「見テ 知リソ 知リテ ナ見ソ」★「心偈(こころうた)」~詞(ことば)柳宗悦(やなぎむねよし)・板(いた)棟方志功
1月12日から16日までは、お寺で「御正忌報恩講」。講師というか、法話師とい
うか正式名称は良く知りませんが、お話しを聞くと、さすが良いお話しで、笑った
り、泣いたりの、一時間半でした。
さて、昨年の暮れ、これは別の方でしたが、お話しの中で、五木寛之が書いた、
「親鸞」の話が少し出て、「あの本買わんで良いがの」(私、買ったあとなので、ど
うにもできませんが)、と言いながら、五木寛之さんの、若くして無く亡くなられた
弟さんの話をされました。
弟さんが亡くなられた時<クエイッショ トモニ ジョウドニ ウマレン>(注:倶会
一処、共に、浄土に、生まれん)という、弔電をもらい、沢山の弔電の中でも「特
に印象に残っています。」ということだそうです。
講師の話では、この後、五木寛之氏は、戯曲「蓮如物語」を書き、10年たったら
「親鸞」について書くと、言われたそうです。
本の帯に書いてあるように、構想から10年になります。親鸞、蓮如については、
調べれば面白く、これは、時間と、私の理解能力があれば(多分ないか)、今後、
少し触れたいところですが・・・・
講師の話を聞いて、五木寛之氏の本、若い時は、よく読んでいたのですが、最
近の本を読むと、仏教に関する物が多く、肩こらないように、エッセイ集の「生き
るヒント」を読んでいると、「知る(しる)」という所に、柳宗悦(「りゅうそうえつ」とよ
く読まれますが、「やなぎむねよし」です)の「心偈(こころうた)」の紹介があり、
「見テ 知リソ 知リテ ナ見ソ」と言う「偈」(柳宗悦氏は「今迄かういう短句を書
いた人があるかどうか知らぬが、私は之を偈(げ)と呼び、又和風に小偈(さうた)
とも呼ぶことにしてゐる。」と書いています)の紹介がありました。
五木氏によれば、この本に、棟方志功の版画の押し絵がついているとかで、棟
方志功は、好きな版画家なので、つい買ってしまいました。
色刷りのもありますが、これは、墨一色で、「見テ 知リソ 知リテ ナ見ソ」と書い
てありますが、どう読んでも意味が分からない。
五木氏は「見てから知るべきである、知ったのちに見ようとしない方がいい、とい
う意味でしょうが、じつはもっと深い意味があるような気がする。・・・・」と、後は、
知識、知ると言うことについて書いてありますが、長くなるので、カットします。
なお、この本には、柳宗悦氏の「自偈自注」がついていますが、それによると、
「『ナ見ソ』とは『見るな』という否定語。ここで『見(けん)』といふのは、直觀の意
味である。『知』といふのは概念のことである。先づ直觀を働かせて得たものを、
後から概念で整理せよと云うものである。・・・・『知るより前に見よ』『知ることを先
にして、見ることを後にしてはしけない』と警告するのである。・・・・・」
さて、これを読んでいるうちに、何となく思い出したのが、小林秀雄の「当麻(たえ
ま)」。
能楽堂で、万三郎の当麻をみて、帰りがけの事が書いてあり、あの有名な言葉
「美しい『花』がある、『花』の美しさという様なものはない」というのが載っていま
す。
「世阿弥が美というものをどういう風に考えたかを思い、其処に何の疑わしいも
のがない事を確かめた『物数を極めて工夫を尽くして後花の失せぬ事を知るべ
し』。美しい『花』がある、『花』の美しさという様なものはない。彼の『花』の観念の
曖昧さに就いて頭を悩ます現代の美学者の方が、化かされているに過ぎない。」
柳宗悦氏は「直觀は凡てを解放するが、知識は凡てを限定する。」といい、小林
秀雄氏は「肉体の動きに則って観念の動きを修正するがいい、前者の動きは後
者の動きより遥かに微妙で深淵だから、彼(世阿弥)はそういっているのだ」。
言っていることは違いますが、その根本精神は変わらないと思います。
「お宝鑑定団」を良く見ていますが、贋作を掴まされた人、多いですね。参考文献
を読んで、それに基づいて、騙された人が多いようですね。知識が先立った方で
しょう。私達も、良く、偽ブランド品の名前にひっかかる人が多いようです。
「婚婚活」も一緒で、地位がどうだ、顔がどうだより、「見テ 知リソ 知リテ ナ見
ソ」です。
なお、この「心偈」、なかなか、読むのに手応えがあり、その分、人生を考えるに
読む値があるので、時々、ご紹介をしたいと思います。
ともすれば、知識偏重の時代。心すべき、言葉ではないでしょうか。
【注】
■「偈」は真宗のお経「正信偈」というのがありますが、五木寛之氏によれば、
「偈」は「うた」という意味があるそうです。
■柳宗悦氏は、民芸運動の中心者。それまでの高価な美術品でなく、日常の職
人による、手仕事の日用品等の中に、美を探求し、活用する事を見いだした
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