に、服部先生が歌舞伎の世界では着物に緑を使うことはあって
も、背景に緑を使うことはありえない、というふうに言われたんです。・・・」という
ように、専門家の考証もきちんと入っている本です。
「絵本 夢の江戸歌舞伎」。歌舞伎について、本格的な本です。うしろにも、細か
に絵の内容について、説明が入っています。
矢印の所、客席の上を通って橋が架かっています。
これ、本当かなと思ったら、解説に「こういう大胆な演出が実際に行われたことが
あるのは記録によってわかります(たとえば文化三年〈1806〉の5月、市川座で
『仮名手本忠臣蔵』の10段目と11段目の2幕が出た時に、これと同じような橋を
つくり、これを両国橋にしました。この時は『中の間の歩行板を桟敷の高さまでせ
り上げて欄干付きの橋にし、上桟敷から四十七士の面々が討ち入りの衣裳でこ
の橋を渡って行った』という記録が残っています)。芝居は劇場全体の空間をフ
ルに使って演じられます。・・・・」と、江戸時代の歌舞伎もたいしたもんですね。
絵の方も、これ、楽屋を描いた一部分を拡大したものですが、驚くほど、良く描か
れています。
一ノ関さん、歌舞伎のことは、あまり知らなかったそうですが、資料等を調べ、8
年かけて描いた絵本だそうです。細部まで、実によく描き込んであります。
大道具作り、工房、楽屋、奈落、宙乗りの立ち回りをどうしていたのか等、絵と後
の解説を読むと、昔の歌舞伎の事がよく分かります。
この本、特に歌舞伎が好きな方には、お薦めです。歌舞伎は、こちらではほとん
ど、お目にかかりませんが、少しお高いですけれど、買いました。見ているだけで
も楽しい本です。
(「江戸のあかり~文・塚本学 絵・一ノ関圭」「夢の江戸歌舞伎~文・服部幸雄
絵・一ノ関圭」~岩波書店刊 ★「月刊 たくさんのふしぎ」~福音館書店刊」)
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