直筆で読む「人間失格~太宰治著」と「坊っちやん~夏目漱石著」 太宰治編
作家が小説を書く時、何度も推考をし書き直しをし、出版されますが、作家によっ
ては、初版、再版、三版と書き直しをする方がおり、若い時に書いた本が、老年
になった時に、違った部分がある時もあり、ですから、作者が最初どう書いたが
分かるのが、初版本といわれ、高価なものがあります。
さて、実は、出版前には、もちろん作家が原稿用紙に書くのですが(今はPC主流
みたいですが)、これは、実際には作家の展示館等でしか、見られるものではあ
りません。
作家の書いた原稿は、出版社から印刷会社に渡され、活字に印刷され、再び
作家の手に戻り、作家は、誤字、脱字、表現を変えたりし、(これを初校といいま
す)再び、指示されたところを訂正し、作家の手にわたり、再び訂正が入ります
(再校)。大体、再校か多くて第三校で、出版社と印刷会社に、直した所の責任
は任せたよ、という事で、最終校になり、印刷、製本をされ、皆さんの手に届くこ
とになります。
余談になりますが、先日、亡くなられた宮尾登美子さん。太宰治賞を受賞した、
出世作の「櫂」は自費出版でしたが、5,6校までいき、その度、大きな変更があ
り、当時は、活字を一字、一字拾っていましたから、現場からは「もう、よしてよ」
との声がありました。表紙も宮尾さんが選んだ、紬だったかで装幀をした凝った
ものでした。なお、「櫂」という字が活字には無く、鉛の活字の代わりに、木で作
字して、使ったもので、見ると若干活字が違って見えたものでした。
さて、現在はPCで書く作家が多く、字の直しなどは、どこを直したかは分かりま
せんが、昔は、手で書いていましたから、どこをどう直したか、分かります。
今、印刷技術が進んだので、自筆原稿を印刷したものが、ボツボツ見られるよう
になりました。作者には、誤字、脱字、また、思考の過程が見られ、覗かれてい
るようで嫌でしょうが、読者にとっては興味を引くものです。
太宰治の「人間失格」の最初のページです。クリックすると、大きくなります。こう
して見ると、活字の本と違って生々しい感じで、何となく太宰治の人間性が感じら
れます。
太宰治の文字の修正は徹底したもので、黒く潰したところですが、ルーペで読ん
で何となく分かるというものです。なお、原稿の外に「6行 思は」は、6行目の消
した部分の文字です。なお、訂正した部分については、安藤宏氏の解説に、詳し
く書いてありますので、お読みください。
太宰治の直筆は、意外と読みやすい字で、普通の本と読み比べて、印象深い
ものでした。なお、本の方は、原稿用の大きさではなく、新書版に縮小されていま
すが、かえって読みやすいものでした。
次回は、夏目漱石編ですが、この直筆は実に・・・・
なお、奥付を見ると、2008年11月19日発行で、少し前の出版でした。私が出
版されたのを、見落としたのかな?発行は「集英社新書ヴィジュアル版」です。
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