「太陽幕末傳」~監督・川島雄三作
ビートたけしさん、デジタルでは映画は撮らないそうで、普通のフィルムで撮るそうですが、
TVで、デジタルはドットで見せるもので(アバウトにいえば、四角に小さく画面を分割し、色
をつけて見せる)、フイルムは、粒子で見せるもの、脳の中では、違って見えてるんじゃ無い
かな、というようなことを言っていました。この映画、やはり、フイルムの方が似合います。
この「太陽幕末傳」、一回だけスクリーンで見て、あまりに可笑しく、また、悲しくもありという
ところもあり、DVDで何回見直したことか。金曜日は、65歳以上はTSUTAYAさんは、旧作
が一本タダ、という事で昨週また借りてきました。
主演は、フランキー堺。大学時代は、「シックスレモンズ」で、ドラムを叩き、後、「フランキー
堺とシティ・スリッカーズ」を結成。これ、いわゆる「冗談音楽」(スパイク・ジョーンズの真似
ですが)ですが、この時代の音楽、YouTubeで見られますので、ご覧下さい。なお、1958
年、有名な「私は貝になりたい」でテレビドラマに主演をしています。
「太陽幕末傳」、Amazonのカスタムレビューを見ると分かるとおり、大絶賛の声が多く、日本
映画の代表作の一つとして挙げる事が出来るでしょう。
ストーリーは、落語の「居残り佐平次」をもとに、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」などを
を入れていますが、少しばかり、「らくだ」を思わせるところもあります。
開幕して、江戸時代の様子が少し出ますが、「太陽幕末傳」の字幕と共に、現代(昭和32
年)の品川の赤線地帯が写されます。それと共に、加藤武のナレーターと「アレクサンダー
ラグタイムバンド」の音楽。最後にも演奏されますが、時代劇にこの音楽とは。
その後、現在(昭和32年)の品川の説明。売春防止法の完全実施が昭和33年で、赤線が
廃止されますから、その一年前の風景です。354年の品川の歴史が幕を閉じるのですが、
昭和32年~この頃は「北品川カフェー街」、従業員91名、平均年齢31歳、店が16軒だっ
たと言います。
ここで時代は、ポンと変わって、文久2年末。あと6年で明治になる時。幕末になります。遊
郭の「相模屋」が舞台になりますが、これは、実際の建物を再現しているそうです。当時の
遊郭の様子が良く分かります。
この、江戸時代から、現代に変わるところ。当時の時代劇ではなかったもので、斬新的なも
のです。それから、また、江戸時代に変わる時のテンポの良さ。
その、相模屋へ遊びに来たのが、佐平次と三名の連れ、佐平次は金もなく、居続け、もう一
組居続けていたのが、石原裕次郎演じる、高杉晋作の率いる勤王の志士(この作品が
1957年、裕次郎の『太陽の季節』が1956年)。当然、佐平次と石原裕次郎の繋がりも
出来ます。
一緒に風呂に入るところがありますが、佐平次が「三千世界のカラスを・・・」と歌い出すと、
裕次郎が「その唄止めてくれんか」「三千世界の・・・良い文句じゃありませんか」「その文句
俺が作ったんだ、目の前でやられたんじゃ、さすがに照れる」。でも、この頃の裕次郎さん
の演技、あまり上手くないですネ。
この、佐平次、布団部屋へ入れられますが、器用なこと、いつの間にか、部屋に酒を持っ
ていったり、女郎の起請文の代筆をしたり、そろばんはお手のもの、もめ事があるとピタリと
止める、高杉晋作の懐中時計も直します。
このあたり、スランキー堺、上手いですね。一つ一つの仕草がピッタリと、さまになってい
る。特に、羽織等着る時、投げ上げておいて、袖に腕を差し入れる。なんとも言えない演技
です。
実は、佐平次は労咳を患っており、この面で、映画に少し影が出てきており、この映画を、
より深いものにしています。
最後は、「お見立て」を元にしていますが、佐平次が走り去る時の音楽が、再び「アレクサン
ダーラグタイムバンド」。最後は、別案もあったそうなのですが・・・・
他にも色々ありますが、あまり書くと、ご覧になる時の興味が薄くなりますから、このへん
で・・・・・
出演が、フランキー堺、南田洋子、左幸子、石原裕次郎、芦川いづみ、市村信介、金子信
夫、山岡久乃、岡田眞澄、菅井きん、小沢一郎、西村晃、熊谷一雄、殿山泰司、二谷英
二、ナレーター加藤武等。凄い俳優陣。亡くなられた方が多いのですが・・・・
どの俳優さんも、良い演技をしています。現代、アイドルばかりの映画で、果たしてこのよう
な、映画らしい映画が撮れるものか・・・・・
詳しくは、ウイキペディアを読んでいただき、興味を持てたら、是非ご覧下さい。日本を代表
する映画の一つです。
なお、監督の川島雄三、45歳で亡くなっています。
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