ランドセル俳人の五・七・五~小林凜著
生まれしを幸かと聞かれ春の宵
作者、小林凜くんについては、朝日新聞、2011年9月12日に、「10歳のいま
刻む五七五」という記事で紹介され、また、朝日新聞の「朝日俳壇」を読まれる
方もご存じだと思います。
私、地方新聞しか取ってないので、知りませんでしたが、偶然この本を手にとっ
て、引き込まれてしまいました。
作者は、2001年、予定より3ヶ月早く、944グラムの超低体重で生まれ、病気
を抱えながら、小学校に入学しますが、そこに待っていたのは、体のハンディキ
ャップによる「いじめ」。
なぜ、いじめが起こるのか、今、考えなければならないこと、なのですが・・・・
第一に、家庭。ある学校の先生と話していたとき、クラスの子供の私語が多い。
PTAで、話し合いを持ったら、若い親の私語の多いこと、話し合いにならなかっ
たそうです。子供は親を見て育つもの。
いま、PTAから脱退、廃止論があるそうですが、PTAは同じ学校に、子供を通わ
せている者として、P(Parent=親)と、T(Teacher=先生)のA(Assosiatoin=
会)を通し、子供の学校での生活、学校で学んでいること、生きる力を与えるに
は、家庭で学校でどうしたら良いか、考える場であり、これが機能すれば、かな
り、いじめも少なくなると思うのですが・・・・・PTA廃止とは、これからどうなること
か?
以前、子どもたちに野外活動を教える施設に、通算6年ばかり勤めました。その
時、ハンディキャップを抱える子供が入っているクラスがありましたが、見事に二
つに分かれていました。
「あんた、邪魔だから他に行っててよ。」というクラス。「仲間だから、一緒にやろ
うよ。」というクラス。比べて見ると、はやり、先生の指導ですね。
こんな事もありました。飯ごうには、2つ印が付けてあり、下の印は2合の米を炊
くとき、水を入れる印。上は4合の米を炊くときの印。説明が終わると、一人の先
生がやって来て、「3合炊くときの水は、どうしたら良いんですか?」
もはや、学校の先生の採用試験をどうしているかの問題でしょう。
学校は確かに、昔より忙しくなっています。心ある先生は、もっと子供と遊びたい
んだが、といっています。でも、仕事は忙しくて当たり前、ヒマでどうしますか?
昔は、近所の、おじちゃん、おばちゃんから叱られたものですが、今の、若い人
は地域に出て来ません。地域行事が面倒くさいからでしょう。家庭の閉じこもり
です。人と人との繋がりが薄れてきています。これも、いじめの一つの原因でし
ょう。
さて、いろいろ書きましたが、作者の小林凜くん、実に力強く、明るい俳句を書き
ます。そして、その感性の素晴らしさ。「盲目のピアニスト 辻井伸行」という表現
を見ますが、「盲目」いらないんじゃ無いですか。小林凜君も、素晴らしい才能で
す。
春嵐賢治のコートなびかせて (10歳)
帽子飛び春一番の悪戯や (8歳)
ゆっくりと花びらになる蝶々かな (9歳)
穴の主7年眠り夏の空 (10歳)
落とし文誰を思いて文落とす (10歳)
無花果を割るや歴史の広がりて (10歳)
冬蜘蛛が糸に絡まる受難かな (8歳)
ぬかるみに車輪とられて春半分 (8歳)
作者が描いた絵も入っています。
ブーメラン返らず蝶となりにけり(10歳)
年齢を書いていますが、作者が作句したときの年齢です。もう一度、年齢と俳句
を読んで見てください。
作者は、小学校の時、不登校をしているそうですが、お母さんが書いておられま
す。「凜が俳句の世界を我が家にもたらしてくれたおかげで、『張り切って不登
校』と心から言える。」、この前向きな姿勢。
この本、今年の4月に出版されていますが、7月で5版をむかえています。読む
方が多いのでしょう。皆さんも、この本、是非、読んで下さい。今年、一番感動し
た本です。
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