直筆で読む「人間失格~太宰治著」と「坊っちやん~夏目漱石著」 夏目漱石編
昨日は、太宰治の自筆原稿について書きましたが、今日は、夏目漱石です。
本の帯、気になりますね。「漱石先生『漢字検定』不合格ぞなもし!」
とりあえず、夏目漱石「坊っちやん」の原稿を。例によってクリックすれば、拡大し
ます。
ちゃんと読めましたか?そんなに悪筆じゃありません。
この本、秋山豊氏による「自筆原稿を『読む』たのしみ」という解説がついており、
我々が、活字で読んでいる本が、本当に作者の書いた原稿と同じか、論じてあり
ます。
例えば、「坊っちやん」に「左右」と「右左」、両方あるそうですが、「この『左右』も、
『ホトトギス』『鶉籠』とも、『左右』である・・・」
この前書きには、雑誌、単行本、全集、印刷会社の問題等についても書いてあ
り、「作品の本文はどう変わっていくか」「『原稿』と『活字』との相違」「『左右』か
『右左』か」「印刷所の問題」「虚子の手入れ」「原稿を読む」と、活字本が直筆原
稿と違っていく過程が書いてあります。これ読めば、本の読み方も、少しは違っ
くるかも。もっとも、今の作家は、ほとんどPCを使って書きますから・・・・面白くな
いですね。
他に、坊っちやんは、四国の学校に行きますが、原稿では「中国辺のある中学
校では・・・」と書いてあり、「中」を消して「四」と書いてあります。
「何でも蚊んでも」、「焼持」本当は「焼き餅」でしょうが、「辛防」も「辛抱」でしょう、
「専問」は「専門」でしょう、というようなことが、前書きに書いてあります。間違っ
たのか、意図して書いたものなのか、今の学校では、完全に×ですね。「坊っち
やん」を読む上で参考になりますので、一度お読みください。
さて、上の原稿、岩波書店、1979年の第7刷発行「夏目漱石全集 第三巻」を
最初の方だけ書き写して見ますので、読み比べてください(移し間違いは、ご容
赦を)。ルビが振ってあるところは、( )にしています。
親譲(おやゆづ)りの無鐵砲(むてつぽう)で小供の時から損ばかりして居る。小
學校に居る時分學校の二階から飛び降りて一週間程腰を拔かした事がある。な
ぜそんな無闇(むやみ)をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもな
い。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談(じょうだん)に、そ
こから飛び降りる事は出來まい。弱虫やーい。と囃したからである。・・・
最初の行、「小供」は「子供」でしょうが、秋山氏によると、意図的に使った可能性
があるかもしれないとあります。独特な字が多いですね。「学」の字も「學」になっ
ていて、違ってますね。直筆原稿と、活字本の違いのある一例です。
なお、あとがきは、漫画家、エッセイストである、孫の夏目房之介氏が書かれて
いますが、その題は、「読めなかった祖父の直筆原稿」。
ということで、「坊っちやん」をお好きな方は、ご一読を。なおブログのタイトルに
「坊っちゃん」ではなく、「坊っちやん」としたのは、直筆原稿に「坊っちやん」と書
いてあったからです。
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