「今のピアノでショパンは弾けない」~高木裕著
世の奥様方は、女の子が生まれると、どうしてピアノを習わせたがるんでしょう?
どの家をみてもそうですが、中学生か高校生になると、習うのを止めて、ピアノが
物置台になっています。
ウチのカミサンも全く同様で、私が、電子ピアノ(昔はそういっていました)の安い
のを買って、本気でやるようなら、スタインウェイのグランドピアノなら、1,000万円
くらいであるから、それを買ってやれば、といったのですが、分かりもしないの
に、「本物のピアノとタッチが違うから」(ここらは、楽器屋さんの入れ知恵みた
い)とか「わたしも弾きたいから」と、家庭用のアップライトのピアノを購入。
で、一回、弾くというより、触って見たら、無理を悟ったのか、一回で止めました
が・・・・今は、予言通り、物置台になっています。娘も中学校で習うのを止めまし
た。
ピアノは簡単に分ければ、家庭用のアップライトピアノと、テレビで見るような
大型のグランドピアノがあります。くれぐれも一般家庭では、グランドピアノは買
わないように。ピアノの下に寝ることになります。
ピアノの構造をあまり知らない方のために。写真は、アップライトのピアノ。
簡単に説明すれば、左の写真、白いところがハンマーですが、この一つのハンマ
ーに3本の弦が張ってあって(低音は1~2本)、鍵盤を押さえると、右のように3
本の弦を、ハンマーが叩いて音が出ます。その他、鍵盤、ダンバー等々から成り
立っているのですが・・・これは略。
三本の弦はこのように、チューニングピンでとめられています。
この、チューニング(他の部分も含めて、ピアノ全体)をするのが、調律師さんで、
この本書いた、高木氏は調律師です。
前書きを読むと、ピアノといえば、古くからあった楽器だと思いがちですが、「私
の曾祖父が生まれた1843年頃は、もうショパンやシューマンが活躍していたロ
マン派といわれた時代で、フォルテピアノといって、今のピアノとはまるで違う楽
器でした。こうして見ると、今のピアノは『最近』完成されてということがわかりま
すね。それなのにベートーヴェンや、ショパンの時代の曲を全く違う現代のピアノ
でもっともらしく弾いているわけです。・・・ショパンはどんどん進化していくピアノ
があまり好きではありませんでしたから、今のピアノで弾かれたら嘆いたでしょう
ね。おまけに、ピッチも半音の半分位低かったので、彼らにとっては別の曲みた
いに聞こえるはず。・・・・」だということだそうです。
本には、コンサートの調律師の苦労も書いてあり、ピアニストに、
「いよいよ明日からはドビッシーの録音ですが、ピアノの音色はどうしましょう?」
「このブリリアントなショパンの音色のピアノに、薄い布を被せたような音色にして
頂戴!」と言われたそうですが、どうやって調律するんでしょう?
「実は調律師はそのピアニストとピアノに挟まれて、与えられたわずかな時間と
重責の中で誰もいないステージで孤独な格闘をやっているのです。その重責に
耐えられなくなり、ストレスを抱えて精神を病んでコンサートステージから去って
いった調律師も何人かいます。」という厳しい世界です。
あと、ピアノの歴史、コンクールのこと、ホールに備え付けのピアノのこと、現代
のピアノ(スタインウェイ)の事など書いてあります。
特に、ホロヴィッツが愛用した、スタインウェイCD75と、来日した折り、キャピタ
ル東急ホテルのレストラ「欅グリル」にあった、ローズウッドのピアノが気にいった
らしく、2時間くらい弾いていた事があるそうですが、筆者がこの2台のピアノを入
手した経過も書いてあります。
このCD75を使ったCDが出ていたので、一日あれやこれやと、現代の若い演奏
家のピアノと比べてみると、チト違うなと、素人の私にも分かる音でした。
上の本、ピアノ音楽好きな方は、調律師という裏方さんの仕事が分かって、コン
サートに行くと、聴き方が違ってくると思います。少しスタインウェイ贔屓の本です
が・・・
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