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2014年12月 2日 (火)

「挨拶はたいへんだ」~丸谷才一著&「文藝春秋12月」より

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文藝春秋の新しいのが出ていて、「弔辞・鮮やかな人生に鮮やかな言葉」というのがあり、

これで思い出したのが、丸谷才一著の「挨拶はたいへんだ」。2001年の出版ですから、少

し古い本になりますが。


この本、持ってはいたのですが、カミサンから「邪魔」の一言で、他の本とまとめて、リサイク

ルセンターに持って行ったのですが、再度、図書館から借りて読んでみると、やはり、丸谷

才一氏、挨拶の名人です。


挨拶を頼むと、「いや、私は挨拶がヘタで」と避ける方が多いのですが、やはり、人前で挨

拶をするのは難しいものです。私も、結婚式の祝辞を頼まれた事があるのですが、冷や汗

ものでした。


私、仕事柄、お偉い人の挨拶文を、何回か書かされましたが、昨年の挨拶文を読んで、少

し手直しをするだけでした。どうせ、私が人前で挨拶するわけでなし・・・


前に、司馬遼太郎の開高健への弔辞を紹介しましたが、あれは、良い弔辞でした。「大兄

の病に篤し、との知らせを仄かにうかがった朝、天から舞いこむようにして『文學界』所載

『珠玉』がとどき、吸いよせられるようにして読みました。」少し後に「大兄とはいかにも縁う

すきかかわりでありました。・・・・」とありますが、


この「縁うすき」がうまい。普通、弔辞というと「縁厚き」人がするのですが、聞いている人は

「なんで、縁うすき人が挨拶をするのか」疑問に思わせ、その後、開高健との関係を話して

いく。これ、みんな、引き込まれますね。


さて、「挨拶はたいへんだ」。弔辞、祝辞、自分の文学賞受賞の際の挨拶等が載せてありま

すが、最初に説明が少し書いてあり、これが、また上手い。


挨拶は、最初に人をどう引きつけるかが大事で、そうすると皆さん、最後まで聞いてくれる

もの。


■結婚論についての一考察~千歳潤、山本元子結婚披露宴での祝辞

 「結婚といふものを褒め讃える名文句は非常に少ないんです。逆に結婚を悪く言う名セリ

 フは非常に多い。これは面白いことです。こんなに悪く言われながら、しかし、人間は昔

 から 結婚という制度を続けてきた。・・・・」

結婚式で、「結婚を悪く言う名セリフは非常に多い・・・」。こんな失礼な事、言えはしません

が、あとは、なるほど、と言うように纏めています・・・


■天の恩寵は彼にあった~辻静雄葬儀での弔辞

  「人生といふのは不思議なものですね。年上のわたしがいまここにゐるのに、五つ下の

  辻さんが世界に存在しないというのは納得がいかない。いまは午後の二時、ちょうどど   

  こかの料理店で食事をご一緒したあと、果物でも食べているところだった・・・・・かも知れ 

  ないのに。・・・・」

目に浮かぶような感じです。


■今年の読売文学賞はいいですよ~第14回読売文学賞での乾杯の辞

  「一体にこの文学賞は権威があって質が高いのですが、でも、強いて難を言へば、いつ

  も受賞者の年齢が高いといふことがありました。時として、大久保彦左衛門が六人並ぶ 

  ような年もあった・・・・」

これには、受賞者の皆さん、参加者の皆さん、大笑いだったでしょう。人の心を掴むのがう

まい。


「文藝春秋」からです。


■「ただいま飛びます」~坂上二郎への萩本欽一の弔辞

  「笑顔で見送ってください 坂上二郎はただいま飛びます 飛びました」

コント55号で、パワフルな舞台を見せてくれた、坂上二郎さんの姿が目に浮かびます。


■あばよ、さよなら談志師匠~立川談志への石原慎太郎の弔辞

  「談志師匠。ご遺族の依頼で弔辞を述べることになりましたが、いまさらもう弔辞じゃね 

  えよな。君が亡くなる3日ほど前に、君と奥さんとお嬢さんもいらっしゃらなかたので、い

  らした女性の秘書さんに聞いたら、もう声も出せないというのでいいから俺が一方的に

  話すから、受話器を彼の耳元に持っていって俺からだといってくれ、といいました。そし

  て最初に『おい談志お前もそろそろくたばるらしいな』といった。・・・・・」

いかにも、石原慎太郎の弔辞ですが、「・・・あれは俺が俺なりに君に渡した引導だったかも

知れないな。・・・・」と言っています。


■先生の着物~北方謙三から渡辺淳一への弔辞

  「弔辞。渡辺先生、初めてお目にかかってからずいぶんと長い歳月が過ぎました。

  はじめは「さん」付け、次は「君」付けで。そして「謙坊」でした。呼び捨てにされても私は

  変わらず敬意をこめて『先生』と呼び続けています。

お二人の関係が、誰にでも分かる言葉だと思います。


挨拶を頼まれた方、丸谷才一さんの本を読んでみてください。参考になります。私も、丸谷

さんに弔辞を頼もうと思っていたのですが、亡くなっておられました。


いままで、一番面白かった、結婚式での祝辞。これ、多分、以前書いた覚えがあるのです

が・・・・お互い忘れてしまった事にして。立川誌の輔さんの「ハンドタオル」のマクラの部分

です。真面目な、誌の輔さんだから、事実だとおもいますが・・・うる覚えですが・・・


某結婚式に呼ばれた時、新郎の上司の挨拶

「新郎新婦、ご両親の方、本日はおめでとうございます。・・・私事で恐縮ですが、私も3ヶ月

前、再婚をし、会社で、この歳をして、新婚、新婚と冷やかされている毎日なのですが、ま

あ、正直に思っていることを申しあげますと、替えてみても、あまりかわりは無かったと

・・・、新郎新婦、これから山あり川ありと、いろいろな辛いことがあると思いますが、その時

は、私の言葉を思い出していただきまして、替えてみても大差はないぞと・・・簡単ではあり

ますが。」


ところで、最近の葬儀には、お孫さんあたりの、お別れの言葉が流行っており、弔辞という

は有名人の葬儀ばかりになりました。私も、あの弔辞、一回やってみたいのですが、アナタ

の葬儀の時、させていただけたら、幸いなのですが・・・・

(文引用:「挨拶はたいへんだ」「文藝春秋12月号」「ハンドタオル~立川誌の輔」より)





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