「遠野物語拾遺~京極夏彦」&「視(み)えるんです。~伊藤三巳華」
「拾遺」とは「〔文章・歌などで〕漏れ落ちたものを拾い補うこと。また、そうしてつく
ったもの。『ー集』」(学研・新国語辞典)のことです。
「遠野物語」は、柳田国夫氏が書かれたことは、国語の授業をきちんと聞いて
いた方は、ご存じだと思います。
この本は、初版序文に書いてあるように「此の話はすべて遠野の佐々木鏡石君
より聞きたり。」といった、遠野の伝説、説話などが書かれ、自費出版をし、これ
が思わぬ好評を得ます。
「再版覚書」にあるように、「佐々木君にはもっと材料があるなら送ってくるように
言って遣った。同君も大いに悦び、手帖にあるだけを全部原稿用紙に清書して、
或いは持って来て、どさりと私の机の上に置いた」。そうですが、数量が多く、重
複があり、「自分の原稿がまだ半分ほどしか進まぬうちに待ちかねて佐々木君
が聴耳草紙を出してしまった」。
柳田氏が載せようと思っていた話もあり、「是非とも遠野物語の拾遺として出そう
と思って居たものが、聴耳の方で先に発表せられてしまった。そうで無くても後れ
がちであった仕事が、これで愈々拍子抜けをして・・・・・」
という事だったそうですが、せっかく集まった資料の散逸等を恐れ、・・・という事
で、「第二部(遠野物語拾遺)」増補」版として、発行されたみたいです。
さて、まず、「遠野物語」と「遠野物語拾遺」を読むと、何となく違和感があるので
すが、岩波版「遠野物語・山の人生」(これには、「拾遺」は載っていません)の桑
原武夫氏の解説、「『遠野物語』から」を読むと、次のように書いてありました。
「・・・新たに増補された『第二部(遠野物語拾遺)』は口語体だが、私には旧版そ
のままの(第一部)の簡素な文語体の方が、懐かしく味わいも深かった。」
適当に選んで書いてみると
■遠野物語(第一部)
114 山口のダンノハナは今は共同墓地なり。岡の頂上にうつ木を栽ゑめぐらし
其の口は東方に向ひて門口のきたる所にあり。
■遠野物語拾遺
133 昔上郷村大字板沢の太子田に、仁左衛門長者という長者があった。そ
れから佐比内には羽場の藤兵衛という長者があった。
たしかに、こうしてみると、この物語には、文語体の方が、ピッタリですね。
さて、京極夏彦氏の文章ですが、かなり、書き直しをしてあり、「遠野物語拾遺・
京極版」かな?というところです。
■遠野物語拾遺・原文
一 昔三人の美しい姉妹があった。橋野の古里という処に住んで居た。後に
その一番の姉は笛吹峠へ、二番目は和山峠へ、末の妹は橋野の太田林
へ、それぞれ飛んで行って、其処の観音様になったそうな。
■遠野拾遺・京極版
一 昔。
どのくらい昔のことなのかはわからない。
橋野の古里という処に、三人の姉妹が住んでいた。
ある時。
姉娘は笛吹峠に、真ん中の娘は和山峠に、末娘は太田林にそれぞれ飛ん
で行った。
そして、それぞれの場所に居着き、観音様になった。
なぜ観音様になったのかは、伝わっていない。
ただ、そう謂われている。
京極版は、分かりやすく、スムースに読めますが、どちらが良いか、ご自分で判
断を。
説話、伝承、物語は文字も読めなく、テレビもゲームも個室も無い時代、み
んなが、いろり端などにあつまり、口伝で伝えられたものと思います。人間が文
字を発明し、文章になった時、物語の力が無くなってきたのではないか、と思い
つつ、読みました。
さて、もう一つ「視(み)えるんです。」
遠野には行ったことがありません。多分、死ぬまで行かないでしょう。ですから、
遠野がどんなところか知りませんが、このマンガ見ると昔と違って、随分、観光客
が多いみたいですね。
読んで見ると、「かっぱ淵」で、カッパを釣るとき(取る時かな?)「カッパ捕獲許可
書」がいるそうで、捕獲(竿の先に釣り糸を付け、先にキュウリをくくり付けるそう
です)の場所は人がいっぱいだそうです。
カッパについていえば、カッパをみたというお爺さんがいて、亡くなる時「・・・もう
・・・わしは長くない・・・わしは河童をみたとず~っと言ってきた・・・が、アレは・・・
町の為に役所の人に言われてただけだ・・・河童は・・・い・な・い」と言って亡くな
ったそうです。本当か嘘かは知りません。マンガに書いてありました。
このマンガの作者は、霊能力が強いのか、いろんなところで、他人に見えないも
のが見えたりします。
もちろん「遠野物語」が中心で、超々入門書ですから、まあ、気楽に読んで、本格
的に、柳田国男の本を読んでは、いかがでしょうか?
先ほどの桑原武夫氏も、遠野の変化について、次にように書いています。
「・・・小国村の青年たちには、こちらから村の口碑を教えてならねばならないくら
いだった。附馬牛村大出ではオシラサマを都の人に売り飛ばしていた。その家は
まもなく『釜をかえした』(破産した)のではあるが、それをもう神の祟りとはいわな
いのである。・・・・」
さて、「遠野物語」の話を、信じない人、現在「都市伝説」が多く聞かれます。思
えば、1980年頃だったか、「口裂け女」の話が日本全国を駆け巡り、学校の集
団下校などが行われるまでの社会問題になりました。すこし、お年の方は覚えて
いると思います。日本人には、どうも伝説を好む血が流れているような・・・・・・
蛇足です。以前書きましたが、カッパは相撲が好きで、強く、人を見たら相撲を
申し込み、勝ったら、ジゴノス(肛門)から手を入れ、肝を抜くそうです。
勝つ方法は、土俵に上がったら、お辞儀をする事。カッパもお辞儀をしますから、
その時、カッパの皿から水がこぼれます。皿に水がないカッパは弱いもので、こ
ちらが勝ちます。カッパさんに会ったら、自己責任で、試してみてください。
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