「辞書になった男~佐々木健一著」「明解物語~柴田武監修・武藤康史編」 その1
「辞書になった男~ケンボー先生と山田先生」は、2013年4月に、NHKBSプレミアムで
「ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男~」として放送されたものを元
に、書かれた本だそうです。
ご覧になった方もおられると思いますが、ウチではBSは引いてないので、残念ながら、見
た事はありません。とにかく、面白く、普段辞典を引かない方もあると思いますので、辞書
に興味を持っていただくために、ご紹介を。
以下、長くなるので、「辞書になった男」を(辞)、「明解物語」を(明)で略します。この二冊の
本は、見坊豪紀(けんぼうひでとし)氏と山田忠雄(やまだただお)氏、二人の物語で、また
三省堂発行の「新明解辞典(略して「新解」と書きます)」と「三省堂国語辞典(略して「三
国」と書きます)の物語です。なお、「新明解辞典」の前身が「明解辞典」で、これは(明解)
と略して書きます。
「辞書になった男」を書いた佐々木氏が、取材で初めて会ったのが、「三国」第六判からの
編者の飯間浩明氏。
飯間氏から言われたこと事が、読んでおくべき本として、「明解物語」。さて、この「明解物
語」、東京には神田の古本屋街があって、捜せばあるでしょうが、長崎の片田舎には、神
田の古本屋街はありません。
ネットで調べると、8月6日現在で、4冊しか出ていません。値段が、一番安いので、29,
750円、高いのが50,000円。50,000円のが一週間前に、あと二冊あったのですが、
無くなっています。だれか買ったんでしょうが、買ったのは、絶対的に私ではありません。
一週間前から、どんな訳かこの本が、私の手元にありますが・・・・・・
辞書は、昔は、他の辞書を切り貼りしたり、文言を、少し替えたものもあったそうです。
辞書は、内容は、同じだろうと思っている方が、ほとんどだろうと思いますが、各辞書、改訂
版によって違いがあります。
何年か前、「明解さんの謎」という本で、「明解」ブームになったことがあり、私も「明解」を使
っていますが、三版、四版、五版と買い続け、久しぶり新しく買ってないので、七版を買おう
と思っていたら「三国」さんの帯に、なんと、阿川佐和子さんの、さわやかな笑顔が。私、フ
ァンなのでこちらを買っちゃいました。話では、還暦ですって。見えませんね。
「明解国語辞典七版」はあらためて、電子辞書版を買いましたが・・・
さて、「新解」さんで有名なったのが「恋愛」の項目。
■「新解」三版二四刷発行
れんあい【恋愛】 特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい出来る
なら合体したいという気持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめ
る・(まれにかなえられて、歓喜する)状態。
と書いてあり、「合体」という所が、評判になったものです。
■「新解」四版
四班は三版と一緒です。
■「新解」五版
れんあい【恋愛】 特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人で一緒に居
たい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いなが
ら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり歓喜したりする状態に身を置く
こと。
「合体」が言い換えられています。
■「新解」七版
れんあい【恋愛】 特定の異性にたいして他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むよう
な愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分か
ち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安
になるといった状態に身を置くこと。
随分、穏やかな表現に変わっています。ちなみに「三国」さんでは
■「三国」第七版
れんあい[恋愛](おたがいに)恋(コイ)をして、愛を感じるようになること
娘が使っていた「学研 現代新国語辞典」
■学研
れんあい【恋愛】 男女が互いに相手にひかれて愛し合うこと。恋。
何となく、味気ないですね。
こうして見ると、各辞書、各版によって、随分違います。さて、一時問題になった、「ら」抜き
言葉です。
「三国」では、「・・・・・・俗に、上一段・下一段活用活用の動詞に『られる』の代わりに『見れ
る』『出れる』などと言う・・・」
とありますが、「新解」にはありません。これは、辞書を作る時の主幹の考え方によって、違
って来ます。
さて、「新解」さんの表紙には、「金田一京助」の文字がありますが、これは、名義貸しで、
(明)の中に、金田一春彦(金田一京助さんのご子息)のインタビューが載っていて
ーはあ・・・・・・。それにしましても、「明解国語辞典」にせよ、「明解古語辞典」にせよ、表紙
に載っているのは金田一京助先生のお名前ですが、京助先生はまったくお書きになってい
ないと?
金田一 一行もかきませんよ、あの人は(笑い)。アイヌ語の文典とテキストは書きました
が、事典は書かなかった。「辞海」のときに見てまして、つくづく思いました。随筆になっちゃ
うんです。書きますと。
さて、第三版には「金田一春彦」の名前がありますが、第四版には載っていません。これに
ついて、「マンション」の項目には「スラムの感じが比較的少ないように作った高級アパー
ト」[賃貸しのものと分譲する方式の喪のがある]」(初版・第十八刷・昭和四十七年)と書い
てあり、マンションに住んでいる人から抗議が来たそうですが、山田氏は「いや、私がマン
ションに住んだらそうだったから、こう書いたんだ」と言い「字引というのは、人に教えるため
にあるもんだ」といわれ、これが、2,3回あり、名前を貸すのが嫌で止めました。と語ってい
ます。
さて、「明解」を作ったのは、見坊豪紀ですが、第四版の「新解」から名前が消えています。
「三国」には、見坊豪紀の名前が載っています。この二人は、東大の国文科国語学の同級
生で、一緒に「明解」を作りますが、後別れて、「新明解国語辞典」と「三省堂国語辞典」を
作ります。何故なのか、後は、又明日。
(参考・文引用:「辞書になった男~佐々木健一」「明解物語~柴田武監修・武藤史編」よ
り)
« 「ながさきのおいしい店(長崎ごちそう大図巻)~ながさきプレス別冊」&諫早図書館「オッコベーグル」 | トップページ | 「辞書になった男~佐々木健一著」「明解物語~柴田武監修・武藤康史編」 その2 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 島原半島に関する三冊の本(2024.05.05)
- 気まぐれ資料館~次は「草双紙」の世界(2023.01.15)
- ザッとした読書感想文なのですが(^_^)(10月~11月中旬読了)(2022.11.13)
- 落語「紀州」の原典は松浦静山「甲子夜話」?(2023.09.19)
- 「積ん読」の効用(2022.08.19)
コメント
« 「ながさきのおいしい店(長崎ごちそう大図巻)~ながさきプレス別冊」&諫早図書館「オッコベーグル」 | トップページ | 「辞書になった男~佐々木健一著」「明解物語~柴田武監修・武藤康史編」 その2 »
辞書は好きですね
>辞書は、昔は、他の辞書を切り貼りしたり、文言を、少し替えたものもあったそうです。
私が中学生の頃でしたか「暮しの手帖」で各社の辞書の内容に対する批判が掲載されていたのを読んだことがありますがあの事件以来「引用」の悪習は無くなったのでしょうね
何しろ私でさえ知っていた「まつり縫い」という言葉を各辞典揃って間違えた内容で掲載していましたものね^^;
高校時代に書店で貰った角川文庫特別編集の「辞典の話」というのを読んで全く必要が無いのに斎藤秀三郎博士の「和英中辞典」を購入したこともありましたね(^^)
投稿: 心づくし | 2014年8月 7日 (木) 23時18分
「暮らしの手帳」の件も詳しく書いてありました。
「まつる」どうも、「明解国語辞典 改訂版」が親元で、「親ガメこけたら子ガメも孫ガメこける」と載っていますが、「新明解 初版」には、これに対して、
「おやがめ【親亀】・・・・・・・・国語辞書の安易な編集ぶりを痛烈に批判した某誌の記事から、他社の辞書生産の際、そのまま採られる先行辞書にもたとえられる。ただし、某誌の批評がことごとく当たっているかどうかは別問題」と書いてあるそうです。
投稿: sugikan | 2014年8月 7日 (木) 23時40分
ちょっと間が空きましたが暮しの手帖を再読しました・・・
>ただし、某誌の批評がことごとく当たっているかどうかは別問題」
これにはちゃんと応えるべきでしょうね、何しろ大野晋氏を始めとして名だたる国語研究科が執筆に加わっているのですから・・・たった一行で問題を終わらせようとするのには疑問を感じてしまいます
投稿: 心づくし | 2014年9月 8日 (月) 00時38分
残念ながら、暮らしの手帳、読んだ事がないので、なんとも言えません。
柴田武先生も、東京帝国大学文学部言語学科卒業、東京大学文学部教授ですから、思う事もあったのでしょう。
投稿: sugikan | 2014年9月 9日 (火) 10時09分
酒を飲んでいたとはいえこの本を読まずにコメントするのもちょっとおかしいと思ったので改めて呼んでみることにしました・・・4冊くらい併読しているので読み終えるのに4~5日かかるかな^^;
ケンボー先生こと「見坊豪紀」という名前に何故か記憶があったのですが高校生の頃に愛読していた「言語生活」の「ことばのくずかご」を書かれていた方だったのですね(^^)
投稿: 心づくし | 2014年9月11日 (木) 22時14分
こちらも、マンガから、キリシタン、石造物、庚申塔、墓の歴史、石垣の本、九州治乱記、諫早義挙伝、嶽南風土記、等々乱読で、頭の中がゴチャゴチャです。
「ことばのくずかご」は読んでみたいものです。
投稿: sugikan | 2014年9月11日 (木) 23時59分