木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか~増田俊也
「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」と言われた木村政彦が、力道山と戦ったのが
昭和29年12月22日、私がまだ、小学校にも入ってないとき。もちろん、家にはまだテレビ
もない時代。しかし、この試合の表裏のことは何年も語られて、私も何回も聞かされたり、雑
誌等を読んだ事がある。
そして、出たのがこの本。
半月前この本を読んでブログでどう紹介しようかと思っていっていたら、新聞の書評に先を越
されました。
題はおっかないのですが、木村政彦の名誉回復の為に書かれた本です。
「ゴング格闘技」に掲載され700ページにもなる本。
この著者が、どれくらいの人に会い、どれくらいの資料に当たってきたのか。そして、出され
なかった資料もどれくらいあるのか。はかりしれないものがある。
例えば、木村と力道山の試合の記録フィルムについて、どれも6分間の空白があるそうだ
が、『完全像を探したが、途中で裏の人間にぶち当たった。「完全フィルムはどこにあるの
か」という私に最後は脅すような言葉を吐かれ、あきらめざるををなかった。』
しかし、動画と新聞、雑誌を見比べながら真相を探っていく作者。
とにかく、凄いといわざるをえないドキュメンタリー。
また、言葉だけで聴いたことがある、高専柔術、武徳会、プロ柔道等のことがやっと分かっ
た。
本の中には、大山倍達も出てきます。「第24章 大山倍達の虚実」。
ほかに、ヘーシンク、ルスカと木村が戦ったらどうだったのか。両人と戦った人の言葉も興味
深かった。また、グレシー柔術との戦い。
山下泰裕、斉藤仁に対する取材を受けたときの言葉『「今の柔道は豚のやる柔道」とまで切
って捨てた。』
そして、今まで、軽視していた柔道の寝技の凄さがはじめて理解出来た(昔の柔道の寝技)。
この本を読めば、柔道とプロレスの歴史、そして、裏表もが分かってきます。
オリンピックの柔道メダリストがなぜ格闘技に移っているのかも、これを読めばおぼろげに分
かってくると思います。
いや、凄い本が出たもんです。絶対に面白い2,600円の価値は充分にあります。
夢枕獏の愛読者の方も是非読んでください。参考になります。
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