おさがしの本は~門井慶喜著
外は寒いし、「犬は喜び外かけ回り、爺(じじい)はコタツで丸くなる」の季節になりました。
ということで、外に出たくないので、今回も本のご紹介を。
この本、「ジャーロ」という雑誌で、2007年~2009年にわたって連載。2009年に出版。
私が持っているのは文庫本で2011年に出版。意外と記憶に残っている一冊。
舞台は図書館。そもそも、図書館とは何のためにあるのか、簡単で、難しい問題です。ほ
とんどの人が、読みたい本を借りに行くだけでしょうが、郷土に関する文書、お話し会の実
施、学校、幼稚園への本の紹介、貸し出し(学校図書室に対する予算は微々たるもので
す)等々、その中で、レファレンスサービスというのがあります。
図書館の利用者が、学習、研究、調査のための、情報、資料を紹介する業務になります。
但し、この本の主人公が述べるように、「・・・・調査そのものは相談者自身がしなければな
らない、それと同様に、書物というのは、ただ人間を助けるだけの存在なのです。最終的
な問題の解決はあくまでも人間自身がおこなわなければならない」
現在、就職難時代。図書館によっては、就職支援コーナーが設けてある所があります。し
かし、そこに行っても就職を斡旋してくれるわけでもなく、どんな職業が有り、どんな資格が
あり、就職活動はどうしたら良いかの情報、資料はありますが、就職するという最終課題
は、その人が解決すべき問題です。
さて、リファレンスは難しい研究のみならず、自分が知りたいことに関する資料(本)を紹介
してくれます。(もっとも、行政、知人、先生などに相談する方法もありますが・・・・)
「カミサンと仲が悪いが、夫婦仲について書いた本はないか?」、「カミサンと離婚したい
が、手続きについて書いた本はないか」、「カミサンからいじめられるが、家庭内暴力につ
いての本はないか?」、「不倫をしたいが参考になる本は」(これ、冗談)。多分、本の紹
介はしてくれるでしょうが、解決するのは、あなた自身。
さて、リファレンスは職員(専門職は司書といいます)がおこないますが、この本の主人公
は、そのレファレンス・カウンター業務の職員。
市の財政が逼迫し、図書館を潰す計画もあり、そのため市長公室から送り込まれた副館
長。
「レファレンス・カウンターか」鼻を鳴らした。「特に不要」・・・・・・・「性能のよい、コンピュー
ターの2,3台もあれば肩代わりさせられる」という調子。
研修として、ある本を探してもらおうという事になり、(試されるわけです)出されたヒントは
或一つの語をタイトルに含む本。
その語は
A 意味的には、日本語における外来語の輸入の歴史を丸ごと含む。
B 音声的には、人間の子どもが最初に発する音によってのみ構成される。
分かりますか、これ?ある本なのですが、これを解いていく過程。面白いですね。答えは、
意外や意外、「ア○○○○○」なのですが、私、意地悪なので教えません。知りたい方は、
本を読んでください。
さて、紆余曲折があって、図書館を存続させるかどうか、議会の委員会に呼ばれ、主人公
が意見を述べます。これ、長いので、書きませんが、図書館について、こういう考えもあっ
たのかと、目から鱗が落ちる思いでした。
もう一つ、面白かったのが、図書館存続派の議員から、一冊の本の題を調べて欲しいと
の事、その本たるや、同僚の女性職員に説明しますが・・
「・・・・或作品を読んでいたら、とても衝撃的なシーンに出会った、登場人物の若い男が、
その、身体的器官でもって白い障子をつぎつぎ突き刺したんだ、もちろんその器官は、何
というか、ハードな状態だったわけだね。・・・・・」
答えは、石原慎太郎の「太陽の季節」。ではありません。これ分かる方は、随分の読書家
でしょう。
なにせ、「○○○○全集」第五巻の巻末、開高健の解説に、石原慎太郎「太陽の季節」の
シーンに触れ、「例の陰茎と障子のシーンも大いに取沙汰されたけれど、その時○○○○
の先行作を思い出した人はほとんどいなかった、自分(開高)のほかには荒正人と臼井
吉見くらいではなかったろうか。」と言うくらいですから。
答えを知りたい方は、図書館で本を借りてお読みください。図書館、或いは公民館の図書
室は、楽しさ、知識、人生の生き方等が、ぎっしり詰まっています。
蛇足ですが、私が住んでいるU市は7ヶ町合併したもので、市立図書館が一つあります。こ
の図書館は、合併前にK町が建てた、「町立図書館」で、合併で「町」を「市」に書き換えた
だけ。職員も、三年ごとの嘱託です。図書館、公民館図書室の皆さん、頑張っています
が、隣のI市の図書館とは予算、人員、蔵書数、全く違います。おまけに、市の一番端っこ
の町。何となく、侘びしいですね。
この間、市会議員選挙があり、新人が増えましたから、期待しましょう。期待だけです
が・・・・・
私も、図書館の司書免許を持っている(持っているだけの事)ので、図書館のことになる
と、力が入って長文になりました ヾ(_ _*)ハンセイ・・・ 。
« 沙門空海唐の国にて鬼と宴する(漫画版)~夢枕獏原作・大西実生子漫画 | トップページ | 心房細動にご注意を »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 島原半島に関する三冊の本(2024.05.05)
- 気まぐれ資料館~次は「草双紙」の世界(2023.01.15)
- ザッとした読書感想文なのですが(^_^)(10月~11月中旬読了)(2022.11.13)
- 落語「紀州」の原典は松浦静山「甲子夜話」?(2023.09.19)
- 「積ん読」の効用(2022.08.19)
司書の資格をお持ちでしたか・・・おみそれいたしました(゜o゜)
私も高校時代に図書部員だったので図書館短大に進学しようかなとちょっと思ったことがありました^^;
>答えは、石原慎太郎の「太陽の季節」。ではありません
武田さんかな?
投稿: 心づくし | 2013年12月21日 (土) 18時13分
持っていると言っても30年前の事で、腐り果てています。
さすが、かなりの読者家とお見受けしました。
武田さん、ビンゴです。参りました。 o(_ _)oペコッ
投稿: sugikan | 2013年12月21日 (土) 18時48分
>武田さん、ビンゴです。参りました。 o(_ _)oペコッ
若い頃はホント手当たり次第に読んでいましたから・・・ただし最初の設問はまだ思案中です^^;
投稿: 心づくし | 2013年12月22日 (日) 00時37分