隠れキリシタン像 その1~長崎県雲仙市小浜町
小浜町の端の方に山領という、集落があります。集落を抜けて、どんどん進んでいくと、人
家も途絶え林道になって行きます。その林道から少し入ったところに、小さなお堂がありま
す。「おばまー史跡めぐりガイドー」によると「今は森林の中に公園ができている。」と書い
てありますから(ここのことです。)、昔は、本当の森林の中だったのでしょう。
地元の方は、「山の神」とか、「水の神」(実際水が湧いています、少し離れた林道には長
崎県の小さな標柱に「やまんかみ水源の森」と書いてありました。)とかいっているようです
が、このお堂の脇に標柱には「水原神社」と書いてありました。「水」の「原」、「水源」のこ
とでしょうか?
ここには、お堂の中と、その左側に弘法大使の像があります。こちらは弘法大使さん。
さて、問題はお堂の中の地蔵さんです。
この地蔵さんが両手で持っているもの。
X型の印が。これについて、郷土史家の故吉田安弘氏は次のように記述しています。「よく
見ると両手に大きい宝珠を持っていた。初めに私は聖体かと思ったが、あまりにも大きい
ので、珠の上の落ち葉を払い、みずで洗ったら上面に見事な×アンドレア十字架が彫ら
れていた。水はキリシタン信徒の生命であろう。この地蔵も又、金比羅社の天使像(注:こ
れについては、次回アップ予定です。)と同じように信仰の礼拝像であろう。然もアンドレア
十字というキリスト教の聖記号が刻まれている。ここは、人里離れた山の中の礼拝所、か
くれ切支丹の聖地であろう。」(「ありあけの歴史と風土 第二十号 金比羅神社の有翼天
使像とおめき村の掟」より)
なお、アンドレア(アンデレ)の十字架について説明しておきますが、アンドレアはイエスの
弟子であり、最後はX型に組まれた十字架にかけられ殉死したといわれ、聖アンドレアの
象徴として、X型の十字架(アンドレア十字)、魚捕りの網、魚があります。
なお、吉田氏は気づかなかったのか書いておりませんが、私が気になったのが祠の上の
印。
今まで見たことが無く、気になっていたのですが、今日、別件で郷土史に詳しい先生の所
にいってお話を伺っていたとき、、神社の手洗いの所に蟹や魚が這っていたり、水を張る
ところがハート型になっていたら、隠れ切支丹と疑った方が良いと話をしていたら、奥様
が、「この写真、逆にするとハート型よ。」と。逆さまに見ると、「あら、本当!」
しかも、上の方は縦線を少し伸ばすと十字架に。
なお、ハートもキリスト教のシンボルで、「ミシェル・フイエ著 武藤剛史役 キリスト教シン
ボル事典 白水社刊」によると、「心(心臓):キリスト教の伝統では、心は愛や慈悲の座
である。・・・最も愛に充ちた心とはイエスの心である。かくして、カトリック教会では、キリス
トの『聖心』」への崇拝が大いに広まり(十七世紀)、其れと同時に、槍で刺し抜かれ、茨の
冠をいただき、炎と十字架を背にした心臓という独特のシンボルが用いられるようになっ
た。」
有名なザビエルの肖像がですが、手に持っているのは炎に囲まれた心臓(ハート)と十字
架。
残念ながら私も専門家ではないので、上のマークが他の仏教のマークに使われているか
かどうか、分からなのですが、次にアップする、ここからすぐ近くにある「天狗天使」と考え
合わせれば、吉田氏が言うように、隠れ切支丹の礼拝の場所であったのかも知れませ
ん。
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