「サービスの裏方たち」~野地秩嘉(のじつねよし)著
買うつもりも無く、最初のところを立ち読みしたら、少しビックリして買ってしまいま
した。9名ばかりの、サービスの裏方たちの話です。
最初の部分
スピーカーからジャズが流れてきたのは給食が始まって、まもなくのことだった。
「今日の音楽はジョン・コルトレーンの『アンジェリカ』をお送りします」
ナビゲーターは放送部に属する小学校六年生の女の子である。コルトレーンが
吹く、おだやかなテナーサックスの音色は全学年の子どもたちが集まる給食室
に広がっていく・・・・
小学校の給食の時間に、ジャズの大御所、ジョン・コルトレーンの音楽ですよ。
しかも、この文章が書かれたのが2010年、今から5年前。その上、この小学
校がなんと「学習院初等科」ですよ。これが、驚かれずにいられますか。
という事で、思わず買ったという次第。
最初の部分は「学習院初等科の伝統を支える給食のおばさん」に書いてあった
部分です。
いま、学校給食は自校方式(自分の学校で調理する方法)とセンター方式(給食
センターで作って、各学校へ配達する方式)。センター方式が段々増えているよ
うですが、学習院は、自校方式で、840人分を作っているそうですが、担当の中
島さん、料理のメニュー作り、調理のみならず、「・・・仕事は給食室のなかだけ
にとどまるのでなく、仕入れ先、農家まで足を運んで、自分の目で確認しないと、
安全な給食などできないのである。」
学校給食には、普通の食堂と違って、法に縛られいますが、これに従って、自分
の家で作ると大変ですよ。→こちらをクリック
「ハマトラと横浜の頑固なファミリー」
横浜の洋装店、「フクゾー」、カーコートの裏地にタグがあり、その裏側に、縫製
担当者の自筆のサインが入っているそうです。
「『このレインコートの丈を詰めてくれないかしら』と店員に頼んだら、ちょうど店に
いた福蔵が出て来て『お嬢さん、裾を短くしたら、デザインが変わる。そんなこと
はうちはやらない』ときっぱりとことわったという。」
「崖の上にある世界一のシェークスピア劇場」
イギリスのコーンウォール地方にある劇場。「・・・ところが、その劇場は人が行く
には不便そうな岬の断崖にあり、しかも、屋根も壁もない。岩を削って作られた
劇場で、ステージは海をバックにしている。・・・」。名前は「ミナック・シアター」。
仲代達矢が強烈な印象を持ち、「無名塾が石川県の能登に劇場(能登演劇堂)
を作る時、あの劇場を参考にしたのです」
作ったのは、演劇とは何の関係もなかった、ロウィーナー・ケードという女性。な
ぜ、「ミナック・シアター」を作ったのか。
「戦後日本の腹を満たした魚肉ソーセージの父」
今はウィンナーソーセージばかりですが、昔は、魚肉ソーセージばかりでした。
ウィンナーソーセージなど、食べたというより、お肉屋さんにも、置いてありませ
んでした。
ちなみに、私が一番好きな食べ物は、山の上でおにぎりをほうばって、魚肉ソー
セージを囓る事です。
「魚肉ソーセージの百グラム当たりのカロリーはウィンナーの半分で、カルシュー
ムは十四倍もある。成長期の子どもに食べさせるには、油脂の多いウィンナーよ
りも魚肉ソーセージの方が健康にいいし、身体を丈夫にするのである。」
その魚肉ソーセージが、どうして生まれたかの話です。
「空を目指さなかったエンジニアの車なんて・・・」
車のスカイライン生みの親、櫻井眞一郎の話。
戦前は優秀なエンジニアは飛行機屋になり、自動車の設計を目指す者はエンジ
ニアとしては、クズだったそうです。
1964年、鈴鹿サーキットでポルシェ904をかわし、一周だけですが、先頭にた
ち、日本中を湧かせたことがありました。覚えている方もあると思います。その裏
話なども書いてあります。
「おめでたいお赤飯は、和菓子店で購うべし」
ビートルズ公演の警備と赤飯の話。これには、なるほど。
お店屋さんについては、老舗「とらや」。菓子資料室で和菓子の歴史や文化を研
究している、中山圭子さんの赤飯の歴史の話が書いてあります。
神田須田町の「庄之助和菓子店」。六本木の「青華こばやし」。各店、違って面白
いですね。
「絶景の特等席に座るクレーンオペレーター」
高さ二十メートルもある所から、クレーンを操縦する女性の話。私、少し高所恐
怖症なので、この話、パス。
「銀座の老舗は、商売替えをいとわない」
変転の激しい銀座通りで、210年同じ場所で営業している、婦人物バックの専
門店「大黒屋」。「鳩居堂」の一軒おいて隣り。最初は鶏卵問屋、その後海産物
屋。いまが、婦人物バックの専門店。なぜ変遷を重ねていったのか。
有名和菓子店「空也」の話も出て来ますが、銀座におけるサービスとは何か。
「空也」では、支店なし、デパートの催事に出ることもなく、ネットの注文、FAXの
受付も、通販もしていないそうですが、一時なかなか入手できなかった、生チョコ
騒動と比べると、商いのあり方を考えさせられます。
「高倉健が魅せられたレンブラントの模写」
「本物」ではなく「模写」です。絵の名前は「黄金の兜の男」。高倉健がドイツに行
った時、ホテルに飾ってあった、もちろん、模写の「黄金の兜の男」。
譲ってもらえないか聞いたところ、断られます。到津伸子という、東京芸術大学
出身の画家を通し、ダーレム美術館に、「模写の許可を与えている老画家がひと
りいる」という事で、依頼して入手。
ところが、後日、このダーレム博物館の絵が、レンブラントの真筆ではないと判
明。要するに、模写で、高倉健が入手した絵は、模写の模写。
で、この本の作者、野地秩嘉が、その事を告げようか、どうしようか迷っている
と、高倉健は、すでに、その事を知っていて・・・・・言うことが、・・・・やはり大物は
違いますね。結果を書くと、本を読む興味が薄れますから、後、知りたい方は、
本をお読みください。
最後、クレイジーケンバンドの、横山剣との巻末対談があるのですが、あまり興
味がないので、これもパス。
« 週刊誌~ダラダラ読み | トップページ | 2015 「二十周年記念 愛のハタあげ大会」~雲仙市愛野町 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 島原半島に関する三冊の本(2024.05.05)
- 気まぐれ資料館~次は「草双紙」の世界(2023.01.15)
- ザッとした読書感想文なのですが(^_^)(10月~11月中旬読了)(2022.11.13)
- 落語「紀州」の原典は松浦静山「甲子夜話」?(2023.09.19)
- 「積ん読」の効用(2022.08.19)
コメント