「青い鳥」そしてその続編「婚約」又は「チルチルの青春」 その3(最終回)
前に書いたように、「五木寛之さん」の「青い鳥」について書いたものを読み、「青い鳥」の原
典を探していたら、上の本に出会いました。1990年8月、あすなろ書房より出版。翻案・
画、中村麻美さん。「青い鳥」の続編になります。
最後の「『解説』かえて」(冨田博之・白百合女子大学教授)を読むと、「大すじは、メーテル
リンクの原典に忠実ですが、物語としてつじつまがあわなくなってしまうような箇所には、中
村さんの創作の手が加わっている。」と書いてあり、それなら、原典を読んでみたいと、あち
らこちら調べて見たら、いつもの「国立国会図書館デジタルライブラリー」
→こちらをクリック (こちらの題名は「許婚」)
に、大正12年、富山房発行、訳者 安藤勝一郎でありましたが、読みにくいので、本を探し
たら、単行本はありませんでしたが、全集本で二冊探しあてました。
左は、昭和2年3月15日、世界文豪代表作全集刊行會から発行された、「世界文豪代表
作全集」。訳者は布施延雄。この本、県内では、某図書館にしか無く、「禁帯」(図書館内の
中だけで閲覧可、館外持ち出しは禁止)という事で、もう一冊「メーテルリンク全集 5」に載
っていたので、こちらを借りてきました。
この本は、復刻版になりますが、最初の全集は、大正九年十二月三十一日、冬夏社より発
行。訳は、鷲尾浩氏。
復刻版は1989年(平成元年)、(株)本の友社から発行。ちなみに、お値段は、全8巻セッ
トで、139050円(税抜き)です。両方とも題名は「婚約」になっています。
今回の物語は、「青い鳥」の7年後、チルチルが約16歳の時、「青い鳥」の時の、妖婆が現
れ、チルチルに、誰か愛している娘がいるか、尋ねます。
チルチルは、恥ずかしげながらも、生意気に、6名の娘の名前を挙げます。16歳で、6名で
すよ。私でさえ16歳の時は2,3名の好きな女子しかありません。
あとは、その中から、チルチルの婚約者を選ぶ旅になるわけですが、妖婆は、サファイア(
青い鳥の時は、ダイヤ)のついたぼうしを渡し、サファイヤを回すと、6名の娘が次々に現
れ、なんと、全員チルチルを愛しているとか。こうなると、光源氏と、良い勝負ですが・・・・
今回は、チルチルの妻を決める旅で、ミチルは、まだ年齢的には夫を選ぶ年では無いので
登場しません。他のお供もついてきません。ここで、6名の娘が現れた時、もう一人、ベー
ルをつけた、何も喋らない娘が一人現れ、あと「運命」がついて、各世界を巡ります。
最初は、「吝嗇家の家」。「妖婆の宮殿内の小部屋」では、娘達の本性が少し見えます。
「先祖達の住家」では、死んでしまった、先祖達に会いますが、なんと、先祖には「罪人」「大
金持」「人殺し」「偉大なる百姓」。そして最後には「偉大なる祖先」が出てきますが、残念な
がら、ここでも、誰が妻になるか分かりません。
次に来たのが、「子供たちの住所」(原文のママ)。ここには、これから生まれる子供たち
が、沢山いますが、ここで、チルチルが6名の子を持つことを知ります。少子化どころではあ
りません。
さて、チルチルの子どもですから、どの娘が自分の母親か分かります。ところが、なんと、一
番最後の、顔も分からない、しゃべりもしない娘の所に全部集まってくるのですね。
チルチル (母の手を取って)あなたは何處からきたんです?・・・・あなたは一體だれです
か?・・・・・あなたと何處かで前に見たつかしら?・・・・僕、覺えてゐない・・・
という具合なのですが、さて、妻になる娘は分かったのですが、この娘が何者か分からな
い。分からないことには、婚約できないわけです。
さて、「青い鳥」と一緒で、ここでチルチルが目覚め、そこに、お客さんが尋ねてきます。そし
て、その尋ねてきた娘が・・・・なのですが、チルチルはやっと思いまします。この娘だ!意
外な人物でした。
「青い鳥」では、最後に、青い鳥が逃げ出してしまいますが、今回は、メデタシ、メデタシで、
幸福は足元にあったという事になります・・・
本当なら、メーテルリンクの全集を読んで、「青い鳥」「婚約」を論評していくのが、本来の姿
でしょうが、どなたか、全8巻 139050円出して、研究してみられませんか。
なお、この戯曲は、上演した例はないということでしたが「チルチルの青春」の「『解説』かえ
て」を書かれた、白百合女子大学教授の冨田博之教授(平成6年没)によれば、「1987年
に、学生たちが上演するおてつだいをしましたが、おそらくこれが、わが国で、この戯曲が
上演された最初の例ではないかと思います。」ということです。
なお、「メーテルリンク全集 第5巻」は、県立長崎図書館に蔵書されています。遠くの方
は、お近くの図書館、公民館の図書室でリクエストすると、図書館等に送って来ますので、
どなたでも借りられます。いまのところ、私の所にあるので、しばらくのお待ちを。
「尋ねてきた娘が・・・・なのですが」。・・・・が誰なのか、知りたい方は、本をお読みください。
(この項、おしまい)
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