「キマイラ・鬼骨変」出版~夢枕獏著
出てましたね。今年の9月30日出版です。全く気づきませんでした。大チョンボ。もっとも、
近くの本屋さんには並んでなく、某図書館に行ったらあったので、さっそく借りてきました。
この本、「文庫版1『幻獣少年キマイラ』」が出版されたのが、昭和57年。あとがきの最後
に、「この本は絶体に面白い。作者からそう宣言しておく」と書いて、もう何年経ったことか。
「キマイラ9 幻象変」が出版されたのが、2010年(平成22年)7月ですから、実に4年間
待たされたことになります。途中忘れているので、図書館から全部借りてきました。
まあ、本当に、良く書いた事だと思いますが、最も、栗本薫さんの「グイン・サーガ」シリーズ
の正伝130巻、外伝21巻に比べれば、まだまだですが・・・
この「キマイラ」一冊の本に、大体二巻づつの話が入っていますが、この、後書きが面白
い。なにせ、約30歳からの書き始めですから、その間の作者の考えがよく読めます。後書
きを中心にご紹介します。
「キライマ」ご存じない方、始まりは「キマイラ1 幻獣少年」ですが、「キライマ1 朧変編」
の後書きで、
「”北上次郎をうならせてみたい”そんな秘かな野心があるのである」と書いていますが、こ
の「キライマ10 鬼骨変」の最後のページ。キマイラの宣伝のページでこう書いています。
「己の内に幻獣を秘めた、大鳳吼と九鬼麗一。彼らを見守り、『キマイラ化』の真相に挑む、
真壁雲斎、九十九三蔵、菊池良二らの、壮絶にして豊かな物語がここに展開!
『この大河小説は、ファンタジーであり、青春小説であり、格闘小説であり、作家夢枕獏の
美点のすべてがぎっしりと詰まった書だ』」(北上次郎)
これで、この小説の内容が分かると思います。分からない?それなら、最初から全部読めば
分かります。
「キマイラ2 餓狼変」が昭和58年8月。後書きで、沢木耕太郎に影響を受けたことが分か
ります。
「キマイラ2 魔王変」が昭和59年6月。
「キマイラ3 菩薩変」が昭和59年9月。
「キマイラ3 如来変」が昭和60年9月。「・・・・できうることなら、ぼくは、ほくという作家の
最後の最後まで、このキマイラという物語にかかわってゆきたいと考えている。
しかし、それは物語が決めていくことである。
問題は夢枕獏という作家のレベルが、この物語と共にあがっていけるかどうかだ。今の僕
の心配は、この自走し始めた物語の生み出してゆくレベルに、夢枕獏という作家がどこまで
ついてゆけるかどうかということである。・・・」「ぼくに約束できるのは、とにかく書き続けると
いうことだけである。・・・・・」
「キマイラ4 涅槃変」が昭和61年9月。この間「長安だよ。」と書いており、その後、「・・・ぼ
くは、その”キマイラ”を書き終えて、ネパール・ヒマラヤへ向かったのである。、・・・・・・ぼく
を、ベースキャンプまで連れていってくれた遠征隊も、マナスル登頂を断念した。途中、雪
崩にあい、シェルパが一名死んだ。・・・・・」
多分、「沙門空海唐にて鬼と宴する」と「神々の山領」の時ではないかと思います。
「キマイラ4 鳳凰変」が昭和62年7月。
「キマイラ5 狂仏変」が昭和63年11月。「ぼく自身の現在のイメージでは、ようやく、この
物語は半ばを通り過ぎつつあるようである。」終わりませんね。「ウソ」
「キマイラ5 独覚変」が平成元年2月。この年「上弦の月を喰べる獅子」で、日本SF大賞
を受賞。この年、故手塚治虫氏も同賞を受賞していますが、満60歳にて亡くなっています。
これについて、夢枕獏氏は次のようにかいています
「・・・・人の死というのは、いつ死ぬにしても、三八歳の今死ぬにしても、六〇歳のその時に
死ぬにしても、志の途中の死であるのに違いないのだな、人はいつ死ぬにしても志半ばで
死ぬのだな、ということであった。
ならば―
答えは出ているではないか。
今一番やりたい仕事を、やるべきなのだ。
そのために全力を尽くすべきなのだ。
今すぐやるべきなのだ。・・・・・」
「キライマ6 胎蔵変」が平成3年3月。前のが平成元年ですから、少し間が空いています
が、「三国志伝来玄象譚」という歌舞伎の台本を書いていたようで、多分坂東玉三郎が演じ
たみたいです。
「キライマ6 金剛変」が平成4年3月。
「キライマ7 梵天変」が1994年3月(平成6年)。
「キライマ7 緑生変」が1998年2月。前巻から間が空いていますが、「キマイラを連載す
る雑誌がしばらく見つからなかったためである、・・・」とありますが、ところが、この雑誌が隔
月刊。遅れたはずです。
「必ず書き、必ず書き続けます。これしかないと思う。」・・・「書き出して30年・・・・・この物語
が、この長さを要求しているとしか、僕には言いようがないのです。覚悟を決めて、おつきあ
いいただければ幸いです。」覚悟は決めていますが、私の寿命が持つか、どうか。
「キマイラ 群狼変」2000年(平成12年)1月。「キマイラのこの物語、どうやら一生かか
りそうである。・・・・」
「キマイラ 昇月変」2002年(平成14年)。夢枕獏五一歳。キライマシリーズ二〇年目。
「まだ終わらない。まだ途上である。途上であることの、なんという至福。・・・・」
「キマイラ9 玄象変」2010年(平成22年)7月。前巻とするとかなり間が空きますが、これ
は、「東天の獅子」を「最初の担当者の定年までに仕あげようと、多くの連載中の物語を、
一時中断してしまいました。」という事で、夢枕獏さん、心優しい方ですね。夢枕獏59歳。
「キライマ10 鬼骨変」2014年(平成26年)これも間が空いていますが、朝新聞出版で、
「宿神」の連載をしていたからだそうです。
なお、最初予定していたストーリーができないと分かったそうで、「今後、この物語がどうな
ってゆくかは、天にあずけることにした。・・・・・三十歳の頃始めたこの物語を、終わらせる
準備をそろそろ始めるか、それとも永遠に書き続けて死んだところで終わりとするか、そう
いうことを考え始める時期に来たのではないか。・・・」
あと、「餓狼伝」も終わってないし、「東天の獅子」も終わってないし、完結する頃は、多分、
私、いませんよ。とにかく、早めに書いてください。
なお、夢枕獏さんのファンになりたい方。現在、連載しているものは読まないで、完結した
ものだけを読むようにして下さい。昔からのファンの忠告です。
(「キマイラ○ ○○変」の表記については、朝日新聞出版社から刊行されたものを基にし
ています。文引用は、朝日新聞社刊「キマイラ」からです)
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あら(゜o゜)
私も全く知りませんでした・・・図書館で借りてもいいけど
このシリーズは「幻獣少年キマイラ」から全部持っているので
やはり買おうかな^^;
投稿: 心づくし | 2014年12月18日 (木) 08時30分
私も、図書館の新書刊コーナーで見た時、「あら!」ということでした。
近所の本屋さんに置いてなかったので、結局、図書館で借りて読みました。
でも、あと何年かかるのかな ┐(´д`)┌ヤレヤレ
投稿: sugikan | 2014年12月18日 (木) 22時40分
>私も、図書館の新書刊コーナーで見た
長崎県内の図書館には森山町図書館と長崎市立図書館にしか
置いていないみたいですからすごく運が良かったですね(^^)
投稿: 心づくし | 2014年12月19日 (金) 08時40分