この一曲~グラスハープのためのアダージョハ長調/モーツァルト
あまり、一般的でなくほとんど聞く機会がない楽器のひとつに「グラスハープ」があります。
足つきの、ブランディーグラスに(これは私のウィスキー用のグラスで、スコッチモルトウィ
スキー協会から手に入れたやつですが)、水を入れ、指に水をつけグラスの縁をグルグル
回すように撫でると音が出ます。といっても、指の力の入れ方、指の速度を微妙に調節し
なければなりませんが、音だけは少し練習すると出るようになります。
音は、澄んだ純粋な天使の音といっても良いような心地よい音です。水の量、ガラスの質
などによって音程、音色が変わります。
ただ、音楽を奏でるにしては音程を合わせるのが難しく、演奏途中で水が蒸発して音程が
変わる、水の中に不純物が入るなど難しい面があるようです。また、早いパッセージは音
の立ち上がりが遅いため特に難しいでしょう。
ここからは、ライナーノートを参考に書きますが、この素朴な楽器に改良を加えたのが、政
治家であり、発明家であったベンジャミンフランクリンであったそうです。半円形のグラスを
一本の心棒に何個もとおし、回転させる方法を考案し、コード、早い動きにも対応できるよ
うにし、飛躍的に楽器としての性能を高めたそうです。
これにより、モーツァルト、ベートーベン等もこの楽器のために作曲して隆盛をみせたそう
です。
しかし、奏法が容易になったため、演奏に熱中するあまり、指先の微妙な振動が時として
神経障害を起こす例が続出し、ドイツでは禁止され、違反者は逮捕されたそうです。しか
し、改良されたとはいえ、水と壊れやすいガラスのため、時代遅れの楽器になって忘れら
れた存在になったそうです。
ユーチューブに多分フランクリンの考案した楽器があるみたいです。
今世紀に入り、R.シュトラウスがこの楽器を「影のない女」で採用し、ブルーノ・ホフマンとい
う名手が現れ、フランクリンの機械式ではなく、素朴なグラス方式を使い大きな関心を集
めるようになったそうです。
ユーチューブにこのグラスハープを使って「アベ・マリア」を演奏したのがありますが、聴い
て見てください。まるで、この楽器のために作曲したのではないかと思えるほどです。
聞けば、癖になる癒やしの楽器です。
私もしたいんですが、これだけのグラスを買うといくらになるのか、年金暮らしですから、聴
くだけにしておきましょう。
(参考:ライナーノート解説/諸石幸生)
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