天如塔の改修(理性院太子堂内) その2(最終回)~島原市
前回書いたように、貴重な建物が崩壊寸前ということで、何んとかしようという話は、何年
も前からあるにはあったのですが、今回は話だけではなく、皆さんの寄付金をお願いし改
修することに。
昨年9月21日、島原文化市民講座の中で、元教育長宮崎金助先生が講師で「『からゆき
さん』と天如塔」ということで、講演があり、その中で天如塔の改修の話があり、本格的に
火がつき、寄付が集まり、やっと改修にこぎつけ、今月の3月中に完成の予定。もうすぐで
す。
工事がすでに始まっていることを聞き、寄付を届けにお寺に伺ったところ、ご長男の方が
出てこられ、「ご住職は」と尋ねると、「先月、心筋梗塞にて亡くなりました」との事。
9月の講演会が終わり、住職さん(故廣田信証氏)が出口に立って、一人ひとりにご挨拶
をしている姿を覚えておりまして、あと一月半、生きておられれば、完成の姿をご覧になれ
たのにと残念の気持ちで一杯でした。
さて、この天如塔を囲む石垣には、名前、居住地、寄進額が赤の文字で彫られています。
倉橋正直氏の「島原のからゆきさん」によると、玉垣に書いてある寄進者はベトナム、タ
イ、マレーシア、インドネシア、ビルマ、インド、中国、韓国、ロシア、内地、合わせて192
名になるそうです。
名前を読むと、本土(島原半島を中心)の地名も見えますが、内地の方が35%、外地の
方が60%。外地はほとんど「からゆき」さんからのものでしょう。倉橋氏は「『からゆきさん
の塔』という名が、天如塔にまさにふさわしかった。」と書かれています。
なお、外国からの男性の名前もありますが、「からゆきさん」の関係者の名前だということ
です。高額者の名前も見受けられますが、「楼主自身か、ないしは、それに連なるもので
あろう・・・」と考えられるそうです。
「五円以下の文字通り『貧者の一灯』ともいうべき小額の寄進が、実際には無数にあった
はずである。しかし、天如塔の玉垣の本数には限りがあるので、やむなく五円以下の少額
の寄進者の名前は全部、割愛してしまったのであろう。」とも書かれてあります。
内部の写真ですが、今は入れないため、本堂に飾ってある写真を写したものです。
(本堂の写真より。お寺より許可済みです)
改修中の入り口の所です。
内部については、教育委員会の説明板にこう書いてあります。
「この塔の特徴は、内部に螺旋階段を二つ(登りと下り)持っている点である。塔の最上階
に如来像を安置してあり、その途中には明かり取もない闇の中で、仏の体内めぐりを意識
した作りとも考えられる、二重螺旋階段を持つ類例の少ない珍しい建造物である。」
付け加えると、少し下って、登り階段になるそうで、随所に仏像等が置いてあるそうです。
登り階段と、下り階段は別々になっているそうで、普通のように、同じ階段を上り下りする
階段とは違っているそうです。
多分、説明板に書いているように、「体内めぐり」(胎内巡り?)を意識し、なおかつ、違っ
た階段を使って戻ってくるのは、からゆきさんに対し、今度生まれ変わるときは、別の人生
を歩みなさいと言う、広田言証氏の思いだという気がするのですが・・・・
階段の作りには、「栄螺堂」というのがあり、言証氏は全国を巡礼していますから、目にし
ているはずで、それを意識したものではないでしょうか?
この、からゆきさんの資料等については、県内では、口之津町の「口之津歴史民俗資料
館」そして、この「天如塔」しかありません。
口之津民俗資料館にある「娘一名預証」。「預」とは書いてありますが、実態は、からゆき
さんとして、異国に売られていく娘さんの事でしょう。
昨日、「からゆき」さんを一般の方がどう見ているか書きましたが、この塔は島原市指定文
化財ですが、説明版に「・・・近代の邦人の海外進出を物語るとともに、知られざる出稼ぎ
労働者の実態を示すものとして貴重である。」と、ぼかした言い回ししか使われていませ
ん。今回の改修を機会にどう書くか、考えるべきでしょう。
島原半島は、ジオパーク認定、世界遺産への登録運動をおこなっていますが、あれが正
の遺産なら、からゆきさんは負の遺産だと言えます。
両方を正確に伝えないと、正当な歴史は考えられないと思うのですが・・・・・
(参考・文引用:「島原のからゆきさん~倉橋正直著」・説明板から)
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高等学校の教員をしています。自身が同じ高校生だった頃、「サンダカン八番娼館」を読み、いたく感動し、現在にいたります。山崎さん自身の小説には確か、地元の方が「からゆきさんのことを恥に思っている・・・」と言うような記述があったと思うのですが、今回このブログに出会い、理性院様のことも知りましたし良かったと思っています。実は今年12月に修学旅行で長崎に行くのですが、島原、天草に行きたいと考えていますが、42名もの生徒を引率して理性院様に伺うのは失礼でしょうか? Rohdyはハンドルネームです。ブログに実名が出ることを避けました。すみません。メールにお返事いただけるとありがたいのですが・・・・。
投稿: Rohdy | 2014年5月 5日 (月) 17時06分
コメントありがとうございます。
さて、理性院太子堂についてですが、二月に前住職さんが急逝され、現在、どなたが跡継をされるのか、不明です。多分、子どもさんは、昼は働きに行っておられるみたいで、説明の対応については、少し難しい感じがします。
なお、天如塔の落慶法要が今週行われますが、管理上の問題で、内部の公開は、どうするか検討中だそうです。だだ、外からの見学、玉垣の見学は、敷地も広いので、自由に十分にできます。念のため、連絡をいておいた方が良いかと思います。ネットで「島原 大師堂」で住所、電話番号は出ているようです。
説明が必要でしたら、島原市の教育委員会に詳しい学芸員がおりますので、相談をされたらと思います。ボランティア観光ガイドさんもおられますが、こちらは島原城等が中心で、天如塔までは?です。ネットで検索すると出ますので、これも、お聞きになってはと思います。
また、天如塔については宮崎先生が講演をされ、よくご存じですから、教育委員会を通して紹介をしていただいても良いかと思います。(高校の校長先生、教育長をされておられましたので、喜んで説明をして頂けると思います。気さくな方です。)
からゆきさんを証明するものとしては、この天如塔と口之津資料館に「からゆきさんの部屋」があり、ブログに書いたように、生々しい資料が展示してあり、こちらについては、原田館長さんから説明をして頂けますので、特に、からゆきさんについて説明して欲しい旨、事前連絡をすれば、説明をして頂けると思います。
ご存じの事だと思いますが、宮崎康平氏作詞「島原の子守歌」が、内容的には、からゆきさんの事を歌ったもので、生徒さんに事前に教えておけば、参考になるかと思います。
歌の詳しい内容については、ネットですぐに調べられます。
なお、南島原方面にも行かれるのでしたら、観光ボランティアさんが充実しており、特に、キリシタン墓碑、原城等見るべきものがたくさんありますので、役場の方へ紹介をして頂ければと思います。
天如塔については、「島原のからゆきさん~倉橋正直著」がありますが、事前に読まれておかれた方が良いかと思います。
お住まいの図書館にないようなら、県外でも、図書館同士で貸借をしておりますので、お近くの図書館にご相談を。なお、Amazonでも入手はできます。
長々書きましたが、良い修学旅行を。何かありましたら、叉、どうぞ。
投稿: sugikan | 2014年5月 6日 (火) 00時52分
とても詳しくありがとうございます。
『島原のかあらゆきさん』は数日前に日本の古本屋に置いてあり、入手する手配を取りました。
充実した修学旅行にしたいと思います。特に本校は工業系の高校で、男子が9割を占めるのです。教科書で学ばないからこそ(学ぶのは男性史なので)知っておいて欲しいと思います。両性の本質的平等においてもです。
それにしましてもインターネットでとても便利になりました。
理性院様のご住職がご逝去されたことも先のブログで存じておりました。また檀家を持たないと言うこともです。常駐されないのですね。先ずは、日をみまして、教育委員会に電話してみようかとお思います。ボランティアガイドさんの存在も魅力的です。詳しくポイントをついてお話しくださることでしょう。
生徒には何より事前学習が大切だと思いますので、この辺りも考えて進行して参ります。
ありがとうございました。
投稿: Rohdy | 2014年5月 6日 (火) 07時15分