「ユゴーの不思議な発明」そして「トリックものがたり」
本屋で立ち読みして、面白そうだったので買ってみました。
腰巻きをみると、失礼、本に帯があっていろいろ宣伝が書いてありますが、あれを業界用
語で腰巻きと言います(色っぽいでしょう)。
映画化された本。腰巻きの後ろを見ると、「アメリカで最も素晴らしい絵本に贈られる賞 コ
ールデコット賞金賞受賞」と書いてありますが、全くの絵本ではありません。
すこし、変わった本で、530ページの中で、絵が続くと思ったら文章になったり、又絵が続
いたり、絵は300点あまりです。
主人公は、時計屋を経営しながら、古い博物館で、時計の手入れをしている父を持つユゴ
ーという少年。
時代は、20世紀初め。
ユゴーの父は偶然に博物館で誰も覚えていない、ほこりを被った、字を書くからくり人形
を見つけ、修理をはじめ、人形をスケッチしたノートをユゴーに贈るが、博物館が火事にあ
い、ユゴーの父も巻き込まれ死んでしまう。物語はここからいろいろ展開しますが、ユゴー
少年はからくり人形を修理し、動かしてみる。
そして、人形が書いたのがルミエール兄弟が映画を発明し、その映画初期で活躍したメリ
エスの映画の一場面の絵と、ジョルジュ・メリエスの署名。
ここで、ひとつの物語が終わるが、ここからもう一つ、ここからこのメリエスの物語が始まり
ます。もちろん、メリエスは出てきますが、フィクションの話です。
そして、この本、文章の最後のページ読んだら、「え!」と言いますよ。
さて、この本を読んで思い出したのが「からくり人形」について書いてある本。
この本に「チェスをする自動人形」というのが書いてあります。著者は松田道弘さん。
十八世紀末、時計技術の発達と共にゼンマイ仕掛けの自動人形が多く作られたみたいで
すが、人間と実際のチェスの試合をする人形は人々にショックを与えたそうです。
もちろんこの時代コンピューターがあるわけではなく、仕掛けはあるのですが・・・
人形を作ったハンガリー生まれの技師ケンプレは「実にくだらない何の実用価値もありま
せん。ただ大胆な思いつきと、幻想(イルージョン)を生み出す手順がうまく組み合わされた
ので、見る人の目をおどろかす効果をつくりだせたのです」と答えたそうです。
要するに、チェスのうまい人間が隠れているのですが、実演前に機械の中を全部見せてし
まうというやり方がうまかったのでしょう。今でも、マジックの前に箱の中を全部見せて、人
間やライオンを出すということをしますが、同じような事だったのでしょう。
ただし、学者たちには論議があったそうです。ユリーゲラーの手品と同じですね。
マリア・テレジア、ナポレオン、ベンジャミン・フランクリンも、フレッド大王、英国のジョージ4
世も見物をしたそうですが。
ケンプレの死後メルツェルという機械技師が人形を買い受け興業をし大成功。メルツェル
の死後人の手を転々として、最後はフィラデルフィアの中国博物館に寄贈されたそうです
が、1854年6月5日ナショナル劇場から火事が起こり、中国博物館にもおよび、焼けてし
まったそうです。ひょうっとしたら「ユゴー」の方もこの話に影響を受けたのかな?
さて、「このとりっくものがたり」の「チェスをする自動人形」の項目の次になんと「光の錬金
術師ジョルジュ・メリエスのトリック地獄」。「ユゴーの不思議な発明」の主要人物のひとりで
す。
メリエスの時代、奇術が全盛期を迎えていたそうですが、もちろん熱心に通ったそうです。
その後、劇場を買い取り、経営者になりましたが、リュミエールの映画を見、買い取ろうとし
ましたが失敗。別口で、機械を手に入れ自分で映画を作り、自分の劇場で上映したそうで
す。
メリエスの映画についてはYou Tubedで代表作の「月世界旅行」少しばかり見られます
が、世界最初のSF映画です。
メリエスの映画は、奇術の影響を受け、椅子に座った女性が消えるとか、小さなトランクの
中から机、椅子、子供、奥さんまで出すというようなものです。今では子供でもわかる映画
のトリックですが、当時としてはみんな驚いたようです。メリエスはこの後不幸が続き、養
老院に入り亡くなったそうです。
「ユゴー」の不思議な発明」は前半は「からくり人形」、後半は「メリエス」のこと。
「とりっくものがたり」も「からくり人形」話の後に「メリエス」のこと。
偶然のことでしょうか?何となく、狐につままれたみたいな日でした。
(参考:とりっくものがたり~著者:松田道弘)
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