蛇踊?龍踊?竜踊? その1
「蛇踊・龍踊・竜踊」。
疑問に思った発端が、この記事でありまして、長崎では「龍踊(じゃおどり)」といいますが、
調べて見ると、下は、昭和49年1月1日、長崎文献社から発行された、長崎文献叢書第
一集・第三巻、丹羽漢吉氏訳著「長崎名勝圖繪」。
「長崎名勝圖繪」は、「長崎奉行筒井和泉守政憲の命を承け、当時長崎聖堂助教で儒者で
あった、西疇、饒田喩義強明が、野口龍渕蔵の協力を得て編述し、これに画家の竹雲 打
橋喜篤惟敬が精緻な押絵を加え、完成したもので、執筆は文化、文政年間であったと思わ
れる」と書いてあります。
なお、説明には、「正月上元の日15日である、唐土では・・・・」と説明が書いあります。
こちらは、昭和50年8月15日、同社から発行された、越中哲也氏注解の、長崎文献叢書
第二集第一巻「長崎古今集覧名勝図絵」に載っているもので、「はじめに」で、「長崎古今集
覧名勝図絵は、松浦東渓が編集した長崎古今集覧の文章に應ずるものとして長崎の名勝
風俗を描いたものである。」と書いてあります。
他にも、この図を描いたものがありますが、どれも「蛇踊」の表記のようです。
なお、この説明として、
「蛇踊 正月十五日上元の日には、唐人屋舗では蛇踊(じゃおどり)がおこなわれた。この
蛇踊を唐人屋敷の隣町、船大工町の人達は真似て諏訪神社の大祭である「くんち」に奉
納踊りとして奉納した。」とあります。これ「船大工」ではなく「本籠(もとかご)町」でしょう。
なお、単に「蛇」といっても、南方熊楠の「十二支考 蛇に関する民俗と伝説」の中に
本居宣長いわく、「・・・・・『日本紀私記』にいふ乎呂知(おろち)とあり、今俗には小さく尋常
なるを久知奈波(くちなわ)といひ、やや大なるを幣毘(へび)といふ、なお大なるを宇波姿
美(うわばみ)といひ、極めて大なるを蛇(じゃ)といふなり・・・」という事で、上の絵「極めて
大なる」ですから「へびおどり」ではなく、「じゃおどり」と読むいう事になります。
なぜ、「蛇踊」が「龍踊」になったのか、これはもう少し後に説明します。
長崎には、長崎市の諏訪神社で行われる祭りほか、各地で行われる秋祭りの「郷くんち」
があり、これは、福岡、佐賀にもみられるものだそうです。
長崎では「飽の浦くんち」「畝刈くんち」「稲佐くんち」等々あり、内容は全部調べきれません
が、長崎市のホームページ「長崎市の民俗芸能」で「竜踊」をしているのは、長崎市三重町
の「角竜踊」「角上竜踊」.。そして、長崎市無形民俗文化財指定の、長崎市滑石町の「滑石
竜踊」があります。
と、ここで気づくのが、長崎の諏訪神社は「龍踊」、他の地区は「竜踊」。
調べて見ると、下の本、左が昭和59年長崎県教育委員会発行の「長崎県の文化財」、右
が平成13年発行の同書。
「龍踊」は昭和39年、県指定無形民俗文化財に指定されますが、昭和59年版では「龍
踊」。平成13年版では「竜踊」となっています。
なお、昭和54年に、一括して「長崎くんちの奉納踊」という事で、国の重要無形民俗文化財
に指定されますが、これには「出しものには竜踊・竜船・川船・鯨の汐吹き・御座船・唐人
船・コッコデショなどがある。」との説明があり、「竜踊」の表記です。
なお、現在、ネットの「長崎県の文化財」では「・・・奉納踊も龍踊(じゃおどり),龍船(じゃぶ
ね),唐人船,鯨引,太鼓山(コッコデショ)など極めて多彩な内容を含み,・・・」です。
国指定文化財データーベースでは、保護団体として「長崎伝統芸能振興会」としてあり、こ
れは「長崎市商工会議所」の中にあり、こちらのホームページでは「龍踊」。
県と国と市、里踊りでは表記が違い、疑問に思い、県教育委員会、長崎伝統芸能振興会に
「龍」と「竜」の名称が混在しいるが、なにか理由は?と問合わせましたが、残念ながら、両
方とも分かりません。
長崎市役所の担当、経済文化観光部文化財課も問合わせましたが、県の「長崎文化歴史
博物館」の方へ聞いてくれとの事でしたが、こちらに問合わせるも、まったく話も通じず。
長崎県は観光県なのですが、こんな事で良いのかナ?
ただ、県の方では、名称については、国にも文化財保護審議委員会があり、その中で決め
られたものであるから、国の方で検討したのだろうが、記録は県にはないので、分からない
とのこと。
ただ、後で考えると、国に登録申告した時の書類があり、名称も書いてあるはずで、これ、
もう少し、しつっこく聞けば良かったのですが・・・
さて、「蛇踊」が「龍踊」なった経過は、「長崎伝統芸能振興会」の方が知っておりました。
この事については、又次回。
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郷くんち(里くんち)に関しては長崎市の紹介はあてになりませんから
私のブログ「長崎ぶらぶら・・・観光客が行かない長崎」の「郷くんち」カテゴリ
http://nagasakiburabura.blog.jp/archives/cat_225036.html
が詳しいです(^^)
三重くんちの「角(すみ)」「角上(すみあげ)」地区の竜(蛇)踊りは「角・角上竜踊保存会」が
行なっているので内容は一緒です・・・5年毎の奉納ですが最近は2012年2013年に行なわれました
http://ssiimm.livedoor.biz/archives/51849366.html
ちなみにここの「蛇踊」の鱗は「サバグミ」という木の葉を使っているので毎回新調しないと
いけませんし長持ちしません・・・ですから地元以外で上演されることは滅多にありません
長崎くんちでの奉納踊りはずっと以前に「龍踊」という表記に統一されたというのは聞いたことがありますがその経緯は知らないので次の記事が楽しみです(^^)
投稿: 心づくし | 2014年11月21日 (金) 09時35分
いつも貴重な情報ありがとうございます。
さっそく、今日のブログで紹介をしておきました。
しかし、市にしても、県にしても勉強してませんね。「県文化歴史博物館」には、少々期待していたのですが・・・・教会遺産と出島と軍艦島で手一杯何ですかネ。
投稿: sugikan | 2014年11月21日 (金) 22時37分